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少年期[588]その先を考えれば

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(ゼルート……それはちょっとド直球過ぎる聞き方だと思うのだけど)

本気でこの事件を解決しようとしている。
それが解るからこそ、あまり口を挟まないようにしようと思っている。

そしてゼルートがシーラに行っている質問も事件を解決するうえでは重要な内容だ。
だが……あまりにも聞き方がストレート過ぎるのだ。

それはアレナだけではなく、他の四人も同じ事を思っていた。

(ど、どどどどうしたら良いの!!??)

突然自分を助けてくれた少年が思い人に予想外の質問をかました。
その結果として、思い人が自分に好意を持ってくれていると解かった。

それは嬉し過ぎて小躍りしそうな程の衝撃だった。
しかし次は自分に同じ質問が行われた。

勿論答えは惚れているの一択だ。
なのだが、単純に羞恥心からくる混乱によってどう答えれば良いのか、頭が軽くパニックになっている。

「この件を他に漏らしたりはしない。だからシーラさんの本音を聞かせて欲しい」

「わ、私は……だ、ダイブにほ、惚れていま、す」

「そうか。二人は両想いという訳だな」

お互いがお互いの事をどう思っているのか解かった二人の心は嬉しさと、異性として思われていたという安堵感からホッとした表情になる。

だが、まだ事件を解決していないゼルートの表情は依然として険しいままだ。

「なら……尚更だが、こいつは潰しておいた方が良いと思う」

「ッ……潰すというのは、ダンジョンに一人で置いて行くということか」

「いや、それじゃ生ぬるい。ここまで潜ってるってことは、帰還石を一つぐらいは持ってるだろ。まぁ、奪ってしまえばそれまでなんだが……もっと簡単に言えば、ここで潰す。こ・こ・で、だ」

「…………なるほど、そういう事か」

ゼルートはあえて言葉をストレートに表さなかった。
それでもダイブはゼルートがプイーレをどう処分すべきと考えているのかが解かった。解ってしまった。

「このプイーレがシーラさんを手に入れようと取った方法を考えると、牢にぶち込むだけでは甘い。二人の未来に再び不幸が訪れるかもしれない」

「で、でも……一度自分の罪を理解すれば「シーラさん、仲間を信じたいというその気持ちが悪いとは言いません」ッ……」

淡々と、しかし少々冷たいゼルートの言葉にシーラの方が震える。
シーラの事を脳内お花畑の馬鹿だとは思わない。

ただ、自分の身に起きた事件なので冷静な判断が取れていない。
ゼルートはきっとそうなのだろうと思っている。

(……現に、プイーレを信じようと言葉にしていても、体は震えている。本能は既に判断している……プイーレを許すことも、信じる事も出来ないと)

その本能は仲間を裏切ったという事実にはならない。
そもそも、プイーレが三人を結んでいた仲間という絆と断ち切り裏切ったのだ。

二人が表面は取り繕っても本能では拒否してしまうのは当然の反応だ。

「けれど、プイーレがこういった状況を利用し、尚且つあなたの性格を利用したという流れから考えれば、二人の未来が……そして宝が潰されてしまうかもしれません」

宝、それが何を表しているのか二人だけではなくこの場の全員が理解した。
そして理解してしまった二人の顔は一瞬にしてトマトとの様に赤くなった。

「冗談で言っているつもりはない。本当に……こいつが生きていれば二人の未来が絶望に襲われる可能性がある」

事実として、過去に恋愛が拗れて殺人事件が起こった例がある。
それは今回のパターンと似ており、結果的に復讐関連の事件として世間に知れ渡った。

仮にプイーレがどのような復讐を行うのか、そもそも復讐を行うのかすら現状では断言出来ない。
しかし思い人の優しさに付け込んで襲おうとしたプイーレがこの先も生きていれば、二人に復讐しようと考え、実行する可能性は大いにある。

「……もし、こいつを潰すと二人が決めたのであれば、手続きはこちらで行います」

「ッ!!! いや、それだけは駄目だ!! 君にはシーラを助けてもらった。なのに意味も無い罪を背負わせるなど出来ない!!!!」

「あんたは本当に真面目で良い人だな。でも安心してくれ、二人がこいつが潰れたことでこれからの冒険者生活で不利になることはなく、俺達の冒険が不利になることも無いと約束しよう」

二人を見つめるゼルートの眼はどこまで真剣だった。
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