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少年期[915]不名誉ではない

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「海の中にあるかもしれないダンジョン、ねぇ……面白そうだな」

昼間に話していた内容をゼルートに伝えると、非常に楽しそうな表情を浮かべた。

「どうせなら、明日……は、ギリギリ指名依頼が入ってるんだったか。なら、明後日から本格的に探してみるか」

「私たちとしては嬉しい提案だけど、明日だけで権力者たちからの指名依頼は片付けられそうなの?」

アイテムバッグにしまっている肉と交互に食べているお陰で、未だに海鮮丼の味に飽きることがない。

初めて食べた時の衝撃は今でも覚えているため、明日程度の時間で海鮮丼を望む全ての権力者たちを片付けられるとは思えない。

しかし、そんなことはゼルートも解っていた。

「それは片付かないだろうな。でも、別に明後日以降は受けなきゃ良い話だ」

「それは……アラッドは良いのかしら?」

「良いも悪いも、指名依頼とはいっても、受けるか否かを決めるのは俺だ。放っておけば村を四つや五つ破壊するような狂暴なモンスターを倒して欲しいとか、そういう系の依頼なら受けるけどな」

正義の味方を気取るつもりはないが、そういった依頼に関しては見過ごせない。
そういった精神を持っているが、権力者たちが望むのは厄介事の解決ではなく、海鮮丼という美味な食事。

「でも、明後日も同じく俺に来るのは海鮮丼を作ってくれって指名依頼だけだ。既にこの前指名依頼してきた商会の方に作るのに必要な食材は説明したし、あとはそっちでなんとかしてくれるだろ」

「そう、ね。何時になるかは分からないけど、出来ないことはないでしょうね」

海鮮丼という料理に対して、そんな簡単に教えても良いのか?
という思いは多少あったものの、アレナが知るゼルートの実力があれば……稼ぐことに苦労しないのは、もう身に染みて解っていた。

「そうだろ。そもそもだ……俺は、この街にバカンスをしに来たんだ。好き好んで海に潜ってモンスターを狩るのはともかく、毎日毎日海鮮丼を作ってられるかって話だ。俺は料理人じゃねぇんだぞ」

しっかり料理のスキルを習得しており、スキルレベルがプロとそこまで変わらないゼルートの言葉は、あまり説得力がなかった。

「…………うむ、確かにそうだな。ゼルートは冒険者であって、料理人ではない!」

「おい、その間はなんだよ」

「しょうがないじゃない。ゼルートは私たちが知らないオリジナルの料理を幾つも作ったりしてるんだから、ゼルートはそうでなくとも、私たちからしたら冒険者兼料理人みたいなものよ」

決して悪い事ではなく、不名誉なことでもない。
それはゼルートも一応解っているため、それ以上文句は言わなかった。

翌日、ゼルートは海鮮丼を求める権力者たちを捌き終えた後、ギルドに翌日からは指名依頼を受けないと伝えた。

「えっ!? それは、その……べ、別の街に行くということですか!!??」

「いや、そういう訳じゃないです。ただ、俺元々この街にバカンス目的で来たんで、ここらで仕事は止めたいんですよ」

偶にギルドの依頼を受けるということに関しては、仕事ではなく気分転換。

指名依頼を何度も何度も受け付け続ける日々……それは、ゼルートにとって初めて仕事をしたという感覚だった。
勿論、良い意味ではなく疲れる……怠い感覚が強い仕事。

偶にクエストボードに貼られている依頼を受けるのと同じく、偶に受けるのであればそうは感じない。
しかし、何度も何度も同じことを繰り返すのは……少々メンタルにくるものがあった。

「それじゃ、そういうわけなんで」

「あ、はい……分かりました」

ギルドとしては、簡単に了承できない。
ただ……相手は、あの覇王戦鬼。
ここで無理に依頼を受けと貰おうとすれば、どうなるか分かったものではない。

先日の名刀等を取り返す一件で多くの海賊団を沈めた功績もあり、翌日……ゼルートは無事に海中ダンジョンの探索を行うことが出来た。
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