上 下
317 / 1,043
連載

少年期[477]最初から倒すつもりは無い

しおりを挟む
三つの斬撃、そして十の水槍、炎の狼の一斉攻撃に耐えたクイーンエレクトビーの一撃。
しかし攻撃がぶつかり、相殺する瞬間にクイーンエレクトビーはその場から即座に離脱していた。

他の通常種と比べて生存本能が高い。
元々自分の子供を食べ、一時的に威力を上げた攻撃でルウナ達を倒せるとは思っておらず、最強の一撃を放った後にルウナ達の生死を確認せずに逃げるつもりだった。

自分一人が、一体が生きていればどうとでもなる。
だが、自分の子供食べて得た最強の一撃を放ち、最高速度で逃げている今も頭の中から警告音が消えない。
それどころか寧ろ激しくなっている。

「一撃をぶちかました後に即逃げるとは、随分と思いっきりが良いな」

「ッ!!!???」

ありえない、そう思ったと同時に何故頭の中から警告音が消えないのかクイーンエレクトビーは納得した。
四人の中で一番ヤバいと思った相手が付いて来ている。

「だが、私から逃げ切れると思っているなら……ちょっと油断し過ぎじゃ無いか?」

そう一言告げた瞬間に、ルウナの移動速度は一気に増す。
身体強化に脚力強化を重ねた結果、見事にクイーンエレクトビーの意識を掻い潜ることに成功。

「この位置からなら、お前は何も出来ないだろ」

クイーンエレクトビーの真横に並走するルウナ。
咄嗟に横を振り向こうと首を動かそうとする。

この近距離な口から吐き出す麻痺液が外れることは無い。
事実、クイーンエレクトビーの考えは正しく、当たる当たらないだけを考えれば距離的に当たるだろう。

しかし、吐き出せるかどうかはまた話が別であった。

「これで終わりだ、フレイムクロウ!!」

クイーンエレクトビーが首を横に向けるより一歩前に、ルウナの炎爪が振り下ろされる。
体を真っ二つに切り裂かれた、それだけで行動不能にするには十分な一撃。

宙から地面に落ちた体は殆ど動けない状態になっているが、虫系の魔物はしぶといので完全に行動不能にはなっていない。

「もう終わりで良いだろ」

虫系の魔物がしぶといのを事前に知っていたルウナは特に焦ることなく、近くの枝を折って魔力を纏わせ、脳天目掛けて投擲。

相手が反撃出来ず、避ける事も出来ない、そして距離も近い。
この三つの条件が揃っている状況でルウナが投擲を外すわけが無く、見事に枝はクイーンエレクトビーの脳天に突き刺さった。

「エリエット、水を」

遠目からルウナとクイーンエレクトビーの一連の流れを見ていたエリエットは直ぐにその糸をくみ取り、残していた水槍をクイーンエレクトビーに軽くぶつける。

するとルウナの炎爪によって体に付いた日は消え、クイーンエレクトビーの死体が燃え尽きることは無くなった。

「助かったぞエリエット」

「いや、俺はできることをしたまでだ。それに、ルウナがいなければクイーンエレクトビーを逃していた可能性が高い。依頼の対象外とはいえ、良い利益になる。こちらこそ礼を言わせてもらう」

大きな臨時収入が入ったことにエリエットとしても嬉しく、綺麗に頭を下げる。

「いや~~~、煙が晴れた時には結構距離が離れていたからマジで焦りましたけど、ルウナさんがいてくれて本当に助かりました!」

「ジーナの言う通りです。本当にありがとうございました」

ローク達だけではクイーンエレクトビーの一撃を相殺することは出来ても、全速力で逃げるクイーンエレクトビーを仕留める事は不可能。
依頼には関係無いので放っておいても良いのではと思うかもしれないが、それでも毒や麻痺系の攻撃を行う魔物は冒険者にとって厄介な相手なので減らしておくのにこしたことはない。

「まっ、礼は受け取っておこう。それよりもこいつだけは綺麗に解体してしまおうか」

クイーンエレクトビーの解体作業と巣の蜂蜜回収作業に分れ、他の魔物が寄ってくる前に無事に終わらせることに成功し、街へと帰還した。
しおりを挟む
感想 680

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。 貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。 貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。 ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。 「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」 基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。 さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・ タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。