冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［７７８］一般的な話のネタだが……

「つまらない質問をしたな」

ゼルートの表情を見れば分かる。
ゼブリックか尋ねた問いは、ゼルートの中で悩まずとも即座に出る答えだった。

ただ、それでもゼルートの中では言葉を選んだ解答であり、多少答えに悩む質問ではあった。

「話題を変えよう。ゼルート君……君には恋人がいるかな？　もしくは、好きな人……気になる人でも良い」

「ッ！！？？　……え、えっと。今は特に、いません」

通常時であれば、恋バナなど慣れたもの。
寧ろ、話のネタとしては好物の部類。

だが……このタイミングで、目の前の相手がそんな内容の話をぶっこんで来るとは思っていなかった。

（あ、あっぶな！！！　今吹き出さなかった俺を凄い褒めたい！）

目の前に座っている相手がゼブリックでなければ、思わず口に含んでいた果実水を吹き出してしまった可能性が非常に高い。

いや、普通の相手に果実水を吹き出してしまうのも失礼なことに変わりないのだが、相手は王族の一人。
そして今回の戦争に参加する自軍の総大将。
絶対に粗相をするわけにはいかず、ゼルートは必死に吹き出してしまいそうになる生理現象を抑え込んだ。

「そうか……今回の戦争に君が参加するにあたって、妹のルミイルが随分と君のことを心配していた」

「る、ルミイル様がですか。えっと……それは、その。嬉しいといいますか、有難いといいますか」

「ふふ、まぁ……反応には困るだろう。ただ、直に君と会って確信した。今回の戦争で……私たちが負ける可能性はない。私が不意打ちで殺されないというのが条件ではあるがな」

どれだけゼルートが敵の冒険者や騎士を潰しに潰し、数を減らしたとしても……総大将であるゼブリックが殺されてしまえば、今回の戦争はオルディア王国側の負けとなる。

基本的に敵国の王族などを殺してしまうのは、関係性を猛烈に悪化させてしまうので、両国ともそういった決着のしかたは望んでいない。

だが……それでも負けるか否かを考えれば、そういった選択を選んだとしても負けたくないと思ってしまうのが人間。

「よければ、今回の戦争が終わった後に王都で開催されるパーティーに参加してほしい」

戦争に勝利したとなれば、勿論戦争で活躍した英雄たちを集めたパーティーが行われる。

今から戦争後のそういった話をするのは傲慢、油断し過ぎだと思われるかもしれないが……ゼブリックの護衛として付いてきた騎士の二人も、直にゼルートという怪物を肌に感じ……自分たちが今回の戦争で負けてしまう可能性は限りなく少ないと思ってしまっている。

「ぱ、パーティーにですか。わ、分かりました」

冒険者として活動しているとはいえ、ゼルートはガレンの息子。
つまり貴族の令息なのだ。

ゼルートが生まれた頃と比べて、未だに男爵ではあるがガレンの立場は上がっている。

そして戦争でおそらく一番活躍するであるゼルートが、まさかのパーティーに出席しないとなれば……それは中々よろしくない状況となる。

それはゼルートも最初から分かっているので、もしそういったパーティーが開催されるのであれば、一応出席しようとは思っていた。

ただ、第二王子から直々に出席を頼まれてしまうと、それはそれで緊張してしまう。

「妹もそのパーティーに参加する。是非とも話し相手になってあげてほしい」

「も、勿論です」

「ありがとう……話を戻すが、もし好きな人や気になる人がいないのであれば、妹はどうだい」

「え、えっと……その、言葉通りの意味で？」

「あぁ、言葉通りの意味だよ」

ゼブリックが変わらず穏やかな表情で返すが、ゼルートの脳内は少しの間停止していた。

（あ、今絶対に思考停止になってるわね。ゼブリック様はゼルートに意地悪するつもりなんて全くないでしょうけど、ゼルートからどう答えを返せば良いか迷う質問、ベスト五には入るでしょ）

数秒間、脳内が真っ白になったゼルートは少々パニック状態になりながらも、なんとか自身の答えを出した。