冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［７７０］それぐらいは解るだろ！

「ぜぇぇえええああああああああっ！！！！」

「……」

大きな声を張り上げ、気合一閃。
傲慢貴族が上段から豪快な一撃を振り下ろす。

力任せの一撃ではなく、その動きはしっかりと基礎が染み込んでおり、木剣であっても同程度の力量を持つ相手であれば頭蓋骨をかち割ることも不可能ではない。

（悪くない一撃だな）

そんな感想を持ちながら、少し後ろに下がって斬撃をあっさりと躱すゼルート。

「はぁっ！！！！」

「……」

お次は横から優顔貴族がレイピアで鋭い連続の突きを放ち、仕留めに掛かる。
突きの一つ一つがまるで蜂の針の様に鋭く、まさしく相手をハチの巣にできる連続の突き。

（しっかりと訓練は積んでるんだな～～～）

と思いながら、冷静に突きが届かない範囲まで下がる。

「ふんっ！！！」

するとゼルートが下がった先で堅物男が槍を両手で持ち、全力で薙ぎで吹き飛ばすとする。
こちらも大木を力づくでへし折る威力を持つ一撃。

ハンマー顔負けの威力があるのではと思える一撃だが、ゼルートは空中に跳んで体を回転させながら回避。

（意外と複数人での攻めに慣れてるんだな）

もっと単調な攻撃が来ると予想していたゼルートだが、思ったより移動した直後を狙った攻撃を行うことに少々驚かされた。

（態度は傲慢と言うか我儘というかって感じだろうけど、三人とも努力はするタイプなんだな）

三人ともある程度の実力を持つ騎士。
そう認識したソウスケだが、顔からはつまらなさそうな表情が見え見えだった。

「……随分と不満そうな表情をしているな。それとも、私たちの連携に恐れを感じたか？」

「アホなこと言うな、バカ。ダンジョンから溢れ出したモンスターたちの猛撃の方がよっぽど怖いっての」

モンスターは意外と敵が共通している相手であれば、即興ではあるが連携しながら動くことは珍しくない。
ゼルートにとってはそんなモンスターたちの連携も楽しめる状況。

故に、傲慢貴族たちの連携など一ミリも恐怖を感じない。

「もしかして強化系のスキルとか使わずに俺に勝とうと思ってるのか？　武器の効果による強化だけで十分だと思ってるのか？」

才能に胡坐をかいているような愚か者ではない、ということは動きを少し見ただけで解った。
ただ、やはり実力を正確に把握するだけの力はないのだと思い、落胆。

「自分一人だけだと勝てないと思ったから、こういった形式を了承したんだろ。だっだら余裕ぶらずに必死で倒しに来いよ」

この言葉……傲慢貴族と同じ様に、人によっては傲慢に聞こえるかもしれない。
ただ、ゼルートとしては自分が悪獣をソロで倒したという話を三人が知っており、でも従魔と一緒に倒したのではないかと疑っている。

そう認識しているので、仮に従魔と一緒に戦っていたとしても、それなりに戦えることぐらいは解るだろ！！　と思っている。

だからこそ、最初から全力で倒しに来ない三人に少しイラついた。

「ちっ！　ガキが少し動けるからといって調子の乗るなよ」

「少し前に人を見下してた三流こそ調子に乗らない方が後々の為になると思うぞ」

悪意を込めて言葉を返す、傲慢貴族は簡単に引っ掛かった。
だが、一人で突っ走る傲慢貴族に合わせるかのように優顔貴族と堅物貴族が動く。

今回は三人とも身体強化系のスキルを使用しながら倒しに来たので、ゼルートの顔から不満は消えた。
だからといって、三人との戦闘で戦闘欲が満たされることはない。

後から俺たちはまだまだ全力を出していない、なんて不満の言葉が出ない様に攻撃を行う時間を十分に与える。
しかし、それらの攻撃をわざと食らって三人の面子を保ってあげようなんて慈悲はなく、お人好しでもない。

三人の息がある程度切れるのを待ち、そのタイミングになると攻撃魔法を使いながら攻め始めた。