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少年期[748]そのためには………
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「…………それは、母さんの時みたいに、冗談ではなく?」
「あぁ、冗談じゃない。送られてきた手紙にそう書かれていた」
「……………………はぁーーーーーーーーー、そっか」
大きな大きな、深いため息をついた。
(……母さんと同じで、止めてくれって言っても止まってくれないだろうな)
ゼルートがガレンから聞かされた内容は、姉が今回の戦争に参加する。
そして、数か月前に学園を卒業して冒険者として活動を始めた兄が、生徒たちの護衛として戦争に参加することだった。
「二人とも、引く気はないですよね」
「母さんを……レミアを見れば分かるだろ」
「はい……良く、分かります」
侵略戦争ではないので、学生が強制的に戦争に参加させられることはない。
だが、自らの意志で戦争に参加することは出来る……無論、参加しなかったところで攻められることはない。
(強制じゃない学徒出陣ってところか……父さんの言う通りだよな。母さんと一緒で、姉さんが止まるとは思えない。それに、二人が戦争に参加しても約に立たない……なんてことはない)
ゼルートはポテンシャルも発想力も、何もかもが例外的な存在。
だが、クライレットとレイリアも普通という枠には収まらない力を持つ。
卒業して仲間と共に冒険者になったクライレットはいきなりEランクからスタートし、直ぐにDランクへと昇格した。
そして一つ下のレイリアもタイプは違うが、似た様な実力を持っている。
(学生という身で戦争に参加すれば将来、色々と有利になる場面があるだろうから、教師たちも止めないんだろうな……いや、止められないというべきか)
もう、二人が戦争に参加するという決定は変えられない。
そう思ったゼルートは改めて、二人専用の錬金獣を造っておいて良かったと……心の底から思った。
「父さん……なんで二人とも、危ない場所に飛びこもうとするんですかね」
おかしなことを口にしているのは解っている。
だが、自分の身と肉親の身では心配する度合いが違い過ぎる。
「ゼルート…………多分、クライレットとレイリアもお前に対して同じ事を言うと思うぞ」
「うぐっ! ま、まぁそうですよね」
完全にブーメランになる言葉を口にした自覚はある。
ただ、それでも………家族である二人の心配をするなというのは無理な話だった。
(ど、どうせなら二人にも兵士や騎士たちと同じように何かしらの武器を渡すべきか? でも、武器なら少し前に紫電の牙を渡したよな……いや、でも短剣は二人にとってメインの武器じゃない)
いったいどのような選択が一番正しいのか……考えに考えぬいたゼルートの頭は一旦ショートした。
「おいおい、あまり考え過ぎても仕方ないぞ」
「それは分かってますけど……でも、やっぱり考えてしまいますよ。自分が二人に出来ることは何なのかって。二人に専用の錬金獣を渡すのは決めてますけど」
「……そういえばそんな事を言ってたな。どういった感じの錬金獣なんだ?」
「だいたいホーリーパレスの五十層以降に生息する魔物の素材を使って造りました」
「ご、五十層以降に出現するやつらの素材か……そりゃとんでもない錬金獣が出来上がったんだろうな」
「兄さんと姉さんの弱点を補う、もしくはサポートするための戦力として造りました」
ゼルートの言葉からいったいどんな錬金獣が出来上がったのかを想像し、ガレンを思わず身震いをしてしまった。
(少なくとも、今の二人と比べて断然強い錬金獣を造っただろうな。二人が普段からそいつを使うとは思えないが……どこから攻撃が迫って来るか分からない戦場でなら、そういったプライドを折ってでも使うのが最善だ)
学生達にはなるべく危険が及ばない場所から参加するとの予定が立てられているが、だからといって一切危険がないわけではない。
当然、過去に戦争に学生が参加して死んだケースはある。
「二人とも引き際は解っている筈だ……ゼルート、お前が俺たちの為に色々生き残る可能性を上げてくれたことには本当に感謝している。だが、少しは俺たちの実力を信用してくれても良いんだぞ」
「……そう、ですね」
家族たちの実力を信用していない訳ではないが、仕えてくれている兵士や騎士も含めて誰かが無くなるのは嫌だ。
