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少年期[509]乗り越え、成長している

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「申し遅れました、僕はロウド・レージスと申します」

「そうか、既に知っているとは思うが、俺がゼルート・ゲインルートだ。ロウド、お前の実力を見せて貰おうか」

戦闘が出来る職員が二人を囲むことで周囲の遊び人の視線が二人の集まるが、二人は既にそんな事は一切気にしておらず、戦う事だけに集中している。

そして合図が無い戦いの中、先に動いたのはロウドだった。
まずは身体強化のスキルを使う事無く斬りかかる。

(へぇ~……中々速いんじゃないのか?)

見た目通りの優男な坊ちゃんという訳では無く、その一撃と動きだけでゼルートはロウドの実力がどれ程のものなのか大体分かった。

上から、横から、斜めから、教科書の様な綺麗な太刀筋でゼルートに連撃を繰り返す。
その太刀筋にアレナも中々のものだと思い、二人の模擬戦に集中して観始める。

(直接ゼルートに話しかけて交渉するだけのことはあるわね。ある程度は強いと思っていたけど、しっかりとした土台もある。悪くないわね)

突然行われた模擬戦に周囲の遊び人は驚くも、その殆どが声を上げることなくその模擬戦から目を動かさない。
普段自分達が観る様な戦いでは無いから? それとも単純にこういった件が珍しいから?

遊び人の多くは戦闘経験が多く、二人の戦いぶりがそれほど珍しいかと言えばそうではない。
だが、今だ一回も攻撃に転じていないゼルートの異質さに殆どの者が気が付いた。

「あの子供は……いったい何者なんだ?」

二人の会話を聞いていなかったものはゼルートが少し前に起こった大乱戦で悪獣を単独で倒したあのゼルートだと知らない。

そんな遊び人達からすれば、エリート教育を受けて来たことが観て解かるロウドの連撃をその場から殆ど動かずに捌き、防いでいる光景が信じがたい。

「いいね、しっかりと努力を積み重ねて来た攻撃だ」

「お褒め言葉、有難う、ございます! しかし、こうも防がれると、自身が、無くなります、ね!!」

「なくす必要はないぞ。ただ、俺の方が魔物や人と戦ってる時間が長かったというだけだ」

その言葉は事実であり、ゼルートの歳は十三に対してロウドは十六。二人の間には三年の差がある。
しかしゼルートが魔物と戦うようになった時期はかなり早く、そして一年の殆どは自分が過ごしたいように過ごしている。

それを考えるとロウドが稽古を行っている時間を考えてもゼルートの方が経験数は長い。

「ロウド、そろそろ身体強化を使え、次は防御面を見させてもらう」

スピードのギアを一段上げたゼルートは防御から一転し、ロウドの斬撃を躱すと腹に蹴りを軽く入れ、攻めへと移る。

体の中にダメージを残す様な攻撃では無く、吹き飛ばす為の蹴りだったので大したダメージは無く動くのに支障は無い。
そしてロウドはゼルートに言われた通り身体強化のスキルを使う。

(なるほどッ! これは確かに使わないと付いて行けないですね!!!!)

ゼルートが身体強化のスキルを使っている様には思えない。
しかしそれでも速度は上がっており、自身が予想していたよりも斬撃は重い。

そこでロウドは自分とゼルートの単純なレベルの差を思い知った。

(確かにあの大乱戦を乗り越え、悪獣を討伐したのならば自分との差は歴然……しかし、これほどまでに差があるとは。なんとも末恐ろしい人だ)

自分が身体強化を使い、本来ならば優位に立てる筈なのだが相手の斬撃を広さいっぱいを使って躱し、防ぐのに精一杯。

これで歳は十三。まだまだ実力が伸びると思うと……誰もがゼルートの将来に畏怖するだろう。
冒険者になりたての頃からゼルートの実力は明らかにベテランの域を超えて達人レベルに達していた。

しかし一年ほど濃い時間を過ごしたゼルートのレベルは更に上がっている。
技術の成長は無くとも単純な力に速さに防御面、そして魔力量は確実に上がっている。

二人の模擬戦、第三者からすれば見た目こそ合わないが、師が弟子に稽古を付けている。
そう見えてもおかしく無い程、二人には身体能力も技術も大きな差が存在していた。
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