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少年期[744]費用はゼロ?

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「それじゃあ、この中から自分に合いそうだなと思う物を選んでください」

「ぜ、ゼルート様……ほ、本当によろしいのですか?」

「そうですよ。この前良質な武器を頂いたばかりなのに」

ゲインルート家に所属する兵士や騎士、魔法使いたちの前に大量の武器やアクセサリータイプのマジックアイテムが置かれていた。

「皆日々、変わらず頑張ってるのは知ってるんで。それに、やっぱり戦争に参加すると決まれば……亡くなってほしくないので」

家に仕える者たちとは非常に仲の良いゼルート。
出来ることなら、自身の力をフルに使って守りたいところだが、それはそれで彼らのプライドを傷つけることになる。

であれば、自分が彼らに出来ることはなんなのか。
それは少しでも戦争で生き残る確率を上げる為に、良質な装備品を渡すことだった。

弱者が過ぎた装備品を使えば、足元を掬われてしまう。
そんな事はゼルートも解っている。

しかし、鑑定眼を使わずともゼルートは彼らが以前再開した時よりもレベルアップしていることが分かる。

(多分だけど、ブラッソと模擬戦してる人もいそうだな。そんな日々努力を怠らない人たちに、これぐらいの褒美はあっても良いだろ)

今回、兵士たちに渡そうと用意していた褒美に関しては、前回のように店で買った物ではない。

「それに、これらの装備品は全てホーリーパレスというダンジョンで手に入れた物なので、全くお金は掛かっていません。だから自由に自分に合う武器やマジックアイテムを選んでください」

「「「「「…………」」」」」

ゼルートの言葉を聞いた兵士たちは少しの間、思考が停止した。

兵士たちの中には元冒険者もいるので、ダンジョンの中で宝箱を手に入れるのがどれだけ大変なのかを知っている。

(戦闘に関しては冒険者の中でもトップクラスなのは間違いないと思っていたが……戦闘以外に関してもゼルート様は他とは違い、一流なのだな)

ただモンスターを倒すだけであれば、高い戦闘力があれば問題無い。

しかし、ダンジョンの中で宝箱を手に入れ、解錠する。
それらを無事に達成するには戦闘力以外の力が重要になってくる。

「さぁ、どうぞ!!!!」

ゼルートの満面の笑みを見て、兵士たちは心の底から感謝し、自身に合う武器やマジックアイテムを選び始めた。

「……私、兵士や騎士たちの気持ちが良く解るわ」

「どうしたんだ、急に」

「確かにゼルートにとっては全くお金をかけずに宝箱を手に入れたって感覚に間違いはないのでしょうけど、普通は違うのよ……普通はね」

普通の冒険者だったアレナとしては、ダンジョンを探索して宝箱を手に入れる。
そして手に入れた宝箱を無事に地上へ持って帰る。

それが意外に大変な内容なのかを理解している。

「それが普通なんだろうけど……ほら、俺は普通じゃないだろ」

「えぇ、その通りね。どこからどう見ても普通じゃないわ」

パーティーのリーダーに向けて発言する言葉としては不適切だが、アレナも言われた本人も間違っているとは思わない。

「ゼルートにとってダンジョンは楽しい遊び場だろ」

「楽しい遊び場か……今のところそんな感じだな」

「感覚が狂ってるわね~」

「アレナだって俺と出会った時よりも強くなったじゃん。常に帰還石だって持ってるし、そこまで攻略難易度が高いダンジョンじゃなきゃ、似た様な感覚だろ」

「どうかしらね」

自分を常識人だと思っている手前、言葉を濁したアレナ。

だが、自身の現状を考えると……ゼルートの仲間になる前ほど、ダンジョンに恐怖感を持たなくなったのも事実。

「それじゃ、皆選び終わるまで時間掛かりそうだし、ゲイル達のところに行くか」

ゲイルたちがブラッソに冒険の中で起こった話を伝え、楽しく語り合っている。

と思っていたが、ゲイルたちがいる屋敷から少し離れた場所に行くと、ゲイルとブラッソがバチバチに模擬戦を行っていた。
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