632 / 1,043
連載
少年期[789]殺戮者?
しおりを挟む
ゼルートとゲイルを完全に無視し、他のオルディア王国側の冒険者や兵士を相手にする。
それが頭の回る冒険者たちの判断だった。
化け物以上の力を持つゼルートとゲイルに勝てるわけがないので、他の敵さんを倒しにいく。
これは決して悪い判断ではなく、戦犯と呼ばれる行為でもない。
他の敵を潰しに行き、そこでは勿論全力相手を殺しにいく。
ゼルートとしても、逃げる敵を殺そうとまでは思わない。
これが、自分の国を滅ぼした憎き国に所属する人間たち……なんて設定であれば話は別だが、ゼルートはまだ敵国側の冒険者に大事な人を殺されたりはしていない。
そうなる可能性がある人物がいるかもしれないが……自分に襲い掛かってくる敵の数が減れば、それはそれで有難い。
なぜなら……戦争である以上、敵の大将を取ってしまえば、その時点で戦争は終了となる。
侵略戦争などであれば話は変わるが、今回の戦争は基本的に敵の大将首を取る……もしくは捕獲してしまえば、そこで戦争は終了になるので、敵の数が減れば大将がいる場所まで行きやすくなる。
ただ……国に属する兵士や騎士たちは、堂々と前に進む二人に対してどうにか進行を止めなければならない。
「ゼルート殿、冒険者達の方は始末しなくてよろしいのですか」
「ん~~~~……そこまでやるとさ、なんか殺戮者じゃん。それはちょっとイメージ的に避けたいというか……な」
「……なるほど。確かにその方がよろしいですね」
その考えは理解出来る。
なるほどなるほどと 理解出来る内容ではあるが……ゲイルはきっちりゼルートが敵国側の兵士や冒険者に向けて放った言葉を覚えている。
『死にたい奴から掛かって来い!!!!!』
そう……全力で敵に向かって吼えた。
あれは殺戮者のセリフでは無いのかと疑問に思ったが、言葉にはしなかった。
「それにさ……俺らの後に、ルウナたちも同じように跳んで来ただろ」
「えぇ、そのようですね」
「アレナはともかく……ルウナがそういった連中を見逃すと思うか?」
「……少しでも戦えそうだと思う敵がいれば、間違いなく咬みつくかと」
「だろ」
ルウナが見境ない獣だという話をしているのではない。
戦争に参加している以上、敵に殺されても文句は言えない。
「さて……ちょっとは強そうな連中がこっちに集中してくれるみたいだな」
「……ふふ、その様ですね」
戦場に参戦してから冷静な雰囲気を崩さなかったゲイルだが、格好の獲物が向こうから近づいてくると分れば……口角が上がってしまうのも無理はない。
「ゲイル、楽しみ過ぎるなよ」
「分かっています。安心してください……一刀のもとに斬り伏せますので」
「頼りにしてるぜ」
騎士や冒険者の中でも逃げれば後々面子に関わる連中が徐々に集まり、一人の子供と紅いリザードマンに意識を全集中し……一斉に遠距離攻撃が放たれた。
(これはさすがに、厳しいな!!!!)
