冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［７６６］知ってる雰囲気

「失礼します」

セフィーレが使っていたテントと同じく、明らかに一般的な仕様ではないテントの中に入ると、これまた戦場には似つかない雰囲気の机と椅子が並べられている。

そして……テントの中には大勢の騎士や貴族がおり、ゼルートが入ってきた瞬間……一斉に集中した。

（勘弁してくれ。あんたらは俺を視線で殺したいのか？）

場所が場所ということもあり、うんざりとした感情は顔に出さない。
だが、好奇と上からの目線が突き刺さる感覚はやはり慣れず、チクチクとダメージを受ける状況が続く。

ガレンの席は用意されており、ゼルートはその後ろに立って会議が始まるのを待つ。

（……あの人だけ、纏う空気が違うな）

テントの中のテーブルは長方形に並べられており、一番奥に座っているインテリメガネイケメンの青年だけ雰囲気が違うと感じたゼルートは……その雰囲気をどこかで感じたことがあると思い出した。

（誰だろ……多分、直接会ったことはない。会ったことはないんだけど、あの雰囲気と似た感じの人は知ってる）

あまりじろじろ見ると不敬だと思われるかもしれないので、チラチラっともう一度だけ確認。
やはりインテリメガネイケメンと似た雰囲気を覚えている。

（…………そうだ、ルミイル様だ！！！　ということは、あの人は王族か！！！　そういえば、父さんが今回の戦争の総大将は第二王子が務めるって言ってたな）

とんでもなく重要な情報を忘れており、心の中で自分の覚えの悪さにため息を吐いた。

（にしても、王族が戦争に参戦か……いや、当然なのかもしれないけど勇気あるな……侵略戦争じゃないから殺されたりしないと思うけど、負けたらこう……責任とか取らされるんじゃないのか？　それとも、それは横にいるいかついおじさんなのか？）

第二王子、ゼブリック・オルディアの隣にはセフィーレやミーユと同じ公爵家の人間であるビリーズ・ディスタックが立っている。

第二王子は冷静な頭脳を持っているが、それでも戦争を経験するのは今回が初めて。
というわけで、経験豊富である大将であるビリーズが補佐をする形で隣にいる。

（上の人たちは責任やらなんやらで戦争が終わった後が大変そうだな～～～……いや、勿論誰かの問題で負けたとかならない様になる早でぶっ潰すつもりだけどさ）

何かの間違いでガレンやバルスに責任を追及されるのも嫌なので、遊ぶつもりはない。
そんなことを考えていると、未だに多くの視線を向けられる中で一つの視線が気になった。

（あれは……どっからどう見ても魔法使い……この場にいるってことは、宮廷魔術師だよね？）

椅子に座る宮廷魔術師、そして後ろに立っている同じく宮廷魔術師たちからライバル視に近い物を向けられているゼルート。

邪悪で黒い視線ではない為、ゼルート的には精神的なダメージを受けるような視線ではないので有難い。
だが、全くもって関りがない宮廷魔術師たちから何故ライバル視されているのか……少々鈍いゼルートは答えが出るまで少し時間が掛かった。

（……そう言う事なのか？　多分、それしか理由はないよな。でもそれは…………けど、彼らの立場を考えれば俺をライバル視するのも当たり前か……男爵家の次男が粋がってんじゃねぇよ！！　的な視線を向けられないだけ良しとしないとな）

ここにいる者たちは、全員ゼルートが戦争開始直後に魔法砲撃合戦に参戦することを知っている。
その役割は当然、宮廷魔術師たちと……あとは本当に一握りの高名な魔法タイプの冒険者たちだけで行う。

ゼルートが体術や武器よりも魔法の方が才能は上という話はあまり知られておらず、ソロで悪獣を倒したとはいえ宮廷魔術師たちからすれば、少々プライドや自尊心を傷つけられた形となった。

そうこうしている内に、出席者が全員到着。
ようやく会議が始まる。