498 / 1,049
連載
少年期[654]あっという間に空
しおりを挟む
ゲイルとデスナイトの死闘が終わり、ゼルートは楽しいことを考えながら六十階層のボス部屋へと降りていく。
「ふぅーー、ようやくここまで辿り着いたな」
ボス部屋に辿り着くまで特に面倒な敵と遭遇することなく、六人は無事に辿り着くことができた。
無事に辿りつけたことにホッとする者がいれば、ホーリーリビングデットの軍団やデスナイトの様なイレギュラーともう一度遭遇したいと思う者もいた。
そんな中、ゼルートは無事に辿り着けて良かったと思っている派だった。
(道中に多から少なからず、転移系のトラップがちょろちょろあった。中には六十階層をすっ飛ばして場所に飛ばすやつもあったからな……あんなのに引っ掛かったら、同業者は勘弁してくれよ状態だろうな)
ボス部屋より下の階層に降りれば、確実に魔物のレベルが上がる。
レベルが上がれば、必然的に実力が上がる。
ダンジョンを探索している冒険者の実力にもよるが、いきなり転移されたら不意打ちを食らう可能性が高くなり、転移した場所によっては絶対に敵わないモンスターしか徘徊していない場合もある。
「ただ……やっぱりそれなりに人が多いな」
多くの冒険者が辿り着くことができない六十階層のボス部屋前。
しかし腕利きの冒険者が多く滞在していることもあり、ここまで辿り着くパーティーやクランメンバーはそれなりにいる。
「丁度お腹が空いてきたし、飯にするか」
「良いわね。少し手伝うわ」
自分たちの番が回ってくる時間を計算すると、大体一時間弱は掛かる。
料理を作って食べて消化するには十分な時間。
ゼルートは早速アイテムバッグからモンスターの肉を適当に取り出し、更に野菜や調味料も取り出した。
贖罪と調味料を取り出してから大体十数分ほど経ち、料理が完成した。
「さてと、いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
ボス部屋の前で良い匂いを漂わせながらゼルートたちは一斉に料理を食べ始めた。
ボス部屋の前では緊張して食事が喉を通らない者がいる。
それは全く珍しいことではない。
六十階層のボス部屋に現れる魔物はAランクの冒険者であっても殺される可能性がある。
そんなボス戦を前にして、食事が喉を通らないのも仕方ないだろう。
だが、漂う匂いはそんな冒険者の食欲を刺激し、腹から音を鳴らした。
ボス戦前の緊張感が吹き飛んだ。
今なら腹に何かが入る。
今戦っているパーティーの戦いが終われば、直ぐに自分たちの番ではない冒険者は皿を持ってゼルートのところにやって来た。
「な、なぁ。ちょっと良いか」
「……飯が欲しいのか」
「あ、あぁ。あんまりにも良い匂いがしたからさ」
「別に良いけど、さすがにタダは無理だぞ」
「も、勿論金は用意する。ちょっと待っててくれ!!!」
男は慌てて自分のバッグを漁り、宝箱から手に入れた金貨五枚を出した。
「こ、これでどうだ」
「……あい、受け取った。皿を貸してくれ」
冒険者から皿を受け取り、ゼルートは一杯になるまで肉と野菜を入れた。
戦う前に食う量にしては多いかもしれないが、腹が減ってボス戦中に隙が生まれる可能性は否定出来ない。
「あ、ありがとう!!!」
男は元の場所に戻るなり、ゼルートから貰った料理をがっつき始めた。
他の冒険者たちも無性に腹が空き始め、ゼルートから飯を買うか迷い始める。
ただ、初めに買った男が金貨五枚を払ったので、同じ金額かそれ相応のマジックアイテムを渡さなければならない。
どうすれば良いのか迷っていると、どんどんゼルートが盛り付けた皿から料理が消えていき、あっという間に料理がなくなってしまった。
「うむ、美味かった。やはりゼルートが作る料理は美味いな」
「そりゃどうも。でも、別に特別なことはしてないから。俺が作らなくても、同じ方法で作れば同じ味になるよ」
「そうかもしれないが……やはり美味い。私も自分で作れた方が良いのか?」
「作れることに越したことはないと思うわよ」
アレナはゼルート程ではないが、それなりに料理は作れる。
ラルも料理に関しては少々勉強しているので、何も知らない人よりは上手く作れる。
「よっぽど不器用でなければ大きくミスすることはない。材料なら大量にあるんだし、今度練習してみたらどうだ?」
「良い機会だ、少し練習してみよう」
ゼルートたちの会話を聞いていた冒険者たちは今練習して欲しいと思った。
既に皿には一切料理はなく、空っぽ。
そんな状態のゼルートにもう一度料理を作ってくれと頼むは申し訳なく思うのと、料理が出来上がるまでの時間とボス戦は始まる時間を考えると微妙なところ。
この二つが原因で、最初にゼルートから料理を買った男以外は良い匂いを漂わせる料理を口にすることはなかった。
「ふぅーー、ようやくここまで辿り着いたな」
ボス部屋に辿り着くまで特に面倒な敵と遭遇することなく、六人は無事に辿り着くことができた。
無事に辿りつけたことにホッとする者がいれば、ホーリーリビングデットの軍団やデスナイトの様なイレギュラーともう一度遭遇したいと思う者もいた。
そんな中、ゼルートは無事に辿り着けて良かったと思っている派だった。
