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少年期[826]最良の報告

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「まぁ、全員無事で良かったわよ、本当に」

「アレナは俺が今回の戦争で死ぬかもしれないと思ってたのか?」

「……ほんの少しぐらい、可能性はあると思ってたわ」

ゼルートが一般的な強者が追い付くことが出来ない、圧倒的という言葉が生温い程の強さを持っていることは知っている。

Sランクの魔物である悪獣を一人だけで殺した。
それだけで、今回の戦争でゼルートが死ぬことはないと……思わず、そんな馬鹿げない様に不安を持たない。

ただ……一般的な戦闘と違い、戦争では三百六十度……全ての咆哮から命が狙われる。
ゼルートに関しては、自国の味方と一緒に敵兵や冒険者を攻めて最終ラインを突破するのではなく、ゲイルとのタッグで戦場を一直線に進み始めた。

その結果、本当に三百六十度、敵だらけの状況が生まれてしまう。

ゼルートだけではなく、ゲイルも同じく一般的な強者以上の実力を持っていることは身に染みている。
それでも、やはり万が一という可能性は捨てきれなかった。

「ルウナも一緒よ。なんでも出来るラームがいるといっても、運悪く強力な攻撃がすり抜けて当たるかもしれないでしょ」

「その可能性は否定出来ない。ただ、これでも戦場で全方位を警戒しながら戦っていた。決して攻撃だけに意識を向けていた訳じゃないぞ」

ルウナとラームもゼルートとゲイルのタッグと同じく、最前線からその突破力を遺憾なく発揮し、ゼルートとゲイルとは違う場所から最前線を目指した。

「それに、危険なのはアレナも同じだった筈だ」

「そういえば、ラルの背中に乗って敵国の竜騎士を全滅させたらしいな。確か、俺の記憶が正しかったら、アレナがラルの背中に乗って戦った記憶はなかったと思うんだが……ふふ、アレナも中々無茶するじゃないか」

「そ、それはラルだったからよ」

ゲイルと同じく、ラルの実力も身に染みて解っている。
故に、いきなりライド・オンしても戦えると直感的に考えていた。

空中での旋回などで脳が揺れそうになったが、そこはなんとか根性で耐えた。

ワクワクしたのは事実だが、あの一戦で騎竜騎士たちの大変さが身を体験した。

「俺やルウナも傍にもゲイルやラームがいた。だから、それは理由にならないぞ」

「むっ……はぁ、もう良いわ。結局ゼルートたちは無傷で帰ってきた訳だし」

「そういうことだ。結果良ければ全て良しだ」

ゼルートの言葉にルウナはその通りだと笑っていると、ゲイルたちがゼルートたちの元を訪れた人物をテントの中に入れた。

「よう、ゼルート。噂は聞いてるぞ」

「ゼルート!!!」

入ってきた人物はゼルートの良心であるガレンとレミアだった。

ガレンは普段通りの表情だが、レミアは息子に駆け寄るなり……その豊満な胸に息子を抱き寄せた。

「むぐっ!? 母さん……苦しいから話してくれ」

「もうちょっと我慢しなさい」

「諦めろ、ゼルート。クライレットとレイリアも同じ状態になったからな」

それならば仕方ないと思い、甘んじて母の抱擁を受けた。

抱擁を受けている間、ゼルートは一つ……父と母に訊きたい内容が浮かんだ。

「父さん、母さん……死者は、でなかった?」

ゼルートはゲインルート家に仕える騎士や兵士、魔法使いたちの為に出来る限りのことをした。

だが、アレナの言う通り戦場ではどの方向からも攻撃が飛んでくる。
ゲインルート家に仕える戦闘職たちは、まだそこまで多くない。

実力が高い少数精鋭ではあるが、それでも戦場で絶対にしなない保証はない。
いくらガレン、レミアが強くとも……攻撃がすり抜けてくれば、致命傷を負う可能性はいくらでもある。

「安心しろ。怪我を負った奴はいるが、うちの死者はゼロだ。ゼルート、お前があいつらの武器を新調したり、ランクが高いポーションを用意してくれたお陰だ」

「そ、そっか……良かった」

最良の結果を聞けたゼルートの目からは、安堵のあまり一つの涙が零れた。
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