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少年期[498]冷静に考えれば無理だよね

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「……流石、娯楽が盛んな都市なだけあって品々も良い物ばっかりだ」

「でしょうね。馬鹿な真似をすれば一発でアウトよ。この街に来る客はそこそこ目が肥えているでしょうし。例え鑑定のスキルを持っていなくても気付く人は気付く筈よ」

ゼルート達が入った店はマジックアイテムが売っている店であり、ゴージャルの中でも上の下には当てはまる店だ。
品物全てが上の下という訳では無いが、全体的の品の質を考えれば良質なマジックアイテムが多い。

「これと……これ、後はこれも買うか」

欲しいなと思った品を自作で用意した籠にドンドン入れていくゼルート。
その様子に周囲の客はゼルートが商品を盗もうとしているとは思わないが、あんな子供があれ程の量のマジックアイテムを買えるのか疑問に思ってしまうのは当然の事だろう。

遠慮なく商品を入れていくゼルートにアレナとルウナは全く表情を変えない。
それは自分達のリーダーの懐の温かさ……いや、熱さを知っているからだ。

それでも、一応聞いておかなければならないと思い、尋ねる。

「どんどん籠に入れていくけど、予算とかちゃんと考えてるの?」

「? まぁ……多少はな。でも、ダンジョンでもそう簡単に手に入らない様な物が多いだろ」

「・・・・・・それはそうね」

ダンジョンの攻略経験数だけならばゼルートより長いアレナはどれほど難易度が高いダンジョンで、どれほどの階層ならばどの程度のアイテムが手に入るのか大体ではあるが解かる。

「だろう。それなら金で買えるんだし買っておいた方が良いだろ」

「それはそうだけど……完全に大人買いよね。年齢は子供なのに」

「確かに金はそこそこ飛ぶだろうな」

ゼルートが籠の中に入れていっているマジックアイテムはどれも店の中に置いてある商品の中でも品質が高い物である、ショーケースの中に入っている商品も店員頼んでどんどん籠に入れていく。

「ただ、盗賊団を潰せば大金は手に入るし、ダンジョンに潜ればそんな時間を掛けずに回収出来るだろ」

「それは、基本的に私達だからこそ出来る稼ぎ方よ」

「私もそう思うぞ。ある程度の冒険者を見てきたし、チームを組まなければ平均ラインの冒険者達が一つの盗賊団を潰したり、ダンジョンで日数を掛けずに大金を手に入れることは無理だ」

「……まっ、それは確かにそうだな」

ルウナも冒険者を見て来た数は大してゼルートと変わらないが、自分達がどれ程の戦力を有しているのかは理解している。

「一人ぐらい飛び抜けた力を持った奴がいなけりゃ無理な話か」

「そういう事よ。せめて盗賊全体のレベルと比べて十は差が無いと厳しいわよ。というか……それ、本当に全部買う気? いったい何に使うのよ」

ゼルートの籠は一つから二つに増えており、その籠も腹八分目ぐらい入っていた。
明らかに一人の客が買う量では無い。

現在ゼルートはアレナとルウナの三人で行動しているが、以前にゼルートから質の高いマジックアイテムを貰っており、二人は今の物で満足している。

そしてそれはゼルートも解っている。

「この前はさ、家の人達に武器しか買ってなかったと思ってさ。どうせ今度会うんだし、その時に渡そうと思って」

「あぁ~~~……そういう事ね。納得がいった。でも……それにしても多すぎないかしら?」

ゼルートの実家に滞在した時、アレナはゼルートの領地の兵士達と手合わせをしたことがあるのである程度の人数は覚えている。

なのでその人数よりゼルートが買おうとしているマジックアイテムの方が多いということが分かる。

「俺もそう思う。ただこれは……あれだ、なんとなく」

「なんとなくって……まぁ、別に文句は無いから良いんだけどね」

「ありがと。てかさ・・・・・・なんとなく感じるんだよね。無駄に持っていた方が後々何かに使えるんじゃないかってさ。金は俺らにとってある程度あれば良い物じゃん?」

「ゼルート、それはあれだろ。色んな方面の人に挑発してるように思うんだが」

「私もルウナに同意ね。無駄な喧嘩を売られたくないならもう少し考えて発言した方が良いわよ」

「りょーかい、以後気を付けるよ」

本当にただの勘なのだが、ゼルートとしては有能なマジックアイテムは持っておけば金以上に使える道具になるかもしれないという考えがあった。

その考えが当たるかどうかは全く予想出来ないが、それでもゼルートが言うように二つの籠に大量に積まれているマジックアイテムを一括で買ったとしても、懐には大してダメージは無い。

そう、ゼルート的には大してないのだが・・・・・・。

「ご、合計で……は、白金貨八枚と金貨四十枚となります」

「「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」

あまりにもそのぶっ飛んだ金額に、店員の言葉が耳に入った客が一斉にゼルートの方に顔を向けた。
それほどまで、ゼルートの大したこと無いはそこそこ裕福な者にとっては大した金額である。

「それじゃ、これで丁度だと思うんで」

「えっと……はい、丁度、ですね。有難うございます」

「「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」

それはまた一括で払ったゼルートに対して客達は驚きの表情を一切隠せなかった。
そんな客達の様子にアレナとルウナはその気持ち凄く解りますよ、といった表情で何度も頷く。

「あ、あの、何か箱に入れた方が良いかと思いますが」

「あっ、このままで大丈夫ですよ」

マジックアイテムを素手で掴んだゼルートに店員は慌てて箱に入れた方が良いのではと薦めるが、それを遠慮して全てアイテムリングの中に仕舞っていく。

「よし、もう少し見て回ってから晩飯にするか」

「……そうね、そうしましょう」

「うむ、そうだな。思いっきりガッツリと食べたい気分だ」

アレナは周囲から多くの感情が混ざった視線を浴びたことで少し疲れていたが、ルウナは気にしてもしょうがないと思い、吹っ切っていた。
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