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少年期[453]弱みを入手
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屑豚貴族達を錬金獣を使って始末し終えたゼルートは死体を仮装した後、運ぼうとしていた宝石やマジックアイテム等、馬車も含めてアイテムバッグにしまって街へと戻った。
戻ってからゼルートは直ぐに冒険者ギルドに向かい、事情を知っているギルド職員に話を通してギルドマスターの仕事部屋に入る。
「もしかしてだが、もう終わったのか」
「はい、もう終わりました。特に強い奴はいなかったんで」
ゼルートの得意な雷魔法の攻撃速度に反応出来る者は一人もおらず、耐性を持つ者もいなかったので仕事自体は楽なものだった。
「一応豚が乗っていた馬車は回収したんですけど、何かに使いますか?」
「はっはっは、君も中々容赦無いな。いや、馬車は破棄して欲しい。金遣いが荒い者の馬車などは特徴的だからね」
「なるほど、解りました」
仮にゼルートがその馬車を使おうものなら、自分が屑豚貴族を殺したと宣言しているようなもの。
そういった場面が見つかれば、頭が回る者ならそう時間を掛けずにゼルートに指示を送った者が誰なのか分かってしまう。
「それと、やっぱりこれを持ってました」
「あぁ、有難う。これがあれば、向こうも容易に非難したり攻撃を仕掛けてくることは出来ない筈だ」
ゼルートが渡したのは数枚の書類。
それは屑豚貴族だけではなく、屑豚貴族がダンジョンの宝箱から得た物を取引していた貴族の弱みとなる書類。
「いまあの屑の屋敷も調査中だ。これが全てかもしれないが、叩けばホコリが出てくる可能性は十分にある」
「咳き込む程に出てきそうですね。あと、あいつが持って逃げようとしていた宝石や魔道具の類はどうしますか? 俺としてはギルドマスターに渡しても構いませんが」
街に被害は出ていないが、何かしら金が必要ならば屑豚が持っていた物を渡しても構わない。
だがそれをギルドマスターは受け取らず、ゼルートが持っているべきだと伝える。
「それは追加報酬と思ってくれて構わない。それに、あの貴族が住んでいた屋敷の使用人達に退職金などを渡しても十分にギルドの財産は潤う。手に入れた宝石や魔道具は好きなように使ってくれ」
「分かりました。それならお言葉に甘えて自由に使わせてもらいます」
魔道具は使用用途によって多くの場面で役立つ。
しかし宝石に関してはどういった場面で使えば良いのか思いつかない。
(金はあるだけあっても不必要にはならない。装飾品とかには興味ないからやっぱり売ってしまうのが一番良いのか?)
いざという時に大金が必要になるかもしれない。
しかしその時にどれだけの金が必要になるのかは予測しようがない。
(あの時みたいに規模がデカいオークションでもあれば金は減るけど……いや、その為に別の街に行ってみるのもありだな)
次の目標が決まったゼルートは表情に若干変化があったが、ギルドマスターはそこを指摘せずにゼルートに伝えたかったことを話す。
「話は変わるがゼルート君。もし良かったらだが、Cランクへ昇格しないか?」
「昇格試験を受ける、では無くですか?」
「そうだ。ハッキリ言えば、君はCランクの昇格試験など受ける必要が無い程に実力が高い。本来ならばBやAに昇格出来るレベルなのだが、流石にそれは他の面々から文句が飛んでくるのでな」
(でしょうね。まだ冒険者になって一年も経ってない奴がそんな簡単にポンポン上げたら知らないところで嫉妬を買ってしまうだろう)
ゼルートの考えは正しく、過去にはゼルートの様に短期間の内にランクアップした者はいるが、その者の性格や容姿にもよるが総じて同年代のルーキーからは嫉妬の対象になっていた。
「ただ、Cランクまでならギルドマスターの推薦と高ランク冒険者の推薦があれば問題無いが、どうする?」
ギルドマスターの表情を見て、ゼルートは自分が出す答えをこの人は何となく分かってるんだなと察する。
「俺は今のところDランクで満足してるので今回のランクアップは遠慮しておきます」
「そうか……まぁ、君はまだまだ若い。確かに急ぎ足過ぎるのも良くないだろう」