(道中に多から少なからず、転移系のトラップがちょろちょろあった。中には六十階層をすっ飛ばして場所に飛ばすやつもあったからな……あんなのに引っ掛かったら、同業者は勘弁してくれよ状態だろうな)
ボス部屋より下の階層に降りれば、確実に魔物のレベルが上がる。
レベルが上がれば、必然的に実力が上がる。
ダンジョンを探索している冒険者の実力にもよるが、いきなり転移されたら不意打ちを食らう可能性が高くなり、転移した場所によっては絶対に敵わないモンスターしか徘徊していない場合もある。
「ただ……やっぱりそれなりに人が多いな」
多くの冒険者が辿り着くことができない六十階層のボス部屋前。
しかし腕利きの冒険者が多く滞在していることもあり、ここまで辿り着くパーティーやクランメンバーはそれなりにいる。
「丁度お腹が空いてきたし、飯にするか」
「良いわね。少し手伝うわ」
自分たちの番が回ってくる時間を計算すると、大体一時間弱は掛かる。
料理を作って食べて消化するには十分な時間。
ゼルートは早速アイテムバッグからモンスターの肉を適当に取り出し、更に野菜や調味料も取り出した。
贖罪と調味料を取り出してから大体十数分ほど経ち、料理が完成した。
「さてと、いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
ボス部屋の前で良い匂いを漂わせながらゼルートたちは一斉に料理を食べ始めた。
ボス部屋の前では緊張して食事が喉を通らない者がいる。
それは全く珍しいことではない。
六十階層のボス部屋に現れる魔物はAランクの冒険者であっても殺される可能性がある。
そんなボス戦を前にして、食事が喉を通らないのも仕方ないだろう。
だが、漂う匂いはそんな冒険者の食欲を刺激し、腹から音を鳴らした。
ボス戦前の緊張感が吹き飛んだ。
今なら腹に何かが入る。
今戦っているパーティーの戦いが終われば、直ぐに自分たちの番ではない冒険者は皿を持ってゼルートのところにやって来た。
「な、なぁ。ちょっと良いか」
「……飯が欲しいのか」
「あ、あぁ。あんまりにも良い匂いがしたからさ」
「別に良いけど、さすがにタダは無理だぞ」
「も、勿論金は用意する。ちょっと待っててくれ!!!」
男は慌てて自分のバッグを漁り、宝箱から手に入れた金貨五枚を出した。
「こ、これでどうだ」
「……あい、受け取った。皿を貸してくれ」
冒険者から皿を受け取り、ゼルートは一杯になるまで肉と野菜を入れた。
戦う前に食う量にしては多いかもしれないが、腹が減ってボス戦中に隙が生まれる可能性は否定出来ない。
「あ、ありがとう!!!」
男は元の場所に戻るなり、ゼルートから貰った料理をがっつき始めた。
他の冒険者たちも無性に腹が空き始め、ゼルートから飯を買うか迷い始める。
ただ、初めに買った男が金貨五枚を払ったので、同じ金額かそれ相応のマジックアイテムを渡さなければならない。
どうすれば良いのか迷っていると、どんどんゼルートが盛り付けた皿から料理が消えていき、あっという間に料理がなくなってしまった。
「うむ、美味かった。やはりゼルートが作る料理は美味いな」
「そりゃどうも。でも、別に特別なことはしてないから。俺が作らなくても、同じ方法で作れば同じ味になるよ」
「そうかもしれないが……やはり美味い。私も自分で作れた方が良いのか?」
「作れることに越したことはないと思うわよ」
アレナはゼルート程ではないが、それなりに料理は作れる。
ラルも料理に関しては少々勉強しているので、何も知らない人よりは上手く作れる。
「よっぽど不器用でなければ大きくミスすることはない。材料なら大量にあるんだし、今度練習してみたらどうだ?」
「良い機会だ、少し練習してみよう」
ゼルートたちの会話を聞いていた冒険者たちは今練習して欲しいと思った。
既に皿には一切料理はなく、空っぽ。
そんな状態のゼルートにもう一度料理を作ってくれと頼むは申し訳なく思うのと、料理が出来上がるまでの時間とボス戦は始まる時間を考えると微妙なところ。
この二つが原因で、最初にゼルートから料理を買った男以外は良い匂いを漂わせる料理を口にすることはなかった。
55
お気に入りに追加
9,024
あなたにおすすめの小説
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
殿下、恋はデスゲームの後でお願いします
真鳥カノ
ファンタジー
気付けば乙女ゲームの悪役令嬢「レア=ハイラ子爵令嬢」に転生していた!
いずれゲーム本編である王位継承権争いに巻き込まれ、破滅しかない未来へと突き進むことがわかっていたレア。
自らの持つ『祝福の手』によって人々に幸運を分け与え、どうにか破滅の未来を回避しようと奮闘していた。
そんな彼女の元ヘ、聞いたこともない名の王子がやってきて、求婚した――!!
王位継承権争いを勝ち抜くには、レアの『幸運』が必要だと言っていて……!?
短編なのでさらっと読んで頂けます!
いつか長編にリメイクします!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。