実力者たちがほんの数秒しか時間がなかったとはいえ、全力で放った遠距離攻撃。
その数は目算で二十は超えており、その攻撃だけでAランクのモンスターを殺せる可能性は充分にある。
ゼルートは何枚も壁を展開して防ごうとしたが、それをゲイルが手で制した。
「ゲイル?」
「自分がやるので、襲撃の準備を」
「おけ」
前に出たゲイルが大きく意を吸い込み……特大の雷ブレスを放った。
そして顔を横に振り、飛んできた遠距離攻撃に当て……見事に消滅。
遠距離攻撃を放った後は、全力で近づいて接近戦で仕留めようと考えていた者はキツネにつままれた様な表情になった。
そんな表情になってしまうのも無理はないが、ゲイルも今のブレスでそれなりの魔力を消費した。
急いでゼルートが造ったポーションをがぶ飲み。
戦場でポーションを飲む行為は、場合によっては大きな隙なとなる。
それは実力者達も解っているので即座に気を取り直して自国の敵を殺そうとするが……目の前にはその隙をカバーするように構える少年がいた。
「俺の相棒を簡単に殺せると思うなよ」
そう告げると、ゼルートは先程と同じく敵の視界から消えるほどの速さで動き……全力でフロストグレイブとミスリルデフォルロッドを振るった。
それが頭の回る冒険者たちの判断だった。
化け物以上の力を持つゼルートとゲイルに勝てるわけがないので、他の敵さんを倒しにいく。
これは決して悪い判断ではなく、戦犯と呼ばれる行為でもない。
他の敵を潰しに行き、そこでは勿論全力相手を殺しにいく。
ゼルートとしても、逃げる敵を殺そうとまでは思わない。
これが、自分の国を滅ぼした憎き国に所属する人間たち……なんて設定であれば話は別だが、ゼルートはまだ敵国側の冒険者に大事な人を殺されたりはしていない。
そうなる可能性がある人物がいるかもしれないが……自分に襲い掛かってくる敵の数が減れば、それはそれで有難い。
なぜなら……戦争である以上、敵の大将を取ってしまえば、その時点で戦争は終了となる。
侵略戦争などであれば話は変わるが、今回の戦争は基本的に敵の大将首を取る……もしくは捕獲してしまえば、そこで戦争は終了になるので、敵の数が減れば大将がいる場所まで行きやすくなる。
ただ……国に属する兵士や騎士たちは、堂々と前に進む二人に対してどうにか進行を止めなければならない。
「ゼルート殿、冒険者達の方は始末しなくてよろしいのですか」
「ん~~~~……そこまでやるとさ、なんか殺戮者じゃん。それはちょっとイメージ的に避けたいというか……な」
「……なるほど。確かにその方がよろしいですね」
その考えは理解出来る。
なるほどなるほどと 理解出来る内容ではあるが……ゲイルはきっちりゼルートが敵国側の兵士や冒険者に向けて放った言葉を覚えている。
『死にたい奴から掛かって来い!!!!!』
そう……全力で敵に向かって吼えた。
あれは殺戮者のセリフでは無いのかと疑問に思ったが、言葉にはしなかった。
「それにさ……俺らの後に、ルウナたちも同じように跳んで来ただろ」
「えぇ、そのようですね」
「アレナはともかく……ルウナがそういった連中を見逃すと思うか?」
「……少しでも戦えそうだと思う敵がいれば、間違いなく咬みつくかと」
「だろ」
ルウナが見境ない獣だという話をしているのではない。
戦争に参加している以上、敵に殺されても文句は言えない。
「さて……ちょっとは強そうな連中がこっちに集中してくれるみたいだな」
「……ふふ、その様ですね」
戦場に参戦してから冷静な雰囲気を崩さなかったゲイルだが、格好の獲物が向こうから近づいてくると分れば……口角が上がってしまうのも無理はない。
「ゲイル、楽しみ過ぎるなよ」
「分かっています。安心してください……一刀のもとに斬り伏せますので」
「頼りにしてるぜ」
騎士や冒険者の中でも逃げれば後々面子に関わる連中が徐々に集まり、一人の子供と紅いリザードマンに意識を全集中し……一斉に遠距離攻撃が放たれた。
(これはさすがに、厳しいな!!!!)
実力者たちがほんの数秒しか時間がなかったとはいえ、全力で放った遠距離攻撃。
その数は目算で二十は超えており、その攻撃だけでAランクのモンスターを殺せる可能性は充分にある。
ゼルートは何枚も壁を展開して防ごうとしたが、それをゲイルが手で制した。
「ゲイル?」
「自分がやるので、襲撃の準備を」
「おけ」
前に出たゲイルが大きく意を吸い込み……特大の雷ブレスを放った。
そして顔を横に振り、飛んできた遠距離攻撃に当て……見事に消滅。
遠距離攻撃を放った後は、全力で近づいて接近戦で仕留めようと考えていた者はキツネにつままれた様な表情になった。
そんな表情になってしまうのも無理はないが、ゲイルも今のブレスでそれなりの魔力を消費した。
急いでゼルートが造ったポーションをがぶ飲み。
戦場でポーションを飲む行為は、場合によっては大きな隙なとなる。
それは実力者達も解っているので即座に気を取り直して自国の敵を殺そうとするが……目の前にはその隙をカバーするように構える少年がいた。
「俺の相棒を簡単に殺せると思うなよ」
そう告げると、ゼルートは先程と同じく敵の視界から消えるほどの速さで動き……全力でフロストグレイブとミスリルデフォルロッドを振るった。
72
お気に入りに追加
9,033
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。