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少年期[939]その身で体感するまで
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地上での問題が終わった後、ゼルートたちはブルーシーサーペントの刺身などを味わいながら海中ダンジョンの攻略を続けており、次の探索ではようやく四十階層に到着する。
そう断言出来るほど攻略が進んだ段階で、面倒な一報が届いた。
「その……本当に何度も何度も申し訳ありません」
「あぁ~~~……あれですよ。あなたはただ仕事をしてるだけなんで、何も謝ることはありませんよ」
本日も張り切ってダンジョン探索に勤しもうと部屋から出ると、食堂にはギルド職員が待機していた。
また商船を襲う厄介な魔物の出没や、現実が見えていないルーキーたちの指導をお願いしたい……という訳ではない。
そういう訳ではないのだが、ギルド職員としては何度も何度もゼルートたちの自由を制限しているように思え、恐れを感じていた。
「その、こちらのお手紙がゼルートさん宛に届きまして」
「俺への手紙、ですか」
何故か……何故かその手紙は木箱の中に入っていた。
使用されている木材からして、嫌な予感がマックス。
(……解ってる、解ってるよ。受け取らないって選択肢はないんだ)
ゼルートはギルド職員にチップを渡し、朝食を中断して部屋へと戻った。
「嫌な予感しかしない……クソッ」
悪態を突きながら、木箱を開けると……中には一通の手紙。
そして……封印に王家の印が付いていた。
「ゼルートは本当にモテモテね」
「国にモテてもなぁって話だ……まさかとは思うけど、海鮮丼を作ってくれって要望じゃないよな、国王陛下」
既にゼルートが製作した海鮮丼の話は、王都まで広がっていてもおかしくない。
一部の権力者や豪商たちは休暇を取ってラルフロンにまで来ていたが、国王がお忍びでラルフロンまで来るのは……まず不可能。
そのため、国王陛下がゼルートに指名依頼という形で海鮮丼制作を頼む可能性は、ゼロだと断言は出来ない。
「えっとぉ………………あぁ~、はいはい………………そういう、気持ちになっても、おかしくはないか」
手紙を一通り読み終えたゼルートは頭を抱え、ベッドに寝転がった。
「それで、結局何が書かれていたの?」
「差出人は国王陛下。内容は、ディスタール王国との戦争で俺が最後に倒した、ローレンス・ディスパディアの親族から、申し出があった」
「ほほ~~……解ったぞ、ゼルート。そのディスパディア家の連中は、お前に復讐しようと考えてる訳だな」
「復讐というか、とりあえずそれに近い、か。ディスパディア家の中で、何人か俺に決闘を申し込みたい奴がいるみたいでな」
ディスパディア家の者たちとしては、ローレンスが一方的に敗れたという事実が信じられず、実際にゼルートの実力をその身に体験しなければ、本当にローレンスが負けたのだと信じられない。
勿論、全員が事実を受け入れられない訳ではないが、その実力を良く知る者ほど信じられないという思いが強い。
「国王陛下としては、強制ではない。断っても良いらしい」
「いや、こういう手紙を出してくる時点で、殆ど強制と変わらないでしょ」
「そう思われるのも無理はないが……国王陛下の真意はどうであれ、この事実は俺に伝えなければならない。そう思っての手紙だろ。けど……実際にディスパディア家からの要望を受け入れるなら、俺がディスタール王国に行かないと駄目だろうな」
「敵戦地に足を踏み入れるという訳か……ふっふっふ、血が騒ぐな」
「ば~か。確かに戦争はしたが、それはそれでこれはこれって話だ。本当に向こうが俺らを潰そうとしてきたら、とりあえずディスタール王国の王都が機能しなくなるだけだ」
(……これを本気で言ってるのだから、恐ろしいことこの上ないわよね)
