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少年期[411]予想していたのと違った
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「お待ちしておりましたゼルート様、アレナ様、ルウナ様。奥にルミイル様がおります。付いて来てください」
「分りました」
ルミイルの部屋で待っていたメイドの後に付いて行き、テラスへと向かう。
(物凄い鉄仮面を被ってるような表情が動かない人だな)
初対面のメイドに対し、ゼルートはそんな感想を抱く。
(まっ、王女の傍にいるメイドがあんまり感情の浮き沈みが激しい人では駄目、なのかもしれないな。あと、絶対に強いよなあのメイドさん)
勝手に鑑定眼を使った場合、どんな眼で見られ小言を言われるかわかったものでは無いので鑑定眼を使って調べなかった。
だがそれでも王女を守るに相応しい実力を持つことは雰囲気から理解出来る。
そして扉が開かれ、遂にルミイルと対面するゼルート達。
「お久しぶりですね、ゼルート」
「どうも、お久しぶりですルミイル様」
「本当に久しぶりですね。ささ、座ってください」
ルミイルに急かされて一目で高級な代物だと解る椅子に座るゼルート。
(べ、別に大して重くないからバキッと壊れたりしないよな)
ゼルートの体重を考えればまずあり得ない出来事だが、それでもそんな事を考えてしまうぐらいゼルートは緊張している。
椅子に恐る恐る座るゼルートだが、アレナとルウナは椅子に座ろうとせず後ろに立つ。
「? どうしたんだよ二人共」
用意された椅子は三つ。ゼルートとアレナとルウナに用意された物なので二人が座ることに何ら問題は無い。
それは二人も解っているのだが、それでもゼルートの後ろに立った。
「いや、ゼルートは私達のリーダーだからあれだけど元々私は無関係な人間だったわけだし」
「私は何となくこうした方が良いと思ったからだ」
「そ、そうか。いやでも折角椅子を用意してくれてるんだしさ」
ゼルートがチラッとルミイルに視線を送ると勿論といった表情で返す。
「何も問題は無いので座ってください。お二人も客人なんですから」
王女様にそう言われたのだから二人が椅子に座る事は完全に無礼な行為では無くなった。
しかしそれでも二人は躊躇ってしまう。
そこで二人はルミイルの後ろに立っている二人のメイドに視線を向けた。
向けられた視線の意味を直ぐに理解したメイド達は表情を笑顔に変えて頷く。
そしてようやく二人は椅子にゆっくりと腰を下ろす。
「さて、三人とも何かお好みの紅茶はありますか?」
「いえ、自分は特にありません。二人はなにかあったりするか?」
「偶に飲むけど、特に好みは無いわね」
「私もだ」
三人とも紅茶を飲む機会はあまり無く、好みがあると飲み物は果実水ぐらいだった。
「それではシェリー、あなたの腕に任せます」
「かしこまりました」
「キャル、お菓子を持って来て」
「はい!! 少々お待ちくださいませ」
人族のメイド、シェリーは一切音を立てる事無く紅茶を淹れていく。
そして猫人族のメイドであるキャルは早足で調理場へと向かう。
「それにしても、礼服姿でお越しになったのですね」
「流石にルミイル様に何時もの格好で合うのは良くないと思ったので、王都の店で礼服を数着ほど買いました」
「中々似合っていますよ。ただ少し気になるのですが、何故アレナさんとルウナさんも男性用の礼服を着ているのでしょうか?」
「自分も試着が終わった後に同じように尋ねたのですが、男性用の礼服の方が動きやすいという理由からだそうです」
女性用の礼服を着るのが嫌だという訳では無いのだが、それでも何が起こるかわからない文字通り未知の場所であり、個人の誘いであるので男性用の礼服でも構わないだろうというのがアレナの結論。
ルウナも似たような考えであるが、やはり単純に男性用の礼服の方が動きやすいというのがルウナの中で一番のメリットだった。
