冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［６３４］個でも集団でも変わらない

（つ、強い……俺らより歳下なのに、なんで）

（ば、化け物かよ。反則だろ、あの強さは）

（これだけの人数と戦って、息一つ切れていないなんて……なんてスタミナの量なの）

何十人というルーキーがゼルートと模擬戦を行ったが、全員が自身の力を全て躱されて破られ、全敗。
全員がもう戦い気力を失っていた。

だが、最後にゼルートが大きな爆弾を落とした。

「それじゃ、最後に全員纏めて掛かって来い」

なんとなく気分だった。
個で敵わないのは既に理解しただろうが、纏まって戦えば自分に勝てると思っているルーキーがいるかもしれない。

（なんて軽く思ってたんだけど……どうやら殆どの奴らが、集団なら俺に勝てると思ってたみたいだな）

全員纏めて掛かって来い。

ゼルートがそう言った瞬間に、ルーキーたちから怒りのオーラが漏れ出す。

「おい……流石にそれは調子に乗り過ぎなんじゃねぇか」

「そうね。あなたが強いということは十分に解ったけど、この人数を相手に一人で勝てると思ってるなんて……流石に傲慢じゃないかしら」

一人……また一人と立ち上がり、徐々に戦意が漲り始める。
そして直ぐに傍にいる者たちとパーティーを組み始めた。

（よっぽどずば抜けた力を持っている……俺の様な周囲を無視するような力を持っている者を除いて、個よりも集団の力の方が強いのは常識。それが身に染みて解ってるって感じだな）

ルーキーたちの中でギフトを持っていそうだなと、戦って感じた人物は何人かいた。
だが、徒党を組んだからといって、自身の脅威になるとは思えない。

「俺の自信が傲慢かどうか……試してみろよ」

軽く挑発する仕草を行うと、まずは接近戦のメンバーが一斉に襲い掛かる。
ただ、一斉に襲い掛かったからといって仲間の攻撃で自滅するような事故は起きない。

（……凄いな。そこら辺の連帯はかなり徹底して訓練してるのかもな。でも、やっぱり個として強い奴がいないから意味ないな）

躱して殴り、躱して蹴り飛ばし、躱して武器を奪って撲撃。
次々と前衛たちが吹き飛ばされていく中、後衛のメンバーたちは前衛が粘っている間に詠唱を完成させ、魔法をぶっ放す。

（塵も積もれば山になるっていうけど……この状況だと、それは当てはまらないな）

「ロックウォール」

岩の壁を生み出し、全ての攻撃魔法を防ぐ。
そして壁を消した瞬間に後衛陣に近づき、次々に腹パンを決めていく。

「よし、これで終わり……って、皆元気だな」

全員に腹パンを決めた筈だが、先に転がっていた前衛組が立ち上がり、再びゼルートに襲い掛かる。

（今の一連の流れで俺に集団で挑んでも勝てないってのは解ったと思うんだが……まっ、一応金は貰ってるんだ。しっかりと仕事はしないとな）

第三者から見れば、仕事ではなく丁度良いサンドバッグを吹き飛ばしている様にしか思えない。
ルーキーたちの傷を治す為に常勤している治癒師は、これから迫りくるであろう自身の仕事量を考えると、大きなため息を吐きたくなった。

そしてルーキー何十人対、ゼルート一人の戦いは五分ほど続き……結局ゼルートの圧勝で模擬戦は終了した。

「あんたらのところのルーキーたち、随分と元気が良いな」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。ただ、やはり掠り傷一つすらないんだな」

「そりゃ踏んでる場数がと経験の数が違うからな。もう、俺が見た目通りじゃないってのは解ってるだろ」

「あぁ、この目でしっかりと確認させてもらった」

総合的な力を考えれば、Sランクにすら届く実力。
まだまだ成長しているかもしれないと考えると、背筋がゾッとした。

（ゼルート殿一人で大手クランと同じ戦力……どうやら間違いなさそうだな。今日も先日も本気を出している様には見えない……ゼルート殿が近々起こる戦争に参加するなら、こちら側の圧勝で終わりそうだな）

近いうちに隣国との戦争が起こる。
多少の権力を持つ者であれば、既に知り得ている情報。

当然、それは銀獅子の皇のトップ陣の耳にも入っている。

「ふぅーーーー……なんか消化不良だな。なぁ、アルゼルガさん。ちょっと軽く動かないか」

「……はっ！？」