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少年期[623]それは売らない
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「戻ってきたなぁ……うし、とりあえずギルドだ」
「今回も素材を売るのよね」
「あぁ、勿論だ、エボルサーペントの素材は売らないけどな」
「「「「ッ!!!!????」」」」
ゼルートの言葉を聞いた周囲の者たちは、一斉に六人に視線を向けた。
奇妙な組み合わせである六人がかなりの強さを持っている。
その話はそこそこ広まっており、ゼルートに関してはギルドでBランクの冒険者は軽くあしらった。
それなりの強さを持っているというのは同じ、冒険者。
冒険者を相手に商売している連中達も解っていた。
だが、つい少し間に一組のパーティーがボロボロな状態で地上に戻ってきた。
近くにいた冒険者が事情を尋ねると、エボルサーペントがボスとして現れる部屋から逃げて来たと知り、殆どの者がボスが進化したと確信した。
戻ってきたパーティーは全員がBランクであり、メンバーは合計で十人
初期のエボルサーペントであれば、高確率で倒せる戦力。
だが、そのメンバーがボロボロの状態で戻ってきた。
エボルサーペントの養分となったと考えるのが妥当。
しかし……そんな敵を倒したと、一人の少年が口から漏らした。
「……なんか、急に視線が集まったな」
「でしょうね。エボルサーペントはそう簡単に倒せる魔物じゃないの。それはゼルートも解ってる……わよね?」
「一人で、しかもあんまり準備してなかったら厄介な相手だろうな」
「はぁーーー、聞く相手を間違えたわ」
だが、アレナの周りには誰に話を振って一般的な回答は返ってこない。
「一つ前のパーティーが討伐に失敗したのを周りの人たちは既に知っていたのよ。つまり、エボルサーペントが進化したのも知っている」
「一段階進化したエボルサーペントを俺たちが倒したから驚いてるってことか……まっ、ソロや数人じゃなくて俺たちで倒したからな。当然の結果だろ」
あまりにも不遜、傲慢、天狗。
ゼルートの実力が解らない者たちは仲間の力を自分の力と勘違いし、慢心しきっているボンクラだと見下す。
ただ、大半の冒険者は一段階進化したエボルサーペントを倒したという話を完全に信用出来ずとも、絶対に嘘だとも思わなかった。
(……大半の奴は疑ってるけど、残りは微妙な顔をしてるって感じだな。やっぱり五十階層のボスにもなれば、倒せるパーティーやクランは少ないんだろうな)
例外中の例外であるゼルートからすれば、パーティーではなくソロで戦っても問題無い。
寧ろ、戦いを楽しむのであればソロで戦う方が良いとすら思っている。
「エボルサーペントの肉ってさぁ……絶対に美味いよな」
「それは断言出来るわね。数度だけ食べたことがあるけど、心底美味しかったわ。肉だけは売らずに自分たちで食べるって冒険者もある程度いるぐらいるのよ」
魔物の肉は、基本的にランクが高ければ高いほど美味い。
Aランクの魔物の肉になれば、大金が動く。
一般人では絶対に手が届かない。
それなりに稼いでる冒険者であっても、よっぽどの記念日とかでなければ、懐を心配して店で食べようとは思わない。
「アレナがそう言うなら期待出来るな。宿に帰ったら作ってもらうか」
その前にまずギルド。
寄り道せずに歩き続け、ギルドへの中へ入る。
周囲の目線などは一切気にせず、素材の買取カウンターを目指す。
「あぁーー、ちょっと時間が悪かったな」
「そうね。夕方時だから街の外やダンジョンの中から帰ってくる冒険者が多いしね」
「……ゼルート、ササっと上がった方がこういった面倒はなくなるんじゃないか?」
上に上がる。
それが何を指しているのか、ゼルートは直ぐに理解した。
だが、その案は却下だと思いながら首を横に振る。
「やだよ。てか、上がってもこういうのは免除……というか、並んでる人たちをとばして一番前に行くのは無理なんだよ」
「そうか……まぁ、ルールの重要性を考えれば仕方ないか」
「だろ。いきなり後ろに並んでた奴が前に割むのはムカつくだろ。それは誰でも同じだ」
「……そうだな。そんな奴がいたらぶん殴りたくなる」
一瞬だけ拳に魔力を……周りの冒険者に見えやすく纏った。
「「「「ッ!!!」」」」
確かにルールとして、割り込みは禁止だ。
基本的に目の前の者が好意で譲ったりしない限りは、同じ同業者から嫌われる行為。
だが、目の前に並ぶ相手の性別や見た目で無理矢理どかそうとする乱暴者がいる。
