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少年期[499]ゼルートが欲しかった魔道具

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「本当に見事なまでの大人買いだったわね」

「……確かにそうかもな。でも、オークションで稼げる金額を考えれば全く問題は無い。それに、白金貨って案外盗賊とかがちょいちょい持ってるもんだしな」

「使い道が無いくせに色々と貯めてるからね。それに、ゼルートならダンジョン内でも容易に手に入れられるだろうし」

ダンジョンの中に存在する宝箱の中身はランダム性が高いが、それでも中に何が入っているかはそのダンジョンの階層や難易度によって変わる。

白金貨が当たり前に出てくる階層ともなれば五十層以降は確実、難易度もBランクのモンスターが珍しく無くウロチョロしてる場所になる。

「結局自分の為に使う奴は買わなかったんだな」

「そうだなぁ……特に欲しいって思う奴は無かったからな」

ゼルートとしては前回の大乱戦で倒した悪獣や仲間が討伐したAランクのモンスターの素材や魔石を使って装飾系の装備を新しくしようかと考えている。

ただ、ゼルートは欲しい装飾品が無い訳ではなかった。

「いずれ海にも行ってみたいと思ってるから、潜水の効果が付与されているマジックアイテムが欲しいなって思ってる」

「あぁ~~~……なるほどね。確かに海の中を散策するなら潜水のスキルは必須ね……ルウナは持ってないわよね?」

「あぁ、生まれて深い水に潜った事すらない。だからそもそも泳げるかどうか怪しい」

海という存在には興味があるルウナだが、それでも自身が泳げるかどうか分からないので少し恐怖もある。

「俺は一応持ってるは持ってるけどな」

「えっ、なんで持ってるのよ? ゼルートの実家は海の近くじゃないでしょう」

「いや、それはそうなんだけどさぁ……まっ、色々とやりようはあったんだよ」

創造スキルで巨大なプールを作り出し、満水にしてひたすら泳ぎまくる。
念の為と思い、岩の防壁を作って天井まで塞ぐ。

それだと仲は真っ暗になってしまうが、それも創造スキルでランプを創り出すことで問題は解決する。
そして気が向いた日は何時間も泳ぎ続けた。

しかし普段の訓練や戦いと違い、毎日続けていたわけでは無いのでそれほど練度が高い訳では無い。
つまり、潜水のスキルレベルによって得られる水中でも呼吸出来るという能力にはある程度の時間制限がある。

「ただ、潜水のスキル……それに遊泳スキルもまだ微妙なところだ。だからそれらを補えるマジックアイテムが欲しいと思ってる。まっ、あの店には置いてなかったけど」

「用途が限られているマジックアイテムだからね。あんまり置いている店も多く無いでしょうね。もし、オークションでそれが出品されたら落とすの?」

「そうだな。アレナの言う通り置いてる店は多く無いんだろうし、もし出品されたら落とそうと思ってる。まぁ……呼吸に関しては何とかなる可能性はあるけどな」

「はぁーーー、ゼルートだからもう何やっても驚かないけど……あっ、もしかして風の魔力でなんとかするつもりなのかしら?」

潜水スキルやその効果が付与されている魔道具が無くとも海中での呼吸を何とかする。
それは普通に考えては思い浮かばない技術なのだが、ゼルートならば思いついてしまうのだろうとアレナ達は深く考えるのを止めてしまう。

ただ、今回その手法に関してアレナは何となくだがその方法が分かってしまった。

「良く解ったな。そうだ、風魔法を使えばある程度なんとか出来る。ただ……もし海中で戦闘になれば邪魔になる可能性はあるけどな」

「そ、そう……でも、よくそんな方法が思いついたわね。風魔法を使うのではと思ったけど、実際にどうやって使うのかは分からないし」

「・・・・・・まぁ、普通はそうだろうな」

この世界では人は息をしなければ死ぬ。
それは周知の事実だが、空気中に存在する気体というのは知られていない。

それをゼルートは明確に知ることが出来る、生み出す事も出来る。

「まっ、海に行く前にはしっかりと準備しておかないとな」

「まだまだ先の事でしょうけど、確かに楽しみではあるわね」

「うむ、海のモンスターの肉はどんな味がするのか……それはそれは楽しみだ!!」

楽しみさの違いはあれど、ゲイル達も含めて海への期待値はとても高かった。
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