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少年期[905]やはり飽きがくる

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とある貴族の男の指名依頼を受けた翌日、ゼルートはその日と同じ様に……是非とも海鮮丼をご馳走してほしいという指名依頼を受けた。

「面倒なんで、纏めてで良いですよね」

ザイアンと、とある貴族の男が食べた海鮮丼をいち早く食べたいと思った者たちは、先に自分の指名依頼を受けてもらおうと、まずはゼルートの元へと向かった。

その際、ゼルートが告げた条件に……貴族や休暇中の騎士などは、出来れば周囲にあまり人がいない状況で食べたいという思いがあった。
しかし……海鮮丼を作れるゼルートの表情から、本気のめんどくささが溢れているのを察知し、実際に文句を口に出す者はいなかった。

「うわぁ……昼食と夕食組で分けましょうか」

この提案にも、反対する者は現れなかった。
勿論、貴族やその関係者、騎士たちも同様に反対などしない。

何故なら……二つ名、覇王戦鬼の名を持つ怪物だから。
ゼルートの元に集まった者たちは、時たまその事実を忘れそうになるも、直ぐに思い出し、零れそうになったプライドを即座に戻す。

ここでゼルートの不況を買おうものなら、冒険者界隈の者たちから永遠に白い目で見られる可能性があり、喧嘩などになれば……ボコボコにされるのは必至。

依頼者たちは、大人しくゼルートの言う通りに従った。

「それでは、少々お待ちください」

依頼者の中に貴族や騎士がいるため、今回も一から米を炊き、魚系魔物の死体を解体していく。

(おかわりの分も考えると、米を炊く量が中々しゃれにならないな)

やはり一度に十人分以上の指名依頼を受けるべきではなかったか、と若干後悔しながらも料理を進めていく。

「お待たせしました。こちらが海鮮丼になります」

「おぉ~~、これが噂の」

お盆なども全員分用意し、実食スタート。

噂として耳に入っていた他者からの情報と、好奇心が抑えられず、まずは冒険者の一人が勢い良く食べ始めた。

「う、美味い!」

シンプルな感想を口にし、ザイアンと同じく少し焦りながら、勢い良く食事の手を進める。

一人が食べ始めれば、後は全員勢い良く腹に入れてしまう。

先の二人と同じ説明をし、今回ばかりは人が多いため、おかわりはセルフでお願いした。

(海鮮丼の用意をするだけで、白金貨二枚以上が稼げる、か……同業者たちからすれば、ふざけんなって話だろうな)

米や醤油などは別の大陸から取り寄せているのではなく、ゼルートの創造スキルを利用して生み出しているため、必要経費は殆どない。

ハッキリ言って、ぼろ儲けである。

刺身に使っている魔物の強さは、ゼルートたちからすれば大したものではない。
そのため、刺身を手に入れる労力もそこまでのものではない。

そして依頼人たちが海鮮丼を満足いくまで食べた後、先日と同じ様な質問をされる。
勿論、嫌な顔はせずに先日と同じ内容の答えを返す。

ゼルートが質問にあっさり答える様子に、儲けの気配に敏感な貴族たちなどは、小さくない驚きを感じていたが、冒険者として十分稼げているため、特に必守する必要はない。

この後、ゼルートは数時間後にもう一仕事を行い、また同じ質問に答えた。
仕方ない流れとはいえ、ゼルートの夕食は依頼人たちと同じ海鮮丼。

(…………美味い。相変わらず美味いんだが、さすがに少し飽きてきたな)

魔物の刺身ということもあって、その美味しさは初見であれば、腰が抜ける美味さ……と言っても過言ではなかった。

しかし、何日も似た様な食事ばかりだと、当然飽きるというもの。

(後で肉でも食べるか)

依頼人たちとの夕食では腹四分目程度に済ませ、依頼が終わった後、がっつりした肉丼を食べた。

とりあえず、冒険者らしからぬ依頼は終了……という訳にはいかず、翌日にはまた同じ依頼がゼルートの元に届いた。

(アレナたちが仕留めて持ってきてくれるから、刺身には困らないが、俺もそろそろ海に潜って狩りをしたいな)

なんて思いつつ、一通り依頼人たちの腹を満たすまで、ゼルートはロングソードではなく包丁を振るい続けた。
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