670 / 1,043
連載
少年期[827]吼えた時、理性もあった
しおりを挟む
ガレンとレミアと無事に再会し、ゼルートは周りの兵士や冒険者、貴族に衆目されながら学生たちが拠点にしているテントへと向かった。
「クライレット兄さん、レイリア姉さん!!」
視界に五体満足の兄と姉の姿が映り、ゼルートは思わず大きな声で叫んでしまった。
その声でクライレットとレイリアもゼルートの存在に気付き、全力ダッシュ。
二人はレミアと同じく思いっきりゼルートを抱きしめた。
ただ、この時ばかりはゼルートも二人と同じく抱きしめ返した。
勿論、全力で抱きしめてはいない。
そんなことすれば、ステータスの差で二人の骨をバキバキに折ってしまう。
「ゼルートも無事だったのね」
「うん、全然無事だったよ。息つく暇がないって感じだったけど、対処出来ないってほど忙しくはなかったかな」
常に気配察知を使い、なるべく先読みしながら戦い……時には反応速度に任せて攻撃を対処。
僅かな隙を発見すれば、容赦なくぶっ刺していた。
「兄さんと姉さんは大丈夫だった?」
二人が五体満足で生きている。
それは見れば分かるが、チラッとだけ学生たちの方に敵が襲い掛かったという話を聞いた。
「……正直、アラッドがくれた錬金獣? あれがなかったら危なかったわね」
「同感だな。本当は僕と、パーティーメンバーだけで何とかしたかったが、そうもいかなかったよ」
クライレットとレイリアでも対処出来ない?
いったいどんな敵が二人や、二人の仲間に襲い掛かってきたのかを聞き……ゼルートは二人が錬金獣に頼った理由に納得した。
(それは確かに、錬金獣に頼らなかったら不味かったな)
斥候系のCランクが三人と、一番油断した隙を狙う斥候が一人。
そしてクライレットの方には、クライレットたちが生徒たちの方に加勢しない為に投入された、Bランクの冒険者が相手。
二人が努力する天才だということは知っているが、経験数などを考えれば、追い詰められてしまうのも仕方ない。
逆にそこで意地を張って自分や仲間の力だけでどうにかしようと考えていれば、仲間や同級生を失っていた可能性が非常に高い。
最後の最後でレイリアたち襲おうとした斥候の力量なら、確実に生徒を五人は殺していた。
クライレットたちも、仲間を犠牲にして勝利を得ることが出来た……かもしれないといった戦況。
二人にとっては癪かもしれないが、ゼルート作の錬金獣に頼ったことは、決して怠慢でも甘えでもなかった。
「とりあえず、二人が無事で本当に良かったよ」
「それはこっちのセリフよ。ドカンっとでっかい魔法を撃ったと思ったら、いきなり最前線に跳んで盛大に喧嘩売るんだもん」
「あれには少し驚かされたな。まぁ、他の兵士や冒険者と比べて圧倒的に高い実力を持っているゼルートが敵の意識を引き付ければ、戦争が少しぐらいは上手く運ぶ可能性はあっただろう」
クライレットはゼルートの考えを全て読んでいた。
(な、なんでそこまで細かく解るの?)
感情的に吼えた部分は確かにあったが、少しでも敵の意識を自分に向けられたらという考えもあった。
「でも、途中からはあまり同業者たちと戦わなくなったね」
「あらそうなの? ゼルートは確かに強いし、一緒に動いてたゲイルもずば抜けてるから……恐れをなしたってところかしら」
レイリアは冗談で言ったが、クライレットはまさにその通りだと考えた。
「そうだろうな。兵士や騎士、貴族であれば国と国の戦争からは逃れられない。迫って来る相手から逃げるなど、仮に生き残ったとしても一生後ろ指を指されるのは間違いない」
「えっと……つまり本当にそういうことなの?」
「僕はそう考えるよ。冒険者であれば、よっぽどの理由がない限り、わざわざ絶対に死ぬと解っている死地に向かう必要はない」
後から何か言われる可能性があるのは同じだが、ゼルートとゲイルが敵を容赦なく武器、魔法を使って紙切れのように葬っていく姿は、多くの冒険者が見ている。
その為、ゼルートとゲイルとの戦いから逃げたとしても、それについてとやかく言う同業者は殆どいない。
「クライレット兄さん、レイリア姉さん!!」
視界に五体満足の兄と姉の姿が映り、ゼルートは思わず大きな声で叫んでしまった。
その声でクライレットとレイリアもゼルートの存在に気付き、全力ダッシュ。
二人はレミアと同じく思いっきりゼルートを抱きしめた。
ただ、この時ばかりはゼルートも二人と同じく抱きしめ返した。
勿論、全力で抱きしめてはいない。
そんなことすれば、ステータスの差で二人の骨をバキバキに折ってしまう。
「ゼルートも無事だったのね」
「うん、全然無事だったよ。息つく暇がないって感じだったけど、対処出来ないってほど忙しくはなかったかな」
常に気配察知を使い、なるべく先読みしながら戦い……時には反応速度に任せて攻撃を対処。
僅かな隙を発見すれば、容赦なくぶっ刺していた。
「兄さんと姉さんは大丈夫だった?」
二人が五体満足で生きている。
それは見れば分かるが、チラッとだけ学生たちの方に敵が襲い掛かったという話を聞いた。
「……正直、アラッドがくれた錬金獣? あれがなかったら危なかったわね」
「同感だな。本当は僕と、パーティーメンバーだけで何とかしたかったが、そうもいかなかったよ」
クライレットとレイリアでも対処出来ない?
