上 下
531 / 1,043
連載

少年期[687]とりあえず、それなりの物で

しおりを挟む
ボス部屋の魔物を全て倒したアレナたちは宝箱と魔物の死体を回収し、そのまま六十一階層を探索……することはなく、一旦地上へと戻った。

元々今回の探索では六十階層以降を探索する予定はなかったが、それでもルウナやゲイルは惜しいという表情をしていた。

(全く、今回は時間的に六十階層以降をゆっくり探索するのは難しいでしょうけど、戦争が終わればまたいくらでも時間があるのだから、その時にじっくり探索できるのに)

多少なりとも、まだ全ての階層を探索し終えていないダンジョンを攻略するというのは、アレナも冒険者として気になっている。
しかしそれよりも、現在は始まるまであまり時間がない隣国との戦争に意識を向けなければならない。

「なぁ、アレナ。次はいつダンジョンに潜る?」

「……宝箱の中に聖魔石が入っていなかったら、一日休んでからまた直ぐにダンジョンに向かうことになるわね」

「おぉ~~~、それは良い……いや、良くないな。一先ず聖魔石はアレナの為に欲しい」

現在、ドワーフの鍛冶師であるオルガにはガレンの聖剣を制作してもらっている。
そしてガレン専用の聖剣の製作が終われば、次はアレナ専用の聖剣制作を頼む。

聖剣の制作には、どうしても聖魔石という貴重な鉱石が必要になる。
アレナとしては現在腰に体験しているミスリル製のロングソードで十分に満足しているのだが、パーティーのリーダーであるゼルートが必要だと言ってくれたこともあり、有難く受け取ることにした。

「ふふ、ありがと。でも……まだ時期的に五十一階層から六十階層まで降りる時間はあるでしょうね。ルウナ、あなたも聖魔石を使って手甲と脚甲を造ってもらったらどう?」

「私のか? ん~~~~、私は今の武器で満足している……それに、素手で戦うことの方が多い」

ロングソードは使えるが、アレナの方が技量は上。
短剣も使えるが、二刀流の扱いはゼルートの方が勝っている。

腕が鈍らないようにダンジョン探索中では素手だけではなく、武器を使って戦うこともあるので、ほんの少しずつではあるが腕は上がっている。

ただ、アレナやゼルートの父であるガレンの様に優秀な武器の中でも、更に飛び抜けた武器を持とうとは思わない。

「私も同じようなことを思っていたわ。これ以上高性能な武器を持つのは、身の丈に合わない……でも、せっかくゼルートがこの街一番の鍛冶師に頼んで造ってくれるのだから、有難く受け取ろうと思ったの」

「アレナには十分受け取る資格があるだろう。しかし、私はアレナやゼルート……ゲイルと比べれば、武器を扱う腕はまだまだだ」

ルウナが述べた三人は確かに武器の扱いに関しては秀でている。
ラルは生まれた時から己の五体、全てが武器の状態だったので心得はあるものの、ルウナより腕は下。

ラームも本来であればルウナよりも武器の扱いは上手くないのだが、強奪によって多数の魔物や盗賊たちのスキルを吸収した結果、技術はほぼ一人前の腕に達していた。

「ロングソードや短剣、刀とかはそうかもしれないけど、ルウナのメイン武器が素手なのは知ってるわ。それを補助する為の武器……というよりも防具かしら? 何はともあれ、手甲や脚甲を身に着けるだけでだいぶ戦力は変わる筈よ」

「まぁ、それはそうかもしれないが……だからといって、いきなり聖魔石の様な高級素材を使った物を装備するのは気が引ける」

「その気持ちは解らなくもなあいけど……とりあえず、戦争が始まる前にそれなりの手甲と脚甲を装備して、一回ダンジョンで試してみたらどう?」

「……そうだな。明日が休息なら、街の武器屋を回って探してみるか」

やはり、いきなり聖魔石を使った手甲と脚甲を装備する気にはならないが、一先ず新しい武器にもなる防具を翌日買いに行くと決めた。

それなりの品質となれば、値段もかなり高くなる。
しかしゼルートから定期的に小遣いをもらっており、今回の探索で得た素材や魔石は自由にギルドで売って構わないので、焦ってゼルートに金を借りる必要は全くない。
しおりを挟む
感想 680

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい。――『私』が悪役令嬢になった理由――

唯野晶
ファンタジー
【シリアス悪役令嬢モノ(?)。分からないことがあるのは幸せだ】 ある日目覚めたらずっと大好きな乙女ゲーの、それも悪役令嬢のレヴィアナに転生していた。 全てが美しく輝いているセレスティアル・ラブ・クロニクルの世界。 ヒロインのアリシア視点ではなく未知のイベントに心躍らせる私を待っているのは楽しい世界……のはずだったが? 「物語」に翻弄されるレヴィアナの運命はいかに!? カクヨムで先行公開しています https://kakuyomu.jp/works/16817330668424951212

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。 貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。 貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。 ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。 「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」 基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。 さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・ タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。