804 / 1,049
連載
少年期[962]不完全燃焼を恐れる
しおりを挟む
(なん、なんだ……この化け物は)
ゼルートの魔力量は、歴代の魔法使い……人間以外の存在、モンスターを含めても圧倒的なものであり、たかがそれなりに優秀……その程度の魔法使いが同じ土俵で勝てる相手ではない。
(この魔力量、質…………あの話は、本当だったというのか!!??)
開戦直後の大魔法を撃ち合う際、ゼルートはメテオワイバーンスコールを放ち……その直ぐ後に煉獄の凶弾と天竜の戯れを発動し、ディスタール王国側の冒険者や兵士、騎士たちを多く殲滅させた。
大勢の魔法使いが力を合わせてと言うのであればまだしも、たった一人の魔法使いがそれを行った聞いても……納得できるわけがない。
ゼルートがその直後にひとっ跳びで超最前線の位置に飛び降りて突貫したこともあり、ゼルートが実は接近戦よりも魔法関連の技術、攻撃力の方が優れていると言われても、それを信じる方が難しい。
とはいえ、本当に才能という面では武器術や体術よりも、魔法の方が優れているゼルート。
ディスパディア公爵家の次男は実際に相対したことで、ようやくその恐ろしい話が本当だったのだと理解出来た。
「…………危機感知力が高いのか、それとも魔力感知が優れてるのか……あんた、俺がここに来てからずっと震えてるな」
「っ!!??」
本心を見透かされ、表情に動揺が浮かぶインテリ次男。
ゼルートは危機感知力が高い人間を臆病者だとは思わない。
前世よりも圧倒的に人の命が軽く、殺せる道具と力が多い世界。
そんな世界で生き抜くためには、やはり危機感知力は欠かせない武器。
だが……現在、自分は相手の恨みや妬み、復讐心を受け止める立場。
そして、最後は鉄拳をぶつけて勝負を終わらせる。
しかし、目の前の人物はどう見ても復讐対象である自分に対して、憎しみよりも恐怖が勝っている。
「そんな状態で俺と戦っても意味はないと思いますよ。どうせ後から、自分はあの時本気じゃなかった、全力で出し切れていなかったんだって言い訳が止まらなくなる」
「ッ!!!!!! 貴様、何を、理由にっ!!」
「そういう見た目をしてるんだったら、今自分が図星を刺されたという状況を理解してくださいよ」
この時、ゼルートの頭の中にはまだ自分は全力を出していない。それを理由にインテリ次男が後で暴走するのを避けたいという考えが浮かんでいた。
(まっ、以前と同じようにすれば良いだけだよな)
自分の欲望のままに動くカスを相手に、自身も抑えることなく煽っていた時期を思い出しながら口を開いた。
「五男の方と四男の方は勇猛果敢に挑んできましたが、どうやら次男のあなたは先程自分と戦ったお二人、そして……あの戦争で、自分に最後の砦として挑んで来たローレンスさんと比べて、ただの臆病者だったようですね」
次の瞬間、火山が噴火したかと思えば、空気が急速に凍り付き始めた。
(言おうと思えばまだまだ煽り文句は出てくるけど、どうやらこれ以上必要ないみたいだな)
感情の爆発が恐怖を上回った。
そして……煽りに対してキレることはなかった。
インテリ風な見た目は伊達ではなく、この醜態は己の弱さが招いた結果。
それはどうしようもない事実であることを認め……今は悔しさを全て、ゼルートを倒すための力に変える。
「上等な魔力だ……こい!!!」
ゼルートの言葉が引き金となり、魔法合戦がスタート。
普通に考えればゼルートが一気に肉弾戦で詰めてしまっても問題はないのだが、五男と四男とでは土俵が違い過ぎるので、敢えて攻撃魔法の打ち合いという土俵に上がった。
(ふ~~~~ん……悪くないわね。攻撃力、魔法の連射速度……Bランクの中でも最上位ってところかしら。でも……やっぱり五男と四男の令息と同じで、その年齢にしてはそれなりにってレベルね)
アレナが考えていることは、インテリ次男も理解していた。
ゼルートの魔力量は、歴代の魔法使い……人間以外の存在、モンスターを含めても圧倒的なものであり、たかがそれなりに優秀……その程度の魔法使いが同じ土俵で勝てる相手ではない。
(この魔力量、質…………あの話は、本当だったというのか!!??)
