上 下
740 / 1,043
連載

少年期[897]明日も明後日も

しおりを挟む
「はぁ~~~、腹減ったな」

十分に海を満喫した三人は、昼食を食べにレストランが多い場所へ向かっていた。

「何が食べたい、って訊かなくても良いよな」

「えぇ、そうね」

「今も明日も明後日も、海鮮が食べたい気分は変わらない」

先日の露店や、宿屋の夕食でも食べたが、それでもまだまだ食べ足りない三人。
ゲイルたちも同じ気持ちなため、ゼルートたちは迷うことなく海鮮系がメインの店に入ろうと決めた。

勿論料理店は海鮮がメインの店が多い。

そこで、今回はラルが一番食欲がそそられる店に決めた。

「すいません」

入店後、直ぐに従業員に事情を説明し、ゼルートたちはゼルートたちで好きなようにメニューを食べ始めた。

モンスターと戦ったり、模擬戦を何回も行っていた訳ではない。
ただ……それでも、全身を使って動き回ていたため、それなりに腹を空かせた状態になっていた。

海鮮料理が運ばれてくると、三人は勢い良く食べ始める。
アレナも上品な食べ方はいつもと変わらないが、それでも食べるペースがいつもより早い。

最初からテーブルに収まらない量の料理を注文していたが、十分も経てばなくなるだろうと思い、ゼルートは直ぐに追加で注文。

三人があのゼルートたちだと周囲の客たちが気付き始めたこともあり、多くの視線を向けられる三人。

だが、今の三人にはそんな視線を気にする余裕はなく、全力で海鮮料理を堪能することだけを楽しんでいた。

「ふぅ~~、かなり腹一杯になってきたな」

「そう、ね。少し食べ過ぎたかも」

後悔はない。後悔はないが、少々食べ過ぎたと感じ、腹回りが少し気になるアレナ。

「うん、そこそこ食べたな……まっ、動けば直ぐ元通りになるだろ」

「それもそうね」

休息するためにラルフロンに来た。
その思いは決して変わらないが、それはそれでこれはこれ。

女性であれば、冒険者という職業に就いてても、そういった部分は気になる。
であれば……動いて元通りにするのが一番手っ取り早い。

もう数品を食べ終えた後、ゼルートはゲイルたちが食べた分も合わせて、会計を行う。
その金額を耳にした他の客たちは、一斉に吹いた。

「多分丁度です」

サラッと店員から伝えられた金額を支払うゼルート。
その光景に更に驚く客たちだが……ゼルートからすれば、もう何度も体験した状況。

(解る、そうなるわよね)

そっち側に足を踏み入れつつも、一般人側の思いが理解出来るアレナ。

金額としては、どう見ても一回の食事量とは思えない額。
そんな額を、サラッと払うゼルートに、驚くなと言うのは無理な話。

多くのモンスターを倒して、ダンジョンに何度も戻ってて、戦争で大活躍して貴族になったのを考えれば、何もおかしくない……とは言えないし、思えない。
それが他の客たち、全員の本音だった。

「はぁ~~、超美味かった」

「また来たいわね」

「一か月以上は滞在するんだろ? なら、絶対にまた来れるじゃないか」

海に戻る間、ゼルートたちは次に訪れたいレストランを探していた。

「んじゃ、これを使って遊ぼう」

「ボール、よね?」

「ボールだけど、そんなに固くないぞ」

錬金術を使って生み出したボールを渡されたアレナは、直ぐに固くないという言葉を体感。

「本当ね。でも、これでどうやって遊ぶの?」

「別に難しいことじゃ……いや、若干難しいか」

ゼルートはバレーボールの対人スパイクについて軽く説明を行った。

現在三人がいる場所はビーチの中でも超端っこの位置なこともあり、全く客がいないと言っても過言ではない。

「俺も初めてだし、覚えながら楽しもうぜ」

よっぽどセンスがなければ、最初から上手く出来ない。
身体能力が一般人と比べて馬鹿みたいに高い三人でも、最初からプロ並み行うことは出来ないが……一時間も経てば、ラリーが一瞬で終わることはなく、レシーブもそれなりにものになっていた。

特に細かいルールもなく、単純な遊びではあるが、三人は夢中で交代しながら繰り返し、気付けばあっという間に日が沈みかけていた。
しおりを挟む
感想 680

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。