上 下
534 / 1,026
連載

少年期[690]一緒にするな

しおりを挟む
「それでそれで、五体目はいったいどんな魔物が現れたんだ」

普通は心配するところなのだが、ルウナは興奮気味な様子で五体目の魔物について尋ねる。
ゼルートが今前の前にいる。生きているからという結果論からそんな態度で尋ねているのではなく、ルウナの中にはどんな魔物が相手であっても、殆どはゼルートが満足出来る相手ではないと確信している。

その証拠に、ルウナだけではなくアレナたちもヒポグリフ二体の次に現れた魔物が気になっていた。

「次に現れた魔物は成長したサイクロプスが二体だ」

「成長したサイクロプス……ははっ! 中々楽しめそうな相手じゃないか」

無意識の内に闘気が溢れ出す。
意識したわけではないのだが、成長したサイクロプスの力量を想像すると、どうしようもなく戦意が漏れてしまった。

ルウナだけではなく、ゲイルも同じく体から薄っすらと闘気が漏れ出していた。

「お前ら、ちょっと落ち着け。他のか客達がびっくりするだろ」

「む、そうだな」

「申し訳ありません。面白そうな相手だと思いましたので、僅かに闘気が零れてしまいました」

「二人の気持ちは解るが、少しはアレナを見習え。本当は一番戦いたくてうずうずしてるのに、完璧なポーカーフェイスを保ってるだろ」

「ちょ、いい加減なこと言わないでよ!! 私は二人と違ってバトル大好き人間じゃないんだから」

性格には獣人とリザードマンだが、そんなことはない。
アレナとしては成長したサイクロプスなど、危険極まりない魔物でしかない。

本気を出せば勝てるとは思うが、好き好んでそんな魔物と遭遇したいとは思わない。

「じょ、冗談だって冗談。冗談だからそんな怒るなって。えっと、説明はまだ途中だったな。成長したサイクロプス二体はそれぞれ体術と大剣術をメインに使っていた」

「ほほぅ~~~、それはそれは……やはり楽しめそうな二体じゃないか」

「断撃とクライムシュートを使ってきたから、それなりに二体とも腕は高かったな。てか、やっぱり成長した影響もあって、素の身体能力が並じゃなかった。真っ向から力で勝負することになれば、結構危ないな」

その言葉は決して間違っていないが、この男はそんな二体と軽々バチバチに戦っていた。
それをアレナはなんとなく察していたので、思わずため息を吐いてしまう。

「はぁ~~~~~。そんな敵と戦って、まぁ楽しそうな顔をするわね」

「そりゃやっぱり楽しかったからな。ロックモンキーとロックコングの素材を回収出来なかったのは惜しいけど、コロシアムで珍しい奴らと戦えたのは良い刺激だった」

強がりではなく、冗談でもない。
ゼルートは心の底からコロシアムで魔物たちと戦い、楽しいという感想を抱いている。

「あ、そう……本当にうちのパーティーは戦闘大好き人間ばかりね」

「いまさらだろ」

「……それもそうね。それで、六体目はどんな魔物が現れたの?」

「ミノタウロスの亜種だったな」

「「「「「「「「ッ!!!!???」」」」」」」」

アレナだけではなく、ゼルートの言葉が聞こえていた同業者たちが一斉に驚いた。
ミノタウロスの亜種は六十層のボス部屋に現れるボスと強さは殆ど変わらない。

「確かは毛の色は真紅だったな。あと、それなりに高品質な斧持ってた。どんな効果が付与されていたかは忘れたけど、ただの斧じゃなかったな」

「……六体目でミノタウロスの亜種、ねぇ。それで、その亜種はどれぐらい強かったのかしら」

「当たり前だけど、身体能力は高かった。成長したサイクロプスよりも上だったな。あと、タイタンスレイヤーを使ってきた」

「た、タイタンスレイヤーを……さすがAランクの魔物ね」

巨人をも一撃で葬り去る攻撃、タイタンスレイヤー。
斧術スキルをかなり上げなければ習得不可能な技。

斧術を習得していたとしても、真に才能がある者でなければそこまでスキルレベルを習得することは出来ない。

「なぁ、ゼルート。そのミノタウロス亜種と、ホーリーミノタウロス……どっちの方が強かったんだ!!!」

ルウナの問いに、アレナたちだけではなく聞き耳を立てている客達も興味津々だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん
ファンタジー
継母にいじめられる伯爵令嬢ルーナは、初恋のトーマ・ラッセンにプロポーズされて結婚した。 楽しい暮らしがまっていると思ったのに、結婚した理由は愛人の妊娠と出産を私でごまかすため。 初恋も一瞬でさめたわ。 まぁ、伯爵邸にいるよりましだし、そのうち離縁すればすむ事だからいいけどね。 離縁するために子育てを頑張る夫人と、その夫との恋愛ストーリー。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。