上 下
338 / 1,026
連載

少年期[494]滅多に見れない光景

しおりを挟む
「これまた豪華な場所でオークションをするんだな」

「そうね。もしかしたら元々は舞台に使われている場所かもしれないわね」

「そうなのか? なんでそんな場所でオークションを?」

「オークション専用の建物もあると思うけど、オークションって年に何度も開けるようなものじゃないの。建設に使った費用とか考えるとねぇ……」

豪華な外見に加え、勿論内装も豪華な仕様となっているので、建設には相当な費用が掛かっている。
オークションを行う事で収入があるにはあるのだが、それでもアレナの言う通り何度も開ける内容では無いので、会場は舞台等に使っている場所を使う事が多い。

「なるほどねぇ~~、それならわざわざ会場を造る意味はあんまり無いか」

「そうだと断言は出来ないけどね。その会場を造ったのが貴族であればその貴族が持つ力を他の者に知らしめることが出来る。そういった点に関しては建てる価値があるでしょう」

「……やっぱり貴族とは面倒なんだな」

(元王族であるルウナがそれを言うとちょっと違和感あるよな。まっ、俺もその考えには超賛同するけど)

貴族の子息であるゼルートがそう思っても違和感はあるのだが、二人共貴族王族からは外れた思考を持っている。
なので貴族や王族の様な生活が羨ましいとは全く思っていない。

「さて、とりあえず中に入らないとな」

いきなり入っても良いのだが、もしかしたら許可を取らないとダメかもしれないという場合もあるのでゼルートは入り口で警備として待機している兵士に声を掛ける。

「すいません、今度のオークションで出品したい商品があるんですけど、中に入って大丈夫ですか?」

「あ、あぁ……それは構わないんだが、ここに出品される商品は桁が違うものばかりだから……って、もしかして君は、ゼルートという冒険者で、合っているかな」

「はい、そうですけど……なんで知ってるんですか?」

「君の外見はあまり正確には広まっていないんだけど、仲間の構成は結構広まっているんだよ」

人族の美女と狼人の美少女、そして従魔であるリザードマンの希少種と雷竜の子供に特別な力を持ったスライム。
それが悪獣を単独で倒したゼルートが率いる仲間だと、噂について回っている。

「へぇ~~~、皆は結構知られてるって訳だ」

「どうかしら? 知られてるとはいっても、実力を正確に信じる人はあんまりいないでしょう」

「アレナの言う通りだな。私達はごつい見た目をしてる訳では無いから、嘗めた目で見る者はまだ多い」

ゲイル達のお陰で道中は絡まれることが無かったが、ゲイル達がいなければちょっかいをかけようと考えていた者達は確かにいた。
主にアレナとルウナの容姿の高さに惹かれて。

「そういう奴は話が通じ無かったら拳で分からせたら良いだけだけだ。んで、中に入っても大丈夫なのか?」

「ちょ、ちょっとだけ待ってもらっても良いか」

「あぁ、別に構わないよ」

兵士の一人は会場の中へと入り、人にぶつからない様に速足で支配人の元へと向かう。
そして五分ほどで少々息を切らせながら兵士は戻って来た。

「す、既に鑑定士の方もいますので是非お入りください」

「分かった。あっ、三人とも人の姿になって良いぞ。外でも待ってるのもあれだろうしな」

「かしこまりました」

「ありがとうございます」

「やったーーー!!!」

流石に魔物の姿のまま入るのは宜しく無いだろうと思ったゼルートは三人に人の姿になってくれと伝える。
それを聞いた三人は直ぐに魔物の姿から人の姿へと変化した。

従魔が人の姿に変化する。その光景を見ていた兵士や通行人は開いた口が塞がらない状態になるほど驚き、固まってしまう。

「それじゃ、中に入って良いか?」

「・・・・・・えっ? あ、はい!! ご、ご案内します!!」

ゼルートと対面した時から多少の緊張はあった、現在はそれを余裕で上回る緊張感を抱えながら兵士はゼルート達は鑑定士が待つ場所へと案内する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

とある婚約破棄の顛末

瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。 あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。 まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。