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少年期[665]それで恩を返したとは思っていない

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「ゼルート、お前さん何を考え込んでるんじゃ?」

「ん? あれだよ、家族が無事戦争を生き抜けるように自分には何ができるかって考えてた」

「お前さんの様な子供を持って両親は幸せじゃな」

「……子が親に対してどう思うかは人それぞれだと思うけど、俺は愛されて育ってきたって自覚があるからな。だから俺はその恩を少しでも返したいんだよ」

その気持ちは素晴らしいものだろう。

だが、恩を返すという意味では既に十分な恩を返していた。
侯爵家から一人と、伯爵家から二人。計三人の令息と変則バトルを行い、勝利の対価として得た財産。

それはガレンが治める領地を大いに発展させた。
そしてゼルートが実家を出る時にガレンに渡した、十六体の錬金獣。

その価値はゼルートが思っているよりも大きい……いや、大き過ぎると言ってもいいだろう。
ゼルートが一番最初に造った錬金獣、グロリアスでさえ貴族や商人なら大金を払ってでも購入する。

そんな存在が十六体……売ろうと思えば、途方もない金額になる。
だが、ゼルートはそれを渡したこと……アホ令息三人と変則バトルを行い、賭けの報酬として大金を手に入れたこと。
それらのことに関して恩を返したとは全く思っていなかった。

「そうか……なら、次の戦争で尚更生き延びねばならんのう。まっ、お前さんの実力なら全く問題はないじゃろうが」

「隣国の連中には恨まれるとは思うが、全力で暴れさせてもらうさ」

なんて発言をするが、実際のところ全力で暴れることはおそらくない。
仮に全力で暴れてしまうと、戦場が大きく崩れる。

そして味方に攻撃が飛んでしまう可能性が高い。
ゼルート一人だけで暴れるなら問題無いが、今回の戦いは国対国。

ゼルート対国ではなないので、あまり周囲の状況を考えずに暴れるのは得策ではない。

「ようやく着いたぞ。ここがこの街一番の鍛冶師の鍛冶場じゃ」

「……まだ中に入ってないのに熱気が感じるんだが」

「もしかしたら造ってる最中なのかもしれんな。とりあえず中に入るぞ」

勝手に中に入っても良いのかと思いながら中へと入る。

すると、一人の女性が現れた。

「誰かと思ったらドルントさんじゃないですか」

「うむ、元気そうじゃな。ラムス」

少女の肌はいわゆる褐色肌。
しかしその体は引き締まっており、どこか力強さを感じさせる。

(褐色肌でスタイルが良くて出るとこ出てる……本人にその気がなくても絶対に異性を誘惑してるだろうな)

チラッとラムスという女性を見て、ゼルートは違和感を感じた。

「……ドワーフ?」

ドワーフではないことは解っている。体型が違い過ぎるというのが一番の理由だが、感覚的に純粋なドワーフではないと脳が告げている。

「ラムスは人族とドワーフのハーフじゃよ。こんな見た目だが、パワーはそこら辺の男に負けん。寧ろ勝っている」

見た目だけで実力は測れない。
その代名詞の様なゼルートは言われなくても解る。

ラムスというハーフドワーフのパワーは尋常ではない。

「ラムス、こっちは先日話題になっていた悪獣を一人で倒したゼルートじゃ」

「えっ、あの悪獣殺しの? ……体格は小さいって噂が本当だったんだ」

「どんな噂があるのかは聞かないが、俺がそのゼルートだ」

「ゼルート、軽く戦意をだしやれ」

ドルントに言われるがまま、ゼルートは軽く戦意を漏らした。
そのお陰でラムスは自分の耳に入った噂が本当なのだと直ぐに信用した。

ゼルートはある程度実力のある者から視て、見た目通りの実力ではないということは直ぐに理解される。
だが、悪獣をソロで倒す程強いのか……それに関しては少々疑問を持ってしまう。

そんな印象を相手に持たせてしまうが、少しでも戦意や殺気を漏らせば大抵の実力者は噂通りの強者だと確信する。

「という訳で、ゼルートの実力は本物なんじゃ」

「う、うん。それは分った。それで、そのゼルートさんがうちに何の用なんですか?」

「ゼルートたちは運良く聖魔石を手に入れたんじゃ。そしてその聖魔石で親父さんのロングソードを造りたいらし。じゃから、この街一番の鍛冶師であるオルガの元に来たんじゃ」

「なるほど!! 事情は分かりました。ただ、後三十分ぐらいは手放せないと思いますけど……大丈夫ですか?」

三十分ぐらい待つなど屁でもないので、ゼルートはのんびりドルントとリバーシでもしながら時間を潰した。
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