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少年期[792]思わず零れた
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「さぁ、いきますよ!!!!」
「ッ!!」
一気に急上昇し、今度は前方に急加速。
ラルが従魔用の道具を身に着けていないので、本来であれば振り落とされてしまうところだが、そこは問題無い。
アレナとしては、地上に落ちるよりも武器を落とさないようにすることに意識を割いた。
「なんだあれは!!!」
「おそらく、属性持ちのドラゴンだ」
調教されたワイバーンに跨る竜騎士たちは一目でアレナが跨るドラゴンが、自分たちが乗るワイバーンとは違うと判断。
自分たちが乗るドラゴンはCランクのワイバーンであり、敵の冒険者が乗るドラゴンは属性持ちという情報から、少なくともBランク以上だということが分る。
ドラゴンの質だけでいえば分が悪い。
だが、竜騎士とは一般的な騎士たちよりも格上の存在。
強者としてのプライドがある。
基本的に生まれた時から騎士と育つワイバーンたちも、自分に襲い掛かる敵が自分より格上の存在であるドラゴンだったとしても……逃げるわけにはいかない。
(ほぅ、逃げませんか……良い根性を持っている、ということですね)
今のラルは竜騎士たちに対して殺気を向けられている。
その殺気は当然、竜騎士の竜であるワイバーンたちにも向けられている。
属性持ち……しかも雷竜帝の娘であるラルに殺気を向けられては、委縮して逃げ出そうとしてもおかしくない。
だが、それでも逃げ出そうとせず、戦意を自分に向ける同族たちに敬意を持ちながらも……残酷に勝負を進めた。
的確にブレスを放ち、すれ違いざまに雷の爪撃をお見舞い。
「はっ!!!!」
そしてラルの力だけに頼ることなく、アレナも雷や炎の斬撃を放ち、敵に近づく時は一発で仕留める為に……首を正確に狙って跳ねていく。
「くそ、が」
「ごめんなさいね」
謝っても意味がないことは分っている。
ただ……今殺した竜騎士は、上の都合によって戦争に参加した者。
騎士であればそういった際に参加するのは当たり前だが、それでも今回の戦争が起きなければ目の前の竜騎士と殺し合いをすることなどなかった。
そして……今殺し男には帰りを待っている人がいたかもしれない。
必ず生きて帰ろうと約束した友人がいたかもしれない。
それを考えると……思わずそんな言葉が零れた。
だが、それでも攻撃の手を止めることはなく、気付けば敵国の竜騎士は殆どアレナとルウナが沈めていた。
「あら、どうも」
「あ、あぁ……どうも。いや、君達は凄いな」
「凄いのは、ゼルートの従魔であるラルよ。私は上に乗らせてもらってただ斬っただけ」
「そ、そうか。だが、君達の活躍のお陰で私たち竜騎士部隊は誰一人として落ちなかった……礼を言う」
アレナとラルが存分に暴れたせいで、戦果が取られたともとれるが……目の前で行われた戦いぶりを見ていれば、そんな思いが零れることはなかった。
「それじゃ、私たちは地上に戻ります。ご武運を」
「あぁ……要らない心配だと思うが、武運を」
軽く挨拶を済ませ、もう上空には敵がいないのでアレナとラルは地上へと戻った。
「隊長、今の方は有名な冒険者だったのでしょうか」
冒険者とはいえ、自分たちと同じ竜騎士であれば、少なくとも耳に入っている筈。
だが、自分たちの前の前で次々に敵国の竜騎士を倒していった女性とドラゴンの情報は聞いたことがなかった。
「彼女はゼルートと口にしていた。おそらく、Sランクモンスターである悪獣を一人で倒した、あのゼルートなのだろう」
「ッ!!! な、なるほど……確かにドラゴンの従魔がいるとは聞いていましたが……でも、今のはその仲間の女性でしたよね。おそろしく強かったですが」
竜騎士たちはアレナの地上での戦いぶりは見ていなかったが、ラルに跨って戦う様子だけで、相当な実力者ということは理解出来た。
「戦力を分散して戦っているのだろう……さて、我々も働くぞ」
いくら空にいるとはいえ、ボーっとしていたら下から狙撃されてしまう。
上空での敵がいなくなったとはいえ、竜騎士たちの仕事が終わったわけではない。