ギルドマスターとの話はこの二件で終わり、報酬である白金貨を受け取ったゼルートはラームとの約束を果たすべく高級レストランへと向かう。
戻ってからゼルートは直ぐに冒険者ギルドに向かい、事情を知っているギルド職員に話を通してギルドマスターの仕事部屋に入る。
「もしかしてだが、もう終わったのか」
「はい、もう終わりました。特に強い奴はいなかったんで」
ゼルートの得意な雷魔法の攻撃速度に反応出来る者は一人もおらず、耐性を持つ者もいなかったので仕事自体は楽なものだった。
「一応豚が乗っていた馬車は回収したんですけど、何かに使いますか?」
「はっはっは、君も中々容赦無いな。いや、馬車は破棄して欲しい。金遣いが荒い者の馬車などは特徴的だからね」
「なるほど、解りました」
仮にゼルートがその馬車を使おうものなら、自分が屑豚貴族を殺したと宣言しているようなもの。
そういった場面が見つかれば、頭が回る者ならそう時間を掛けずにゼルートに指示を送った者が誰なのか分かってしまう。
「それと、やっぱりこれを持ってました」
「あぁ、有難う。これがあれば、向こうも容易に非難したり攻撃を仕掛けてくることは出来ない筈だ」
ゼルートが渡したのは数枚の書類。
それは屑豚貴族だけではなく、屑豚貴族がダンジョンの宝箱から得た物を取引していた貴族の弱みとなる書類。
「いまあの屑の屋敷も調査中だ。これが全てかもしれないが、叩けばホコリが出てくる可能性は十分にある」
「咳き込む程に出てきそうですね。あと、あいつが持って逃げようとしていた宝石や魔道具の類はどうしますか? 俺としてはギルドマスターに渡しても構いませんが」
街に被害は出ていないが、何かしら金が必要ならば屑豚が持っていた物を渡しても構わない。
だがそれをギルドマスターは受け取らず、ゼルートが持っているべきだと伝える。
「それは追加報酬と思ってくれて構わない。それに、あの貴族が住んでいた屋敷の使用人達に退職金などを渡しても十分にギルドの財産は潤う。手に入れた宝石や魔道具は好きなように使ってくれ」
「分かりました。それならお言葉に甘えて自由に使わせてもらいます」
魔道具は使用用途によって多くの場面で役立つ。
しかし宝石に関してはどういった場面で使えば良いのか思いつかない。
(金はあるだけあっても不必要にはならない。装飾品とかには興味ないからやっぱり売ってしまうのが一番良いのか?)
いざという時に大金が必要になるかもしれない。
しかしその時にどれだけの金が必要になるのかは予測しようがない。
(あの時みたいに規模がデカいオークションでもあれば金は減るけど……いや、その為に別の街に行ってみるのもありだな)
次の目標が決まったゼルートは表情に若干変化があったが、ギルドマスターはそこを指摘せずにゼルートに伝えたかったことを話す。
「話は変わるがゼルート君。もし良かったらだが、Cランクへ昇格しないか?」
「昇格試験を受ける、では無くですか?」
「そうだ。ハッキリ言えば、君はCランクの昇格試験など受ける必要が無い程に実力が高い。本来ならばBやAに昇格出来るレベルなのだが、流石にそれは他の面々から文句が飛んでくるのでな」
(でしょうね。まだ冒険者になって一年も経ってない奴がそんな簡単にポンポン上げたら知らないところで嫉妬を買ってしまうだろう)
ゼルートの考えは正しく、過去にはゼルートの様に短期間の内にランクアップした者はいるが、その者の性格や容姿にもよるが総じて同年代のルーキーからは嫉妬の対象になっていた。
「ただ、Cランクまでならギルドマスターの推薦と高ランク冒険者の推薦があれば問題無いが、どうする?」
ギルドマスターの表情を見て、ゼルートは自分が出す答えをこの人は何となく分かってるんだなと察する。
「俺は今のところDランクで満足してるので今回のランクアップは遠慮しておきます」
「そうか……まぁ、君はまだまだ若い。確かに急ぎ足過ぎるのも良くないだろう」
ギルドマスターとの話はこの二件で終わり、報酬である白金貨を受け取ったゼルートはラームとの約束を果たすべく高級レストランへと向かう。
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