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少年期[701]その魔法だけで価値がある

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「……と、とにかくあれね。コロシアムのクリア報酬に相応しい杖ね」

「ま、まぁそうだな。ランク八だし、やっぱり良い杖なのは間違いない」

「どこからどう視ても優秀な杖だな……それに、ただ優秀なだけではなく持ち主を選ぶという点は良いな」

群滅の聖杖。ランク八の超高品質な杖ではあるが、装備しても火や風に光の三種類。
これらの属性魔法が使える様にはならず、使う際の規模や質を補助する効果が付与されている。

専用技として適性がなくともインフェルノストームとラージアスヒールが使えるが、一般的なファイヤーボールやウィンドカッター、ライトヒールなどを使用する効果は付与されていない。
それ故に、持ち手選ぶ杖ともいえる。

(全ての魔法使いがこれを使える訳じゃないが……やはり魔法の扱いに優れている貴族たちからすれば、是非とも欲しい一品だな。というか、インフェルノストームとラージアスヒールを使えるってだけで使用者に適性がなくとも、手に入れるだけの価値はあるかも)

火、風、光の三属性を扱える者が持つべき杖ではあるが、広範囲を焼き尽くし吹き飛ばす攻撃を行え、一度に回復できる範囲を広げることが出来る回復魔法。
ラージアスヒールに関しては多少の魔力操作技術があれば、うっかり敵の傷を回復することなく、味方の怪我だけを回復することが可能。

その二つの魔法が使えるだけでも持つ意味がある。
特に回復魔法を覚えられる者は魔法使い全体を見渡しても少ないので、装備することで回復魔法が使える杖やマジックアイテムなどは高値で取引されている。

「ただ、なぁ……うん、確かに俺が使うべきなのかもしれないけど……ミスリルデフォルロッドと違って持ち歩きが面倒なんだよな」

ミスリルデフォルロッドは現在、指輪として身に着けることが可能だが、群滅の聖杖にサイズを変化する効果などはない。

「ゼルートは魔法の才の方が上だけど、戦闘スタイルは接近戦の方が合ってるのでしょ。それなら、さすがに無理して装備するのはねぇ……」

「誰も使わないとなると、やはり売るべきか?」

そうしてしまっても、基本的には問題無い。
宝箱で手に入れたアイテムや武器を売ってしまう。

冒険者ならかなりあるあるな流れ。
例えばダンジョンの中から一瞬で地上に転移出来る帰還石。
これはとても高価な代物であり、金貨数百枚で取引されることもある。

冒険者にとって最優先は生き残ること。
帰還石は是非とも手元に残しておきたい……と、思いながらも売れば大金が入ってくるので、その誘惑に負けて売ってしまう者もそれなりにいる。

「そうだなぁ……それはそれで悪くない選択だとは思う。アレナはどう思う?」

「そうね、ルウナの言う通り売ってしまうのも悪くはないわね。確かに使い手を選ぶ杖ではあるけど、それでもそこら辺の杖と比べれば天と地ほどの差を持つ一級品。売るなら、やっぱりオークションかしら」

高級店で売るか、もしくはギルドに買い取ってもらうこともできるが、大抵の高級品はオークションに出品した方が高値で売れる。

オークションに出せば売り上げの一部を手数料として引かれるが、それでも大金が手に入る。

「オークションか。また懐が温かくなりそうだな……でもさ、この杖って超一級品だろ」

「超超超一級品だと思うわ。ランク八の武器なんて中々手に入らないものよ。六十層のボスを倒せば手に入るかもしれないけど……毎回ランク八の何かが手に入る保証は無い。それを考えれば、この群滅の聖杖は六十層のボス部屋で手に入れた物より価値がある筈よ」

「そうなると……売るのは一旦ストップした方が良いかもな」

「どうして? 結局使わないのでしょ。もしかして……戦争の開始直後に行う大魔法の際に使うつもり?」

「いや、俺が使うつもりはな……まてよ、そうした方が価値が上がりそうだな」

個人的に良い案を思い付いたゼルートは良い笑みを浮かべた。
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