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少年期[529]浅はかな嫌がらせ

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昼休憩の時間が終わり、午後の部が開始される。
そこでもゼルートは欲しいと思った物があれば落とし、アレナ達が欲しいと思った物も落札していく。

欲しいと思った物は全て落札していくゼルートという強敵が何を狙っているのか察した参加者達は、ゼルートとの勝負を避けるようになった。

どうせ負ける勝負なら最初から競う意味は無い。
頭が回る賢い者はゼルートとの勝負からは即座に降りる。

勿論ゼルートと競り合う事が無駄だと分からない馬鹿もいるので多少の金は掛かる。
しかし前半と比べて明らかに落札するのに必要な金額が下がった。

(賢い人は大体察したみたいだな。俺としては使わなければいけない費用が減るから有難いんだけど)

だが、そんな参加者達の中には前半の部で落札したかった出品物をゼルートに敗れて取られてっしまった者もおり、そのような者達の中で馬鹿が一つ嫌がらせを思いついた。

それはわざと買う気が無いのに金額を吊り上げること。
そうすればゼルートの財布へ大きなダメージになるだろうと思い、それを即座に実行する。

それは確かに有効的な手段だが、そもそもゼルートと競い合おうと思う者が少ないので落札者の声が良く聞こえる。
そしてゼルートはその声からその人物がどの様な事を考えているのか一瞬で見抜いた。

なのである程度の大金までゼルート自身も落札額吊り上げていき、途中で落札するのを止めた。
すると予想を覆された貴族の一人が慌てふためく。
それもその筈であり、現在の落札額はその貴族が持つ自由に使える資産の大半を占める。

払えない額では無いが、貴族の懐に大ダメージなのは間違いない。

(あぁ~~~……はっはっは!! 馬鹿な奴だなぁ~~。そんなに声に汚い笑みが乗っていたら直ぐに気が付くっての)

浅はかな考えを見破られ、逆にしてやられた貴族の顔面は蒼白になり、今にも気を失いそうな状況となっていた。

「普通に無様ね」

「ゼルート相手ならそういう手が通じると思ったのかもしれないな」

「……まっ、俺は貴族界に何度も顔を出したりしてないからな。噂は広まっていたとしても腹芸は全く出来ないと思われてるんだろ」

(ぶっちゃけなところ大した腹芸は出来ないけどな。交渉なんて相手が真っ向な手段で来なかったら殺気で脅すのが一番楽だって思ってるくらいだし)

相変わらずの脳筋だが、ゼルートの戦歴は他社と比べて短いかもしれないが圧倒的に濃い。
なので放たれる殺気も濃密なものであり、体勢が無い者が喰らえばそれだけで自分が貫き通したい考えが出来なくなる。

そしてその一回のやり取りで無駄な嫌がらせが効かないとさずがの馬鹿達も解かり、意味のない嫌がらせをしようという考えは無くなった。

その後もゼルートは今まで通り欲しい物は競り落としていき、最後の最後でゼルートが出品したラッキーティアが現れる。
それを見た観客達の眼の色が一瞬にして変わる。

どれだけの金を出しても手に入れたい。目から、体から欲望が滲みだす。

(ん~~~~……皆さん欲望が丸出し過ぎないか?)

司会者が参加者たちの心を煽るような紹介をし、落札額は今日一高い金貨百五十枚からスタート。
つまり日本円して一億五千万円から始まる。

ラッキーティアの量は大して多く無い。
ゼルートが所有しているラッキーティアの百分の一程度。

しかしそれでもその量で指輪が十個は造ることが出来る。
我こそはと声が上がり続け、落札額が勢い良く高揚していく。

「なぁ……やっぱりこれって異常か?」

「そ、そうねぇ……ちょっと異常じゃないかしら?」

「人の欲望が表に出過ぎている様に思いますね」

ゲイルの言葉に他五人は何度も頷く。
それ程までに参加者達はラッキーティアの出品に興奮しており、何がなんでも手に入れたいという気持ちがある。

(勝手に盛り上がってくれるのは俺的に嬉しいから良いんだけど……お財布の中身は大丈夫なのか?)

午後から最終落札額が下がったお陰でゼルートの財布の中にはまだまだ余裕がある。
ただ、少量をラッキーティアを手に入れる為に大金を出そうといている参加者たちの懐が少々心配になる。

(返金は受け付けるつもりは無いしな。落札が終わってラッキーティアを手に入れた高揚感が収まってからどのような感情に襲われるのか……まっ、それは人それぞれだよな)

多くの参加者達がラッキーティアを我が手にと戦い続けた結果……最終的な落札額は金貨九千八百枚となった。
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