戦争で多くの冒険者、兵士、騎士を失ったディスタール王国ではあるが、王都の守りが大幅に減った訳ではない。
とはいえ……本当に王族が一人でも逆恨みに絡めば、今しがたゼルートが発した言葉は現実となる。
そう断言出来るほど攻略が進んだ段階で、面倒な一報が届いた。
「その……本当に何度も何度も申し訳ありません」
「あぁ~~~……あれですよ。あなたはただ仕事をしてるだけなんで、何も謝ることはありませんよ」
本日も張り切ってダンジョン探索に勤しもうと部屋から出ると、食堂にはギルド職員が待機していた。
また商船を襲う厄介な魔物の出没や、現実が見えていないルーキーたちの指導をお願いしたい……という訳ではない。
そういう訳ではないのだが、ギルド職員としては何度も何度もゼルートたちの自由を制限しているように思え、恐れを感じていた。
「その、こちらのお手紙がゼルートさん宛に届きまして」
「俺への手紙、ですか」
何故か……何故かその手紙は木箱の中に入っていた。
使用されている木材からして、嫌な予感がマックス。
(……解ってる、解ってるよ。受け取らないって選択肢はないんだ)
ゼルートはギルド職員にチップを渡し、朝食を中断して部屋へと戻った。
「嫌な予感しかしない……クソッ」
悪態を突きながら、木箱を開けると……中には一通の手紙。
そして……封印に王家の印が付いていた。
「ゼルートは本当にモテモテね」
「国にモテてもなぁって話だ……まさかとは思うけど、海鮮丼を作ってくれって要望じゃないよな、国王陛下」
既にゼルートが製作した海鮮丼の話は、王都まで広がっていてもおかしくない。
一部の権力者や豪商たちは休暇を取ってラルフロンにまで来ていたが、国王がお忍びでラルフロンまで来るのは……まず不可能。
そのため、国王陛下がゼルートに指名依頼という形で海鮮丼制作を頼む可能性は、ゼロだと断言は出来ない。
「えっとぉ………………あぁ~、はいはい………………そういう、気持ちになっても、おかしくはないか」
手紙を一通り読み終えたゼルートは頭を抱え、ベッドに寝転がった。
「それで、結局何が書かれていたの?」
「差出人は国王陛下。内容は、ディスタール王国との戦争で俺が最後に倒した、ローレンス・ディスパディアの親族から、申し出があった」
「ほほ~~……解ったぞ、ゼルート。そのディスパディア家の連中は、お前に復讐しようと考えてる訳だな」
「復讐というか、とりあえずそれに近い、か。ディスパディア家の中で、何人か俺に決闘を申し込みたい奴がいるみたいでな」
ディスパディア家の者たちとしては、ローレンスが一方的に敗れたという事実が信じられず、実際にゼルートの実力をその身に体験しなければ、本当にローレンスが負けたのだと信じられない。
勿論、全員が事実を受け入れられない訳ではないが、その実力を良く知る者ほど信じられないという思いが強い。
「国王陛下としては、強制ではない。断っても良いらしい」
「いや、こういう手紙を出してくる時点で、殆ど強制と変わらないでしょ」
「そう思われるのも無理はないが……国王陛下の真意はどうであれ、この事実は俺に伝えなければならない。そう思っての手紙だろ。けど……実際にディスパディア家からの要望を受け入れるなら、俺がディスタール王国に行かないと駄目だろうな」
「敵戦地に足を踏み入れるという訳か……ふっふっふ、血が騒ぐな」
「ば~か。確かに戦争はしたが、それはそれでこれはこれって話だ。本当に向こうが俺らを潰そうとしてきたら、とりあえずディスタール王国の王都が機能しなくなるだけだ」
(……これを本気で言ってるのだから、恐ろしいことこの上ないわよね)
戦争で多くの冒険者、兵士、騎士を失ったディスタール王国ではあるが、王都の守りが大幅に減った訳ではない。
とはいえ……本当に王族が一人でも逆恨みに絡めば、今しがたゼルートが発した言葉は現実となる。
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