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少年期[834]奇跡の二段跳び

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「あ、父さん。どうだった?」

「伯爵になったぞ」

「おぉ~~~、やっぱり」

男爵からの伯爵へ、二段跳び。

普通ならあり得ない正真なのだが……街の規模を考えると、既に男爵家が治める街より随分と発展していた。
そして、今回の戦争での活躍が重なり、ガレンは無事……男爵から伯爵へと超出世した。

ただ、超出世したガレンの表情がとても嬉しそうかといえば……あまりそうではない。

出世したら、それはそれでガレンの事を妬む者も増えるので、本人にとっては面倒だと感じる部分もある……というより、面倒なことしかない。

「ゼルート、俺が言うのもあれだが、リラックスして……丁寧に動いて、考えて返答すれば問題無い」

「はい!!」

そこでガレンとレミアの二人と別れ、いよいよゼルートたちが中へと入る番。

(深呼吸、深呼吸)

先程のガレンと同じく二度深呼吸をし、心を落ち着かせたゼルートは騎士の案内に従い、国王陛下が待つ部屋へと足を踏み入れる。

(うわぁ~~~……当たり前だけど、国王陛下以外にも結構人いるな)

万が一……あり得ないとは分かっていても、襲撃などの点を考えて、国王陛下を守る騎士や宮廷魔術師たちは、部屋の中で待機してなければならない。

(おっ、あれはビリーズ・ディスタックさん。意外と優しい態度だった宮廷魔術師のお兄さんもいる)

部屋の中には、ゼルートの顔見知りが幾人かだけいた。

だが、ここでニヤけたりしてはならない。
事前に教えられた位置まで歩くと、片膝を付き……声が掛かるまで、顔を下に向ける。

「面を上げよ」

国王陛下にそう告げられ、三人は面を上げる。

「……ふっふっふ。ゼルートよ、お主の活躍、全て耳にしたぞ」

先程までの厳格な表情がやや崩れ、表情に優しさが現れた。

「私は、自分の仕事を遂行したまでです」

国王陛下の耳に自身の活躍が入った。
普通に考えれば喜ぶべきところだが、あくまで謙虚に答える。

その回答に、場にいる誰も不機嫌な表情を表に出さなかった。

「それに……国王陛下。以前、私がまだ幼い頃にくださった一つの武器を、覚えていらっしゃいますか」

ゼルートから投げかけ。
許可されていないにもかかわらず、いきなり問うたゼルートを諫めようと考えた者がいたが、それよりも前に国王陛下がゼルートの問いに答えた。

「あぁ、勿論覚えているとも。あの日は、とても愉快な光景を見せてもらった」

三対一という不利な状況であるにもかかわらず、大胆な賭けを提案し……決闘では、一般的には子供が行えるとは思えない攻撃で圧倒。

その際に褒美として、ゼルートに一つの刀剣を与えたことを……今でも鮮明に覚えている。

「あの時頂いた武器……獅子王のお陰で、最後の壁を斬り裂くことが出来ました」

「ほほぅ、そうかそうか。それは嬉しいことを聞いた。あの時渡した武器が、今回の戦争に役立ったか……嬉しい限りだな」

世間話……と言える会話はここで終わり、いよいよ国王陛下かからゼルートへの褒美が伝えられる。

「ゼルートよ、今回の戦争で大いに活躍した名誉を称え……お主に男爵の爵位を与える」

「謹んで、お受けします」

正直……いらない。
だが、当然そんな言葉を口に出せるわけがない。

「そして、ゼルートとの仲間であるアレナとルウナ、二人の活躍も耳にしている」

「「光栄です」」

二人は息ピッタリな様子で、即返答。

「よって、そなたらの活躍を称し、騎士の爵位を与える」

「「謹んでお受けします」」

二人もゼルートと同様、爵位などには興味がないたちだが……当然、断れるわけがなく、素直に騎士の爵位を受け取った。

「ゼルートよ、王都に滞在している間に、新しい家名をゆっくり考えると良い」

「お気遣い、誠に感謝します」

さて……ここで、もう国王陛下と面を会わせる時間は終わり……とはいかなかった。
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