上 下
826 / 1,004
連載

少年期[984]諦めない為の準備

しおりを挟む
「ほら、好きなだけ食べて良いぞ」

ゼルートがそう言うも……ルーキーたちは固まっていた。
訓練で疲れすぎて固まっているのではなく、目の前の料理が……明らかにいつも食べている物と違うからである。

「ぜ、ゼルートさん。こ、この肉はどのモンスターの肉、なんですか?」

「そいつは……ミノタウロスの亜種だったか? そっちはロックリザードの肉で、そっちはキングヴェノムサーペントの肉だ。安心しろ、ちゃんと毒はねぇから」

「「「「「……」」」」」

全くもって安心出来ない。
ルーキーであるが故に、まだモンスターの知識はさほど頭に入っていない。

しかし、ミノタウロスなどは強いモンスターの中でもメジャーな存在であり、ヴェノムサーペントに関しても、キングという名が付いているのであれば、名前に負けないそれ相応の強さを持っていることが解かる。

「ほら、さっさと冷める前に食べちまえ」

そう言われてようやく食事の手を動かし始めるルーキーたち。

「「「「「「「「「「っ!!??」」」」」」」」」」

当然と言えば当然の流れだが、ルーキーたちは高ランクの肉が使われた料理を食べた瞬間、衝撃が体を駆け巡った。

その後も衝撃は何度も何度も体を駆け巡り、ルーキーたちの中にはあまりの美味さに涙を流す者もいた。

「こ、このモンスターの肉は全部、ゼルートさんたちが倒した物ですね?」

「あぁ、そうだな。お前らも、強くなる為に努力し続ければ、こういう料理を自分たちの力で食べられることが出来るようになる」

「っ……本当に、出来るでしょうか」

ゼルートがとても気の良い人物であり、一切傲慢で不遜なところが見えない。
しかし、それでも貴族の生まれであることに変わりはない。

言っていしまえば品種改良の第一世代ではあるものの、その戦闘力は凡夫な表現では表せない。
そんな圧倒的過ぎる人物に少しでも追いつけるのか……そういった疑問を持ってしまうのも仕方ない。

「無理とは言えないな。要は、お前らがこの先どうやって己の実力を高めていくか、どれだけ冒険という行為に対して準備が出来るか……それを忘れずに行動し続ければ、自力で食えると俺は思ってるよ」

この世界にはレベルという概念が存在する。
一つレベルが上がる際に上昇する魔力量、身体能力の幅などには確かに差異が存在するが、それでも凡人であろうが、レベルを上げ続けることは不可能ではない。

「古臭くて、人によっては嫌いな言葉かもしれないけど、最後は諦めない事が大事だと思う。まっ、最後まで諦めないためにどうするかって方法を考えないとだけどな」

持ってる側の自分が言っても説得力はない。
そんな事は解りきっているが、まだまだこれからが本番の未来あるルーキーたちに伝えたかった。

「お、俺! 絶対に諦めずに最後まで戦うっす!!!」

「俺も!!!!」

「私も!! 絶対に最後まで戦います!!!!」

「分かった分かった。ちょっと落ち着け。さっきも言ったが、最後まで諦めずに戦うには、それ相応の準部が必要なんだ。体や魔力操作を鍛えるのも重要だが、頭も鍛えないとだぞ」

「「「「うっ!!……はい!!!!」」」」

何名かの脳筋組は渋い表情を浮かべるも、元気良くやってみせると返事をした。

そして昼食後、再び冒険者ギルドの訓練場に戻って訓練を再開……という流れだったが、涙を流す程美味すぎる料理を食べたルーキーたちの腹は男女関係無くパンパンであり、数十分の休憩が必要だった。

「ったく、仕方ないな。お前ら、少し休んでて良いけど、その場で座ったり寝転がったりせず、ゆっくり歩きながら休憩しろよ」

ゼルートに言われた通り、ルーキーたちはさっきまでとは違った理由で重い体を起こし、ゆっくりと訓練場を歩き回って腹の調子を整えていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】

小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」 ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。 きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。 いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。

契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
恋愛
 前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。  悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。  逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位 2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位 2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位 2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位 2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位 2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位 2024/08/14……連載開始

転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです

れもんぴーる
ファンタジー
実母に殺されそうになったのがきっかけで前世の記憶がよみがえった赤ん坊カティ。冷徹で優秀な若き宰相エドヴァルドに引き取られ、カティの秘密はすぐにばれる。エドヴァルドは鬼畜ぶりを発揮し赤ん坊のカティを特訓し、諜報員に仕立て上げた(つもり)!少しお利口ではないカティの言動は周囲を巻き込み、無表情のエドヴァルドの表情筋が息を吹き返す。誘拐や暗殺などに巻き込まれながらも鬼畜な義父に溺愛されていく魔法のある世界のお話です。 シリアスもありますが、コメディよりです(*´▽`*)。 *作者の勝手なルール、世界観のお話です。突っ込みどころ満載でしょうが、笑ってお流しください(´▽`) *話の中で急な暴力表現など出てくる場合があります。襲撃や尋問っぽい話の時にはご注意ください! 《2023.10月末にレジーナブックス様から書籍を出していただけることになりました(*´▽`*)  規定により非公開になるお話もあります。気になる方はお早めにお読みください! これまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!》

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

婚約破棄されたけど、二人の殿方に愛された

マルローネ
恋愛
子爵令嬢のリオナは伯爵令息のセルンに婚約破棄を言い渡されてしまった。 あまりのことに戸惑うリオナだが、二人の殿方が彼女を取り合うことになる。 第四王子であり幼馴染のヨシュアと侯爵令息であり、リオナに恋心を抱いたマイケルだ。 マイケルとヨシュアはリオナを巡って奮闘することになるのだった。 セルンはとんでもない敵が生まれてしまい、リオナに婚約破棄したことを心から後悔する羽目に……。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。