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少年期[765]話が広まるのは早い

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「ゼルート、少し良いか」

「はい」

戦地に到着した日の夜、夕食を食べ終えたゼルートはガレンの呼ばれ、テントの中へ入った。
その中にはドーウルスの領主であるバルスがいた。

「えっと……作戦会議か何かですか?」

「いや、そういう訳ではない。まぁ座ってくれ」

言われるがままに椅子に腰を下ろし、淹れられた紅茶をいただく。

(……辺境伯なだけあって、戦地でも淹れられる紅茶の質が高いな)

皮肉や嫌味ではなく、単純に凄いと感じた。
淹れているのは淹れ慣れている執事ではなく、戦場で戦う騎士。

紅茶を淹れてくれた騎士の方にチラッと顔を向けると、ニコっと笑いながら一礼。
ゼルートの表情から自身が淹れた紅茶を美味しいと感じたと分かり、それはゼルートに憧れている騎士としては非常に嬉しかった。

「ゼルートには、明日の会議に参加してほしいと思ってるんだが……どうかね」

「えっと、作戦会議にですか?」

「今回の場合は作戦会議というほどものではないが……そんなところだ」

「ゼルート、この前戦争が始まった瞬間に特大魔法を使うって言ってただろ」

「はい、言いましたね。勿論、ぶっ放すつもりです」

戦争開始直後に超高火力の魔法をぶっ放す。
それはゼルートの中で既に決定していた。

「もしかして、その件に関して上から何か言われたんですか?」

ガレンは男爵ながら、実際にはそれ以上の力を今では持っている。
そしてバルスも辺境伯という立派な地位と権力を持っており、並大抵の者は彼らの決定に逆らったり、反論することはない。

だが、それでも世の中……上には上がいる。

既にガレンはゼルートの開始ぶっ放を上に進言しており、上の者たちがその事について不満を漏らした……という可能性はゼロではない。
寧ろ一般的に考えれば、そうなる可能性は高い。

「何かを言われたという訳ではないが、是非とも会議に参加してほしいとお達しを受けてね」

「……俺が、本当に魔法で敵国にダメージを与えられるかどうかを見極めたい。そういうことですか?」

「そう言うことだと思っている」

ゼルートの名はそれなりに広まっており、過去に起こした一件も未だに貴族たちの記憶に残っている。
下手に絡んだり攻撃するのはいなくなった……と思うのが自然だ、人の感情というのはそんな簡単なものではない。

「分かりました。明日の会議に参加すれば良いんですね」

「う、うむ。そうなんだが……随分あっさりと引き受けてくれるのだな」

「え? いや、だってそれは……参加しないとバルスさんや父さんに迷惑掛けそうだし」

戦争が始まる前にごたごたするのも嫌だという思いもあり、会議に参加するぐらいであれば特に疲れることはない……と、考えている。

(俺みたいな作戦立てたりするのが得意ではないやつが参加したところで、特に意見を求められたりしないだろ。仮に何か尋ねられても、波風立てずに大人しく答えてればいいだけだ)

それが終われば、直ぐにクライレットとレイリアに錬金獣を渡す。
それがゼルートの明日の予定だった。

「そうか………有難いな。しかしな、一応ゼルートにとって面倒と思う者もおるかもしれん。それだけは頭に入れておいてほしい」

「分かりました。自分からは仕掛けないので安心してください」

自分からは仕掛けない。
言い換えれば、仕掛けられればきっちりやり返すという意味。

二人はゼルートがやられて黙っている様な性格ではないことは重々承知しているので、苦笑いしながら頷いた。

そして翌朝……戦地とは思えないほど豪華な夕食を食べ終えた後、ゼルートは予定意通りガレンとバルスと一緒にとあるテントへと向かった。

(あぁ~~~……なんでこっちをそんなにジロジロと見るんだよ。絶対に視線が集まっての父さんとバルスさんだけじゃないよな)

会議が行われる一室に向かうまで、場所が場所ということも道中には騎士や貴族が多くいた。
中には先日、セフィーレと仲良くしていた様子を知っている者もいたので、嫉妬という名の闇を込めた視線を向ける者もいた。
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