そんなアホが三人の後ろに並んでおり、馬鹿なことを考えていたのだが……ルウナの拳に纏われた魔力量を見て怖気づいてしまった。
「そろそろだな」
「今回も素材を売るのよね」
「あぁ、勿論だ、エボルサーペントの素材は売らないけどな」
「「「「ッ!!!!????」」」」
ゼルートの言葉を聞いた周囲の者たちは、一斉に六人に視線を向けた。
奇妙な組み合わせである六人がかなりの強さを持っている。
その話はそこそこ広まっており、ゼルートに関してはギルドでBランクの冒険者は軽くあしらった。
それなりの強さを持っているというのは同じ、冒険者。
冒険者を相手に商売している連中達も解っていた。
だが、つい少し間に一組のパーティーがボロボロな状態で地上に戻ってきた。
近くにいた冒険者が事情を尋ねると、エボルサーペントがボスとして現れる部屋から逃げて来たと知り、殆どの者がボスが進化したと確信した。
戻ってきたパーティーは全員がBランクであり、メンバーは合計で十人
初期のエボルサーペントであれば、高確率で倒せる戦力。
だが、そのメンバーがボロボロの状態で戻ってきた。
エボルサーペントの養分となったと考えるのが妥当。
しかし……そんな敵を倒したと、一人の少年が口から漏らした。
「……なんか、急に視線が集まったな」
「でしょうね。エボルサーペントはそう簡単に倒せる魔物じゃないの。それはゼルートも解ってる……わよね?」
「一人で、しかもあんまり準備してなかったら厄介な相手だろうな」
「はぁーーー、聞く相手を間違えたわ」
だが、アレナの周りには誰に話を振って一般的な回答は返ってこない。
「一つ前のパーティーが討伐に失敗したのを周りの人たちは既に知っていたのよ。つまり、エボルサーペントが進化したのも知っている」
「一段階進化したエボルサーペントを俺たちが倒したから驚いてるってことか……まっ、ソロや数人じゃなくて俺たちで倒したからな。当然の結果だろ」
あまりにも不遜、傲慢、天狗。
ゼルートの実力が解らない者たちは仲間の力を自分の力と勘違いし、慢心しきっているボンクラだと見下す。
ただ、大半の冒険者は一段階進化したエボルサーペントを倒したという話を完全に信用出来ずとも、絶対に嘘だとも思わなかった。
(……大半の奴は疑ってるけど、残りは微妙な顔をしてるって感じだな。やっぱり五十階層のボスにもなれば、倒せるパーティーやクランは少ないんだろうな)
例外中の例外であるゼルートからすれば、パーティーではなくソロで戦っても問題無い。
寧ろ、戦いを楽しむのであればソロで戦う方が良いとすら思っている。
「エボルサーペントの肉ってさぁ……絶対に美味いよな」
「それは断言出来るわね。数度だけ食べたことがあるけど、心底美味しかったわ。肉だけは売らずに自分たちで食べるって冒険者もある程度いるぐらいるのよ」
魔物の肉は、基本的にランクが高ければ高いほど美味い。
Aランクの魔物の肉になれば、大金が動く。
一般人では絶対に手が届かない。
それなりに稼いでる冒険者であっても、よっぽどの記念日とかでなければ、懐を心配して店で食べようとは思わない。
「アレナがそう言うなら期待出来るな。宿に帰ったら作ってもらうか」
その前にまずギルド。
寄り道せずに歩き続け、ギルドへの中へ入る。
周囲の目線などは一切気にせず、素材の買取カウンターを目指す。
「あぁーー、ちょっと時間が悪かったな」
「そうね。夕方時だから街の外やダンジョンの中から帰ってくる冒険者が多いしね」
「……ゼルート、ササっと上がった方がこういった面倒はなくなるんじゃないか?」
上に上がる。
それが何を指しているのか、ゼルートは直ぐに理解した。
だが、その案は却下だと思いながら首を横に振る。
「やだよ。てか、上がってもこういうのは免除……というか、並んでる人たちをとばして一番前に行くのは無理なんだよ」
「そうか……まぁ、ルールの重要性を考えれば仕方ないか」
「だろ。いきなり後ろに並んでた奴が前に割むのはムカつくだろ。それは誰でも同じだ」
「……そうだな。そんな奴がいたらぶん殴りたくなる」
一瞬だけ拳に魔力を……周りの冒険者に見えやすく纏った。
「「「「ッ!!!」」」」
確かにルールとして、割り込みは禁止だ。
基本的に目の前の者が好意で譲ったりしない限りは、同じ同業者から嫌われる行為。
だが、目の前に並ぶ相手の性別や見た目で無理矢理どかそうとする乱暴者がいる。
そんなアホが三人の後ろに並んでおり、馬鹿なことを考えていたのだが……ルウナの拳に纏われた魔力量を見て怖気づいてしまった。
「そろそろだな」
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