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少年期[505]その楽しさは解かった

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SIDE ルウナ

「何と言うか……人間の欲望を集約させたような場所だな」

「腹が膨れれば基本的に問題は無い自分達にとってはあまり解らない欲望だ」

「ゲイルの言う通りね。でも、お母様は慣れれば案外楽しいと言っていましたよ。だから始めれば思いのほか楽しめるかもしれません」

「そういうものか。それなら楽しんでみるのもありか」

ゲイルとしては上手い飯と刺激のある戦闘さえあれば満足。
だが、ラルの母親であるラガールがそう言うのならそれなりに楽しめるのだろうと判断。

「まっ、適当に楽しんでいくとするか」

「そうしましょう」

三人は初めはゼルートとアレナと同じようにルーレットを遊び、次にダイスやブラックジャック、バカラ、ポーカー等を遊んでいく。

最初は何が面白いのか解らなかったルウナとゲイルだが、ゼルートと同じく何故ハマってしまう人がいるのか解ってしまう程度には楽しみを理解した。

だが、ここで一つ問題が起きた。

ルーレットに関しては一つのテーブルに三人とも参加しても結果は大して変わらず勝率高めで終わるのだが、カードに関してはそうもいかない。

三人とも運が上がっており、良いカードが揃う。
しかし三人が一つのテーブルに揃ってしまうと、勝負する形式が多少違えど潰し合う結果になる。
なのでカードで遊び始める時はお互いになるべく離れない位置にあるテーブルに座って遊び始めた。

三人ともポーカーやバカラを始めたあたりから結構ギャンブルを楽しんでいた。
それでもゼルートの様に頭の中は冷静であり、無理に勝ちに行く姿勢は無く、謙虚に……それでも確実に利益を重ねていった。

遂にはチップを収めるケースが一つでは足りなくなる。
チップの桁を変えれば済む話なのだが、一気に大金を賭ける気が無い三人にとってはそんな大金が集約されたチップはいらず、使いやすい値段のチップが欲しかった。

それ故にケースが増えていき、自然と遊び人達の視線が集まる。
その豪運に嫉妬する者は大勢いるが、それを態度に表す者はいない。
イカサマをする者がいれば腕の立つ警備員に連れていかれる。それはこのカジノに通う者達が何度も見た事がある光景。

そんな警備員達が動かないという事は、三人は不正を行っていない。
なので嫉妬や怒りの態度を表に出してもしょうがない。もしかしたら単純にゲームの腕が経つのか幸運の持ち主なのか……どちらにしろ自分達が文句を言ってもどうにかなるものでは無い。

それを理解している紳士淑女達。

だが・・・・・・そんな中に三人の豪運に嫉妬し過ぎて紳士でいられなくなった者が現れた。

「おい小娘、イカサマしてんだろ」

「? いきなりなんですかあなたは。他人を疑うには何かしらの証拠を出して正論を吐かなければいきませんよ」

「ガキのくせに舌が回る奴だな。理由は単純だ、そこまで幸運が続く訳無いんだよ!! イカサマでもしなければな」

確かにラルの、その他四人の勝率は他の遊び人達と比べれば圧倒的なまでに高い。
しかしそれはそこまであり得ない勝率なのかと言えば、本当の遊び人……ギャンブラーなら起こせない勝率では無い。

「あら、もしかしてボロ負けしたんですか? それは単純にあなたに運が無いから……それとも考え無しに馬鹿みたいに賭けるから資金が底を尽いてしまうんですよ。あなたが私に嫉妬してしまうのはあなたが下手だからですよ」

事実は……半分ほどそうでは無い。
ギャンブルに関しては五人とも吸収力が高く、どう賭ければ勝率が高いのかを既に理解しており、それで仮に外れたとしても焦ることは無い。

五人にとって、ギャンブルは本当の意味でただの遊びだからだ。

「もう少しギャンブルを勉強して、紳士になってから出直して来たらどうですか?」

「ッ!!!!! この、クソガキがーーーーーッ!!!!」

男は伯爵家の次男であり、それなりに攻撃魔法が使える。
そしてそれを発動する為に詠唱に入ろうとする。

それを見た周囲の遊び人達は一斉に逃げようと……しなかった。
貴族や商人の全員が全員戦えるわけでは無い。

だが、それでも中にはラルに嫉妬して絡んだ男の様にそこそこの実力を持つ者もいる。
警備員達が取り押さえようとする前に周囲にいた遊び人達が男を取り押さえようと……する前に、一番に動いた男がいた。
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