上 下
266 / 1,043
連載

少年期[427]そう見えてるのか

しおりを挟む
「ゼルート、もしあなたを馬鹿にするような冒険者がいたらどうするの?」

「バカにしてくるだけなら放っておく。戦いに参加するなとか言ってくるようなら戦って解らせる。それが一番手っ取り早いだろ」

「ゼルートの言う通りだな。私も同じことをすると断言できる!!!」

ルウナは特に頭が回らないので、とりあえず挑発して摸擬戦に持ち込めれば最善だと考えている。

「はぁーーー・・・・・・本来なら頭を悩ます解決方法だけれど、時間が無い今はそれが一番の解決策ね」

「だろ。というか、後でゲイル達もいるって解ればなおさら参加するなと言えないだろ」

「でもゲイル達だけ戦いに参加してゼルートは参加するなって言いそうなお馬鹿さんがいるかもしれないじゃない」

「かもしれないな。ただ、そこまでの阿呆がいれば俺じゃなくてグレイスさんが対処してくれる筈だ」

グレイスは今回ドーウルスからやって来た冒険者達のまとめ役であり、そういった場面では自ら前に出て対処しなければならない。

そしてグレイス程長くAランク冒険者として活動している者なら発言力も高い。

(Aランク冒険者同士であっても、喧嘩を売りたいとは思わないだろ。もしこんな状況でそんな事をする奴なら正真正銘の阿呆だ)

流石にそこまで自己中な冒険者はいないだろうと思いながら冒険者ギルドの中へ入り、受付嬢に待ち合わせの場所へと案内される。

「おう、来たな。こっちに座れ」

先に来ていたグレイスに手招きをされてゼルート達はグレイスとコーネリアの傍に座る

机は円型に並べられており、今回の討伐に参加する者すべてが座っている訳では無く、後方で待機している者もいる。

「はっはっは、やっぱり注目されてるな」

「注目というか、何だこいつはって視線を向けられているだけだと思うんですけどね」

居心地の悪い視線がゼルートに突き刺さる。
ルウナとアレナに関しては欲に塗れた視線がへばり付く。

「こいつら・・・・・・本当に戦う気があるのか?」

「それは有る筈よ。この場にいるんだから。でも男の冒険者にとってそんな事は関係無いのよ」

同じような視線を何度も受けた事があるアレナは男はやっぱり阿呆だなと思いながら視線を受け流しながら、この中にどれほど本物と呼べる実力者がいるのか確認する。

(考え丸解りの視線を向けてくる馬鹿達も一般的な強さを持つ冒険者と比べたら十分に使える実力は持っているのね。その中でも、跳び抜けた実力を持っているのは・・・・・・五人ぐらいかしら?)

人族が三人に、獣人族が一人とエルフが一人。
おそらくパーティーの中でリーダーを務めているか、エースであろう人物。

その五人と同じパーティーに所属しているメンバーはゼルートの実力を見抜けなかったり、アレナとルウナに色欲が混ざった視線を向けている者もいるが、その五人は別だった。

(ゼルートを侮った目で見ていない時点である程度信用出来る。だからといってパーティーメンバーまで信用は出来ないけど)

冒険者達が一丸となって戦わなければならい状況で、私利私欲の為に同業者を乱戦の中で狙う真性の屑が世の中には一定数いる。

時間までの間、ゼルートとルウナもアレナと同様にこいつは信用出来るなという人物を探していた。

そして全員が時間内に集まり、ギルドマスターが司会を務めて作戦会議に入ろうとする。
が、やはりと言うべきかゼルートの実力を見た目で判断した冒険者がギルドマスターに発言の許可を得てからゼルートを指さして発現する。

「俺はそこに座っているガキが今回の討伐に相応しい実力を持っているとは思えない。保護者がいないと何も出来ないガキが何か出来る場所じゃないんだからな」

男の言葉に同意する多数の冒険者がそうだそうだと、声には出さないが何度も頷く。

しかしゼルートにはそんな連中の事など視界に入っておらず、グレイスとコーネリアと目を見合わせ、同時に噴き出して笑ってしまった。
しおりを挟む
感想 680

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。