であれば、自分は戦場でどう動くべきなのか…………その答えは直ぐに出た。
「あぁ、冗談じゃない。送られてきた手紙にそう書かれていた」
「……………………はぁーーーーーーーーー、そっか」
大きな大きな、深いため息をついた。
(……母さんと同じで、止めてくれって言っても止まってくれないだろうな)
ゼルートがガレンから聞かされた内容は、姉が今回の戦争に参加する。
そして、数か月前に学園を卒業して冒険者として活動を始めた兄が、生徒たちの護衛として戦争に参加することだった。
「二人とも、引く気はないですよね」
「母さんを……レミアを見れば分かるだろ」
「はい……良く、分かります」
侵略戦争ではないので、学生が強制的に戦争に参加させられることはない。
だが、自らの意志で戦争に参加することは出来る……無論、参加しなかったところで攻められることはない。
(強制じゃない学徒出陣ってところか……父さんの言う通りだよな。母さんと一緒で、姉さんが止まるとは思えない。それに、二人が戦争に参加しても約に立たない……なんてことはない)
ゼルートはポテンシャルも発想力も、何もかもが例外的な存在。
だが、クライレットとレイリアも普通という枠には収まらない力を持つ。
卒業して仲間と共に冒険者になったクライレットはいきなりEランクからスタートし、直ぐにDランクへと昇格した。
そして一つ下のレイリアもタイプは違うが、似た様な実力を持っている。
(学生という身で戦争に参加すれば将来、色々と有利になる場面があるだろうから、教師たちも止めないんだろうな……いや、止められないというべきか)
もう、二人が戦争に参加するという決定は変えられない。
そう思ったゼルートは改めて、二人専用の錬金獣を造っておいて良かったと……心の底から思った。
「父さん……なんで二人とも、危ない場所に飛びこもうとするんですかね」
おかしなことを口にしているのは解っている。
だが、自分の身と肉親の身では心配する度合いが違い過ぎる。
「ゼルート…………多分、クライレットとレイリアもお前に対して同じ事を言うと思うぞ」
「うぐっ! ま、まぁそうですよね」
完全にブーメランになる言葉を口にした自覚はある。
ただ、それでも………家族である二人の心配をするなというのは無理な話だった。
(ど、どうせなら二人にも兵士や騎士たちと同じように何かしらの武器を渡すべきか? でも、武器なら少し前に紫電の牙を渡したよな……いや、でも短剣は二人にとってメインの武器じゃない)
いったいどのような選択が一番正しいのか……考えに考えぬいたゼルートの頭は一旦ショートした。
「おいおい、あまり考え過ぎても仕方ないぞ」
「それは分かってますけど……でも、やっぱり考えてしまいますよ。自分が二人に出来ることは何なのかって。二人に専用の錬金獣を渡すのは決めてますけど」
「……そういえばそんな事を言ってたな。どういった感じの錬金獣なんだ?」
「だいたいホーリーパレスの五十層以降に生息する魔物の素材を使って造りました」
「ご、五十層以降に出現するやつらの素材か……そりゃとんでもない錬金獣が出来上がったんだろうな」
「兄さんと姉さんの弱点を補う、もしくはサポートするための戦力として造りました」
ゼルートの言葉からいったいどんな錬金獣が出来上がったのかを想像し、ガレンを思わず身震いをしてしまった。
(少なくとも、今の二人と比べて断然強い錬金獣を造っただろうな。二人が普段からそいつを使うとは思えないが……どこから攻撃が迫って来るか分からない戦場でなら、そういったプライドを折ってでも使うのが最善だ)
学生達にはなるべく危険が及ばない場所から参加するとの予定が立てられているが、だからといって一切危険がないわけではない。
当然、過去に戦争に学生が参加して死んだケースはある。
「二人とも引き際は解っている筈だ……ゼルート、お前が俺たちの為に色々生き残る可能性を上げてくれたことには本当に感謝している。だが、少しは俺たちの実力を信用してくれても良いんだぞ」
「……そう、ですね」
家族たちの実力を信用していない訳ではないが、仕えてくれている兵士や騎士も含めて誰かが無くなるのは嫌だ。
であれば、自分は戦場でどう動くべきなのか…………その答えは直ぐに出た。
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