冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［８７９］中々出られない空間

いきなりゾンビ化したアイスタイガーとスノードラゴンが現れた原因を探る。

そう決めたゼルートたちだが……特にこれといった策はない。
街の外に出て一般的に冒険者が行かないエリアまで足を運び、異変を探す。

運良くそれらしいアンデットを見つけることが出来れば、儲けもの。
ゼルートたちの移動速度を考えれば、そう遠くない内に見つかる……とは限らない。

それなりに離れた場所には山があり、洞窟になっている部分を探索するとなると、そう簡単に全てを探索するのは難しい。

（ん～～～……距離はちょっと遠いけど、そういった場所の方が怪しいよな）

雪原はある程度探索したが、それらしいモンスターは今のところ見つかっていない。

「中々見つからないわね」

「だな……まっ、そもそも本当に高位のアンデットがいるのか……そこが怪しいとすら思えてくる」

「それを言ったら、何が原因なのか本当に予想がつかなくなるけど、そう思うのも無理はないわね」

既に一週間は探索し続けているが、それらしい手掛かりは一つも見つかっていない。

再びBランクやAランクのゾンビ化した魔物との遭遇もない。
それはそれで有難いことだが、何も手掛かりが見つからないのは、非常にもどかしい状況。

「……高位のアンデットがこの辺り一帯にいるのであれば、どこか拠点がある筈だ」

「だな。アイスタイガーやスノードラゴンを復活させたとなれば、人の言葉を話せるぐらいの実力があるだろうし……もっとそういう所をメインに探すか」

「高位アンデットが隠れて居そうな場所を探すのも良いけど、明日ぐらいは休息日にしましょう」

一週間、ゼルートたちは毎日雪原辺りを探索し続けた。

そこそこ雪が降っている日でも探索を行っていたので、いくらサクッと街に戻って毎日疲れを癒せていたとしても、体は丸一日の休息日を欲していた。

「分かった。七日間ぐらい探索してたし、明日は丸っと休息日にしよう」

ゼルート的には、まだまだいける。
まだ三日間ぐらい探索を続けられそうだが、その感覚がよろしくないのだろうと判断。

まだまだやれると思っている時こそ、自分の疲れに気付けていない事が多い。
両親からのアドバイスを思い出し、ゼルート自身も翌日はしっかり休むと決めた。

「ゼルート、朝よ！」

「ん……もうちょい寝る」

「さっきも同じこと言ってたわよ」

翌日、ゼルートは中々ベッドから離れずにいた。

「先に、朝ご飯食べててくれ」

「分かったわ」

休息日であるため、アレナはこれ以上ゼルートを起こそうとはせず、ルウナと一緒に食堂へ向かう。

（はぁ～～～～……やっぱり、中々抜けられないや）

最近までは、高ランクの魔物をゾンビ化させて復活させた、高位アンデットを探そうという目標があった。

しかし、今日は休息日だと事前に決めていたこともあり……ベッドの心地良さから中々抜け出せずにいる。
冒険中に身に付けているマジックアイテムを、一つでも装備すれば問題は解決する。

ただ……ベッドで毛布にくるまっているからこそ、感じられる暖かさがある。

結局三度寝、四度寝、五度寝を繰り返し、ゼルートがベッドから出たのは昼過ぎだった。

（何しようか～～）

ぼさぼさの髪を整え、昼食を口に運びながら本日の予定を考える。

考えた結果、冒険者ギルドの訓練場で体を動かそうという結論に至った。

休息日じゃないのでは？　と思われるかもしれないが、ゼルートにとって休息日に体を動かすことは、特に珍しいことではない。

「あの、ゼルートさん」

「ん？」

「模擬戦を、してもらえませんか！」

一人のDランク冒険者が、おそるおそる模擬戦を申し込むと、ゼルートはそれを快諾。

すると、次々にゼルートの元に、是非模擬戦をしたいと申し出る同業者が増えた。
特に予定がないゼルートは、それらを全て受けた。

そんな連戦を終えた後の休憩時間、興味深い話を聞いた。