上 下
512 / 1,026
連載

少年期[668]闘争心が熱く燃え上がる

しおりを挟む
オルガにガレンの聖剣制作を頼んだ翌日、ゼルートたちは早速ホーリーパレスに乗り込む。

だが、ゼルートは四十一階層に転移。
アレナたちは五十一階層に転移して二手に分かれた。

「一人で冒険するのは久しぶりだな」

エボルサーペントの素材がもっと欲しいので、ゼルートは一人だけエボルサーペントに挑もうと決めた。

「さて……さっさと下に降りるか」

一度五十階層まで降りたことがあるので空間魔法で転移することが可能だが、万が一同業者に見られたらという可能性を考慮し、ゼルートは身体強化を使いながら一気に階層を下って行った。

当然、途中で魔物とすれ違うことはあるが、どの魔物も魔力を纏ったゼルートの拳一発でノックアウト。

(あんまり手加減しないと、この辺りの魔物を直ぐに死ぬな。でも、今は手加減して戦いを楽しむ暇はないしな)

さっさと五十階層に降り、エボルサーペントを倒して素材を手に入れたい。
ゼルートとしては、ランクA状態のエボルサーペントの素材が欲しい。

だが、それはよろしくない願いなのは分かっている。

(エボルサーペントの基本ランクはBランクだからな……別にBランクの素材も十分高級品だけど、やっぱり手に入れるなら強い素材が欲しいからな……その為に同業者に生贄となってくれ、なんて言えないけど)

エボルサーペントは強敵と戦い、勝つたびに急激に強くなる。
五十層のボスに挑むような冒険者の中にヘタレや弱者はいない。

全員が強者と呼べる者たちだが、当然……ボスであるエボルサーペントも強者の部類に当てはまる魔物。
Bランクのパーティーが全滅。もしくは命からがら転移石を使って地上に逃げることは珍しくない。

「ッ!! グゥオオオァァァアアアアッ!!!!」

「オーガの群れにオーガジェネラルか……しょうがない、ちょっと相手してやるか」

戦いに喜びを感じるオーガはゼルートの強さに気付くことはなく、身体強化と腕力強化を同時使用し、更には部分的に魔力を纏って強化しながら襲い掛かる。

(手加減しなかったらワンパンで終わる奴らが多いが、それでもこの辺りの階層になればやっぱりそれなりに戦える奴が多いな……うん、やっぱりダンジョンは楽しい場所だ)

オーガの中には武器を持っている者もおり、スキル技を使ってゼルートを殺そうとする者もいた。
他には腕や脚に属性魔力を纏う個体もいた。

それがゼルートの闘争心を一層熱くさせる。

「はっはっは!!!!! 良いぞ良いぞ!! もっと殺す気で掛かって来いっ!!!!!」

平凡な冒険者であれば十体以上のオーガに殺気を全力で飛ばされれば失禁する可能性がる。
それほどの恐怖を浴びながらも、ゼルートの笑顔が消えることはない。

少々凶悪な笑みを浮かべながらオーガの攻撃に自分の攻撃をぶつけていく。

そしてそれなりのレベルと技術を持っていても所詮はオーガ。
二分もすれば残りはオーガジェネラルただ一体だけとなっていた。

「こいつらの解体もしないといけないし、お前と遊ぶのは三十秒ぐらいにしておくか」

「ッ……グァアアアッ!!!!」

オーガジェネラルは全身に荒々しい魔力を纏い、身体強化に加えて剛腕のスキルを使って腕力を底上げ。
両手に持つオーガジェネラルの大剣を振り回し、全力でゼルートを殺しに掛かる。

「おぉ~~、凄い風切り音だな。何もせず食らったら俺でも吹き飛ばされそうだ」

そんな事を言いながらもゼルートはアイテムリングから取り出したダマスカス鋼の大剣に魔力を纏って斬り合っている。
負けじとオーガジェネラルは大剣に火の魔力を纏うが、その瞬間にゼルートは水の魔力を纏って対抗。

斬り合う中でスキル技を使って攻めようとするが、ほぼ同じタイミングでゼルートも同じ技を放つ。
ゼルートとオーガジェネラルの大剣がぶつかり合うたびにダンジョン内に轟音が鳴り響く。

強者と強者がぶつかり合う戦いを観るのが好きな者であれば、永遠に観ていたいと思える剣戟だが……元々目標があるゼルートは丁度三十秒を過ぎたところでスピードのを一段階上げ、オーガジェネラルの次回から消えた。

戦う気から狩る気に変わったゼルートの速度に反応することは出来ず、気付いたときには視界が暗転していた。
そして二度と景色が戻ることはなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん
ファンタジー
継母にいじめられる伯爵令嬢ルーナは、初恋のトーマ・ラッセンにプロポーズされて結婚した。 楽しい暮らしがまっていると思ったのに、結婚した理由は愛人の妊娠と出産を私でごまかすため。 初恋も一瞬でさめたわ。 まぁ、伯爵邸にいるよりましだし、そのうち離縁すればすむ事だからいいけどね。 離縁するために子育てを頑張る夫人と、その夫との恋愛ストーリー。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。