冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［５５８］何故か下に見る

アホ貴族の子息を追っ払った後、ゼルート達はゆったり楽しく美味い料理を楽しむことができ、そのまま部屋へと向かった。

「はぁーーーーー、美味かった」

「そうね、馬鹿を撃退された後の料理だったから更に美味しく感じたわ」

「それは同感だな。しかし、あんな馬鹿は何処かに行けば必ずいるのだな」

今回ゼルート達に絡んで来たような典型的な貴族の子供は、ルウナの言う通りやはり一定数存在する。
そんな悪い意味で貴族意識の高い馬鹿達にとって、低ランクの冒険者は脅しやすい相手。

だからあの場でゼルートが標的にされるのは必然だったと言える。

「てか、俺は確かにあぁいうおバカに狙われやすいのかもしれないけど、アレナとゲイルに関しては絡まれやすい外見じゃ無いよな」

現在隣の部屋で休息を取っているゲイルの人間態の外見は……厳ついイケメン。
決して気安く近寄れる雰囲気を放っていない。

そしてアレナも歳は二十になり、その見た目は容易に侮られるものでは無い。

「……きっと、冒険者という職業自体を下に見てるんでしょうね」

「えっ、それマジで？　貴族に生まれたなら一生のうちに一回ぐらいは冒険者のことを頼ると思うんだけど」

確かに貴族は護衛やら家族の捜索や必要なマジックアイテムの探索等で冒険者を頼ることが多い。
だが、それは当主になった人間の話。

それ以外の者は、就く職業にもよるが頼らず関わらない生活を送る場合もある。
なので、今回の様に相手が冒険者だからといって嘗めた態度で絡んでくる者が後を絶たない。

「貴族の当主でも、冒険者嫌いはいるのだから……その子供が冒険者を下に見るような性格になってもおかしくは無い。だから私やゲイルが相手でも怯むことは無いのよ」

「あぁ～～～……なるほどね。でも、冒険者だって全員が全員良い奴って訳じゃ無いしな」

それに関しては、冒険者になってから身に染みて解ったゼルート。
宜しく無い人の割合なら、冒険者の方が多いかもしれない。

「それに、普通の冒険者は権力に怯えて子息や令嬢が相手でもビビッて反撃しないものよ」

「つまり俺が例外って訳だろ。それは解ってるよ。ただ……殺されたらどうしようとか思わないもんなのかね。冒険者の中にはそういう頭のネジが外れた奴が少しはいるだろ」

「……まっ、過去にはいたらしいわよ。実際に絡まれた冒険者本人が殺したって……噂だけど、信憑性のある話よ」

「やっぱりそういう事件があってもおかしくないよな。てか、俺の場合は一応貴族の子息なんだから売られた喧嘩を買っても流れ的には当然じゃね？」

ゼルートからすれば、誰であろうと売られた喧嘩は大抵買ってしまう。
勿論最初は暴力無しで解決できれば良いが、大概はそう簡単に上手くいかないのが現実。

「というか、俺の家は皆相手が誰であろうと引かないし……それに、自身より上の爵位を持つ家を三つ食って潰した家だぞ。社交界なら絶対そんな相手に喧嘩売らないだろ」

「その話だけ聞くと、本当に恐ろしいわね。でも、権力を持つ傲慢な人は自分なら大丈夫って思ってるからこそ、ゼルートみたいな型破りな人に潰されるのよ」

「あーーーー、確かにそうだな」

「しかしゼルート、この街で狙ってくる人物が増えたのではないか？　さっきのアホはどう考えてもあのまま引き下がるタイプじゃ無いだろ」

「だろうな。後は……韋駄天のベーザルがリーダーのパーティーと、ダンジョンに入る前に一悶着あった冒険者達か」

冒険者になってから、一番後ろを狙われる時期に突入したかもしれないゼルート。
だが、特に不安感などは抱いていない。

（可能性としてはさっきのアホ貴族が何かを仕掛けてくる……次点にダンジョンに入る前に一悶着あった冒険者か）

貴族は冒険者を下に見ている傾向があるが、相手の力量を読むことが出来ない者や鑑定系のスキルを持っていない者は、相手の強さを見た目で判断する。

なので、韋駄天のベーザルは別だが……ダンジョンの入り口前で揉めた冒険者達はゼルートに負けるとは思っていない。

（ダンジョンの中で襲ってきてくれたら全部事故で済むから、ダンジョンの中で襲撃してくれると有難いんだけどな）

討伐の悩むべき対処は、アホ貴族のみだった。