体力や魔力をアレナのお陰で温存できた分、彼らは他の戦場で暴れ始めた。
「ッ!!」
一気に急上昇し、今度は前方に急加速。
ラルが従魔用の道具を身に着けていないので、本来であれば振り落とされてしまうところだが、そこは問題無い。
アレナとしては、地上に落ちるよりも武器を落とさないようにすることに意識を割いた。
「なんだあれは!!!」
「おそらく、属性持ちのドラゴンだ」
調教されたワイバーンに跨る竜騎士たちは一目でアレナが跨るドラゴンが、自分たちが乗るワイバーンとは違うと判断。
自分たちが乗るドラゴンはCランクのワイバーンであり、敵の冒険者が乗るドラゴンは属性持ちという情報から、少なくともBランク以上だということが分る。
ドラゴンの質だけでいえば分が悪い。
だが、竜騎士とは一般的な騎士たちよりも格上の存在。
強者としてのプライドがある。
基本的に生まれた時から騎士と育つワイバーンたちも、自分に襲い掛かる敵が自分より格上の存在であるドラゴンだったとしても……逃げるわけにはいかない。
(ほぅ、逃げませんか……良い根性を持っている、ということですね)
今のラルは竜騎士たちに対して殺気を向けられている。
その殺気は当然、竜騎士の竜であるワイバーンたちにも向けられている。
属性持ち……しかも雷竜帝の娘であるラルに殺気を向けられては、委縮して逃げ出そうとしてもおかしくない。
だが、それでも逃げ出そうとせず、戦意を自分に向ける同族たちに敬意を持ちながらも……残酷に勝負を進めた。
的確にブレスを放ち、すれ違いざまに雷の爪撃をお見舞い。
「はっ!!!!」
そしてラルの力だけに頼ることなく、アレナも雷や炎の斬撃を放ち、敵に近づく時は一発で仕留める為に……首を正確に狙って跳ねていく。
「くそ、が」
「ごめんなさいね」
謝っても意味がないことは分っている。
ただ……今殺した竜騎士は、上の都合によって戦争に参加した者。
騎士であればそういった際に参加するのは当たり前だが、それでも今回の戦争が起きなければ目の前の竜騎士と殺し合いをすることなどなかった。
そして……今殺し男には帰りを待っている人がいたかもしれない。
必ず生きて帰ろうと約束した友人がいたかもしれない。
それを考えると……思わずそんな言葉が零れた。
だが、それでも攻撃の手を止めることはなく、気付けば敵国の竜騎士は殆どアレナとルウナが沈めていた。
「あら、どうも」
「あ、あぁ……どうも。いや、君達は凄いな」
「凄いのは、ゼルートの従魔であるラルよ。私は上に乗らせてもらってただ斬っただけ」
「そ、そうか。だが、君達の活躍のお陰で私たち竜騎士部隊は誰一人として落ちなかった……礼を言う」
アレナとラルが存分に暴れたせいで、戦果が取られたともとれるが……目の前で行われた戦いぶりを見ていれば、そんな思いが零れることはなかった。
「それじゃ、私たちは地上に戻ります。ご武運を」
「あぁ……要らない心配だと思うが、武運を」
軽く挨拶を済ませ、もう上空には敵がいないのでアレナとラルは地上へと戻った。
「隊長、今の方は有名な冒険者だったのでしょうか」
冒険者とはいえ、自分たちと同じ竜騎士であれば、少なくとも耳に入っている筈。
だが、自分たちの前の前で次々に敵国の竜騎士を倒していった女性とドラゴンの情報は聞いたことがなかった。
「彼女はゼルートと口にしていた。おそらく、Sランクモンスターである悪獣を一人で倒した、あのゼルートなのだろう」
「ッ!!! な、なるほど……確かにドラゴンの従魔がいるとは聞いていましたが……でも、今のはその仲間の女性でしたよね。おそろしく強かったですが」
竜騎士たちはアレナの地上での戦いぶりは見ていなかったが、ラルに跨って戦う様子だけで、相当な実力者ということは理解出来た。
「戦力を分散して戦っているのだろう……さて、我々も働くぞ」
いくら空にいるとはいえ、ボーっとしていたら下から狙撃されてしまう。
上空での敵がいなくなったとはいえ、竜騎士たちの仕事が終わったわけではない。
体力や魔力をアレナのお陰で温存できた分、彼らは他の戦場で暴れ始めた。
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