上 下
663 / 1,026
連載

少年期[820]最終ライン、突破

しおりを挟む
(結構強くなってきたな)

戦争が始まってから、既に数時間が経過。
だが、その間にゼルートが敵国側の兵士や騎士から攻撃を食らうことは殆どなく、向かって来る全ての敵を返り討ちにしていた。

数の多さは基本的に有利に働くが、ゼルートからすれば的がたくさんあって当てやすい。
剣技に加えて、攻撃魔法による遠距離攻撃も可能。
そして氷魔法とフロストグレイブの性能も相まって、敵の動きを拘束することも出来る。

なんでも出来るからこそ、敵はなす術もなくやられていく。

勿論、いくらゼルートでも好きなように動き回っていれば、多少なりとも隙が生まれる。
それはゼルート自身も解っているので、疾風迅雷による身体強化で得た超スピード、詠唱破棄で攻撃魔法を発動して対処している。

ただ、そうまでしても消せない隙というのがある。
隙と呼ぶにはあまりにも小さく、か細い。

しかし一流の騎士や兵士、魔法使いはその隙間を見逃さない。
少しでもゼルートを削り、あわよくば倒そうと……過去一かもしれない集中力を発揮し、その隙を突く。

(僅かな隙を狙える者たちが少し増えてきたな)

だが……ゼルートの従魔であるゲイルがその隙を突く攻撃を見逃すわけがなく、速攻で対処してしまう。

ゼルートならこの攻撃も何とかしています……そんな気持ちがゼロとは言わない。
それでも万が一のことを考えると防いだ方が良いと思い、バッチリ防ぎ、接近戦で狙ってきた者はズバッと斬り捨てる。

ゼルートの僅かな隙を補う。
それを続けていれば、今度はゲイルに隙が生まれてしまうのでは?
話だけ聞いてればそう思う者が現れるだろう。

それを許さないのがゼルート。
お互いに背中を預けながら戦っている為、ゼルートもゼルートでその辺りを気にかけている。

なので、実際のところ二人には隙も死角もないと言える。

特大魔法を二人にぶち当てようと思えば、そもそも周囲の騎士たちが回避しなければならない。
それはそれで動きが読みやすく……加えて、特大魔法の威力が高くても、放たれる速度が遅ければまず二人に当らない。

そして、仮にその特大魔法を当てられる状況にしたとしても、二人の力ならその特大魔法をあっさりとぶっ壊してしまう。

まさに完全無欠。
最前線では二人に対し、かなりの戦力が投入されていた。

敵国であるディスタールとしては、戦争は数日を予定……どんなに早くても、決着は夕方になると思っていた。
しかし蓋を開けてみればどうだ?

初っ端から自軍は大打撃を受け、最前線の二人にどれだけ戦力を投入しても止められない。
数日間の戦闘、準備? 
そんなこと考えてる余裕はない。

他の最前線で暴れている奴らも倒さなければならないが、第一にゼルートとゲイルを倒さなければならない。
それが解っているので強者を投入させるのだが……レベルが違う。

根本的なレベルが違うという訳ではないが、持っている手札が違い過ぎる。
ゼルートの大好きな強化技術である、疾風迅雷。
これ一つで大抵の戦闘者は追いつけなくなる。

仮に追いついたとしても、ゼルートを相手に手に持つ剣だけに集中して良い訳ではない。
どこからでも攻撃魔法が襲い掛かって来る。
なので並ではない強者をどんどん投入しても、数分経てば全滅。

ゲイルも似た様な存在であり、数で潰そうとしても焼け石に水。

そんな今回の戦争において、最強のタッグが……いよいよ最終防衛ラインを突破した。

「ふぅ~~~~、さすがにちょっと疲れたな、ゲイル」

「えぇ、最後の方は厚い壁が増えましたからね」

二人が少々疲れたのは事実。
いくら二人の魔力が増えたとはいえ、途中からは強化系のスキルや攻撃魔法、ブレスなどをがんがん使っていたので、途中で魔力回復のポーションを飲んでいる。

とはいえ、スタミナ的にはまだ問題無い。
そういった状態で、敵の総大将がいる前までやって来た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん
ファンタジー
継母にいじめられる伯爵令嬢ルーナは、初恋のトーマ・ラッセンにプロポーズされて結婚した。 楽しい暮らしがまっていると思ったのに、結婚した理由は愛人の妊娠と出産を私でごまかすため。 初恋も一瞬でさめたわ。 まぁ、伯爵邸にいるよりましだし、そのうち離縁すればすむ事だからいいけどね。 離縁するために子育てを頑張る夫人と、その夫との恋愛ストーリー。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。