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少年期[457]過去最高であろう額

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「それは有難いのだが……本当に良いのか?」

「はい。流石にこの先の事を考えると全てを出せませんけど、それでもこれぐらいなら」

無理だとは思っていたが、領主の屋敷を守る兵士に領主と会えないかと伝えたところ、ゼルートは運良く面会する事に成功した。
まずは二十分ほど世間話をしていたが、話が一区切りしたところで早速本題に入った。

内容は自費で孤児院への寄付。
それに関してはギルドを通してゼルート以外の余裕のある冒険者達からも度々送られているが、ゼルートが送ろうとしている金額は領主のガレスが数秒ほど固まってしまう程の金額であった。

寄付金額は黒曜金貨二枚。
ガレスが知る限り、過去最高額の寄付金だ。

「そ、そうか。そういえばゼルートはオークションでかなりの大金を儲けたのだったな」

「はい。過去のオークションでかなり儲けさせてもらいました。それに、ダンジョン内で宝箱から得たお金や盗賊が貯め込んでいたお金などもあるので少しぐらい散財しても問題はありません」

過去に実家の兵士達にと大量の性能が高い武器を買い込んだが、それでもゼルートの懐には余裕がある。
そして今回寄付金として黒曜金貨二枚を渡したとしてもそこまで痛くない。

「そうかそうか。やはりダンジョン内で大量の金貨や銀貨を得た時は気分が高揚するものか?」

「……そうですね。宝箱から得られるものは手に入れるまでに冒険してきた努力が詰った物の様な感じです。まぁ、その分外れを引いたときにはショックが大きいと思いますが」

上層であっても中層であっても下層であってもハズレの宝箱は存在する。
ゼルートも少なからずそんな宝箱に当たってしまった事はある。

(俺の場合は懐に余裕があるから全然大丈夫だが、ダンジョン探索をメインに頑張っている冒険者達からすれば天国から一気に地獄まで落とされたようなもんだよな)

「確かにそれは堪えるだろう。とりあえず、約束はしっかりと果たそう」

孤児院の衣食住の強化、スラムの子供達の保護と教育そのた諸々。
ゼルートがガレスに渡した金額を考えれば十年近くは余裕で使い続けられる。

(色々とぶっ飛んだ冒険者だとは思っていたが、俺の想像以上にぶっ飛んだ子だ。まだ十二だろ。自分の為に金を使いたい年頃だと思うのだが……いいや、ゼルートが持つ大金を考えれば本当に大したダメージは無いのか)

自身も孤児院の為に収益からちょいちょい削って孤児院の為に使える金を出していたが、それでも自分の暮らしを大幅に削るほどの金額は出せていない。

(領民がいるからこそ、貴族は不自由無く暮らすことが出来る。それ故に、過ぎた贅沢をすれば今何故自分が生きられているのかという理由を忘れてしまう)

孤児院の者達に関しては九割九分九分九厘ボランティア。
支援したからと言って、必ず何かが自分に返ってくるわけではない。

だがゼルートはその事に関してこの様に考えていた。本気でやったことが無いから解らないのだろうと。

「確かにその通りだ。誰も全力でやったことが無いから自分にどんな利が帰ってくるのか分からない。まぁ……教会の様な糞共もの様にはなりたくないがな」

出身や血統関係無しに子供を集めて育成、洗脳して自分達の都合の良い駒を造る。
そんな行いをしている教会にガレスは吐き気がする。

勿論中には純粋な聖職者もいる。
しかし上に行けば行くほど自分の欲しか考えないゴミ屑共が多い。

「この黒曜金貨二枚……子供達の才能を生かし、自由に生きられる為に使わないとな」

ゼルートが来るまで行っていた仕事を放りだし、重役の家臣達を呼んで緊急会議を開いた。
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