いったいどんな敵が二人や、二人の仲間に襲い掛かってきたのかを聞き……ゼルートは二人が錬金獣に頼った理由に納得した。
(それは確かに、錬金獣に頼らなかったら不味かったな)
斥候系のCランクが三人と、一番油断した隙を狙う斥候が一人。
そしてクライレットの方には、クライレットたちが生徒たちの方に加勢しない為に投入された、Bランクの冒険者が相手。
二人が努力する天才だということは知っているが、経験数などを考えれば、追い詰められてしまうのも仕方ない。
逆にそこで意地を張って自分や仲間の力だけでどうにかしようと考えていれば、仲間や同級生を失っていた可能性が非常に高い。
最後の最後でレイリアたち襲おうとした斥候の力量なら、確実に生徒を五人は殺していた。
クライレットたちも、仲間を犠牲にして勝利を得ることが出来た……かもしれないといった戦況。
二人にとっては癪かもしれないが、ゼルート作の錬金獣に頼ったことは、決して怠慢でも甘えでもなかった。
「とりあえず、二人が無事で本当に良かったよ」
「それはこっちのセリフよ。ドカンっとでっかい魔法を撃ったと思ったら、いきなり最前線に跳んで盛大に喧嘩売るんだもん」
「あれには少し驚かされたな。まぁ、他の兵士や冒険者と比べて圧倒的に高い実力を持っているゼルートが敵の意識を引き付ければ、戦争が少しぐらいは上手く運ぶ可能性はあっただろう」
クライレットはゼルートの考えを全て読んでいた。
(な、なんでそこまで細かく解るの?)
感情的に吼えた部分は確かにあったが、少しでも敵の意識を自分に向けられたらという考えもあった。
「でも、途中からはあまり同業者たちと戦わなくなったね」
「あらそうなの? ゼルートは確かに強いし、一緒に動いてたゲイルもずば抜けてるから……恐れをなしたってところかしら」
レイリアは冗談で言ったが、クライレットはまさにその通りだと考えた。
「そうだろうな。兵士や騎士、貴族であれば国と国の戦争からは逃れられない。迫って来る相手から逃げるなど、仮に生き残ったとしても一生後ろ指を指されるのは間違いない」
「えっと……つまり本当にそういうことなの?」
「僕はそう考えるよ。冒険者であれば、よっぽどの理由がない限り、わざわざ絶対に死ぬと解っている死地に向かう必要はない」
後から何か言われる可能性があるのは同じだが、ゼルートとゲイルが敵を容赦なく武器、魔法を使って紙切れのように葬っていく姿は、多くの冒険者が見ている。
その為、ゼルートとゲイルとの戦いから逃げたとしても、それについてとやかく言う同業者は殆どいない。
71
お気に入りに追加
9,033
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい。――『私』が悪役令嬢になった理由――
唯野晶
ファンタジー
【シリアス悪役令嬢モノ(?)。分からないことがあるのは幸せだ】
ある日目覚めたらずっと大好きな乙女ゲーの、それも悪役令嬢のレヴィアナに転生していた。
全てが美しく輝いているセレスティアル・ラブ・クロニクルの世界。
ヒロインのアリシア視点ではなく未知のイベントに心躍らせる私を待っているのは楽しい世界……のはずだったが?
「物語」に翻弄されるレヴィアナの運命はいかに!?
カクヨムで先行公開しています
https://kakuyomu.jp/works/16817330668424951212
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。