開戦直後の大魔法を撃ち合う際、ゼルートはメテオワイバーンスコールを放ち……その直ぐ後に煉獄の凶弾と天竜の戯れを発動し、ディスタール王国側の冒険者や兵士、騎士たちを多く殲滅させた。
大勢の魔法使いが力を合わせてと言うのであればまだしも、たった一人の魔法使いがそれを行った聞いても……納得できるわけがない。
ゼルートがその直後にひとっ跳びで超最前線の位置に飛び降りて突貫したこともあり、ゼルートが実は接近戦よりも魔法関連の技術、攻撃力の方が優れていると言われても、それを信じる方が難しい。
とはいえ、本当に才能という面では武器術や体術よりも、魔法の方が優れているゼルート。
ディスパディア公爵家の次男は実際に相対したことで、ようやくその恐ろしい話が本当だったのだと理解出来た。
「…………危機感知力が高いのか、それとも魔力感知が優れてるのか……あんた、俺がここに来てからずっと震えてるな」
「っ!!??」
本心を見透かされ、表情に動揺が浮かぶインテリ次男。
ゼルートは危機感知力が高い人間を臆病者だとは思わない。
前世よりも圧倒的に人の命が軽く、殺せる道具と力が多い世界。
そんな世界で生き抜くためには、やはり危機感知力は欠かせない武器。
だが……現在、自分は相手の恨みや妬み、復讐心を受け止める立場。
そして、最後は鉄拳をぶつけて勝負を終わらせる。
しかし、目の前の人物はどう見ても復讐対象である自分に対して、憎しみよりも恐怖が勝っている。
「そんな状態で俺と戦っても意味はないと思いますよ。どうせ後から、自分はあの時本気じゃなかった、全力で出し切れていなかったんだって言い訳が止まらなくなる」
「ッ!!!!!! 貴様、何を、理由にっ!!」
「そういう見た目をしてるんだったら、今自分が図星を刺されたという状況を理解してくださいよ」
この時、ゼルートの頭の中にはまだ自分は全力を出していない。それを理由にインテリ次男が後で暴走するのを避けたいという考えが浮かんでいた。
(まっ、以前と同じようにすれば良いだけだよな)
自分の欲望のままに動くカスを相手に、自身も抑えることなく煽っていた時期を思い出しながら口を開いた。
「五男の方と四男の方は勇猛果敢に挑んできましたが、どうやら次男のあなたは先程自分と戦ったお二人、そして……あの戦争で、自分に最後の砦として挑んで来たローレンスさんと比べて、ただの臆病者だったようですね」
次の瞬間、火山が噴火したかと思えば、空気が急速に凍り付き始めた。
(言おうと思えばまだまだ煽り文句は出てくるけど、どうやらこれ以上必要ないみたいだな)
感情の爆発が恐怖を上回った。
そして……煽りに対してキレることはなかった。
インテリ風な見た目は伊達ではなく、この醜態は己の弱さが招いた結果。
それはどうしようもない事実であることを認め……今は悔しさを全て、ゼルートを倒すための力に変える。
「上等な魔力だ……こい!!!」
ゼルートの言葉が引き金となり、魔法合戦がスタート。
普通に考えればゼルートが一気に肉弾戦で詰めてしまっても問題はないのだが、五男と四男とでは土俵が違い過ぎるので、敢えて攻撃魔法の打ち合いという土俵に上がった。
(ふ~~~~ん……悪くないわね。攻撃力、魔法の連射速度……Bランクの中でも最上位ってところかしら。でも……やっぱり五男と四男の令息と同じで、その年齢にしてはそれなりにってレベルね)
アレナが考えていることは、インテリ次男も理解していた。
58
お気に入りに追加
9,024
あなたにおすすめの小説
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。