「そうなのですか。お二人共ゼルートの事を大切に思っているのですね」
「ゼルートに一度終わりかけた人生を救って貰った身ですので、せめて何時でも共に戦える格好でいようと」
「アレナと同じく人生を救われた身だ、です。それにゼルートには一般的には考えられない程世話になっている、ので」
いつもの癖が抜けないルウナは何とか言葉を敬語に直そうとするが、中々上手くいかない。
ただその言葉遣いにルミイルは笑顔で無理する必要は無いと伝える。
「いつも通りの言葉遣いで大丈夫ですよ。私は全く気にしないので」
「・・・・・・わかった。そうさせて貰う」
「はい。もっと楽にしてください。それで、ゼルートが今まで体験した冒険を聞かせて貰っても良いですか?」
「勿論です。そうですねぇ・・・・・・それではまずオークとゴブリンの大群を相手にした時の冒険から」
あたかもその場所にいる様な感覚になる様にゼルートはルミイルに自身の冒険を伝える。
「分りました」
ルミイルの部屋で待っていたメイドの後に付いて行き、テラスへと向かう。
(物凄い鉄仮面を被ってるような表情が動かない人だな)
初対面のメイドに対し、ゼルートはそんな感想を抱く。
(まっ、王女の傍にいるメイドがあんまり感情の浮き沈みが激しい人では駄目、なのかもしれないな。あと、絶対に強いよなあのメイドさん)
勝手に鑑定眼を使った場合、どんな眼で見られ小言を言われるかわかったものでは無いので鑑定眼を使って調べなかった。
だがそれでも王女を守るに相応しい実力を持つことは雰囲気から理解出来る。
そして扉が開かれ、遂にルミイルと対面するゼルート達。
「お久しぶりですね、ゼルート」
「どうも、お久しぶりですルミイル様」
「本当に久しぶりですね。ささ、座ってください」
ルミイルに急かされて一目で高級な代物だと解る椅子に座るゼルート。
(べ、別に大して重くないからバキッと壊れたりしないよな)
ゼルートの体重を考えればまずあり得ない出来事だが、それでもそんな事を考えてしまうぐらいゼルートは緊張している。
椅子に恐る恐る座るゼルートだが、アレナとルウナは椅子に座ろうとせず後ろに立つ。
「? どうしたんだよ二人共」
用意された椅子は三つ。ゼルートとアレナとルウナに用意された物なので二人が座ることに何ら問題は無い。
それは二人も解っているのだが、それでもゼルートの後ろに立った。
「いや、ゼルートは私達のリーダーだからあれだけど元々私は無関係な人間だったわけだし」
「私は何となくこうした方が良いと思ったからだ」
「そ、そうか。いやでも折角椅子を用意してくれてるんだしさ」
ゼルートがチラッとルミイルに視線を送ると勿論といった表情で返す。
「何も問題は無いので座ってください。お二人も客人なんですから」
王女様にそう言われたのだから二人が椅子に座る事は完全に無礼な行為では無くなった。
しかしそれでも二人は躊躇ってしまう。
そこで二人はルミイルの後ろに立っている二人のメイドに視線を向けた。
向けられた視線の意味を直ぐに理解したメイド達は表情を笑顔に変えて頷く。
そしてようやく二人は椅子にゆっくりと腰を下ろす。
「さて、三人とも何かお好みの紅茶はありますか?」
「いえ、自分は特にありません。二人はなにかあったりするか?」
「偶に飲むけど、特に好みは無いわね」
「私もだ」
三人とも紅茶を飲む機会はあまり無く、好みがあると飲み物は果実水ぐらいだった。
「それではシェリー、あなたの腕に任せます」
「かしこまりました」
「キャル、お菓子を持って来て」
「はい!! 少々お待ちくださいませ」
人族のメイド、シェリーは一切音を立てる事無く紅茶を淹れていく。
そして猫人族のメイドであるキャルは早足で調理場へと向かう。
「それにしても、礼服姿でお越しになったのですね」
「流石にルミイル様に何時もの格好で合うのは良くないと思ったので、王都の店で礼服を数着ほど買いました」
「中々似合っていますよ。ただ少し気になるのですが、何故アレナさんとルウナさんも男性用の礼服を着ているのでしょうか?」
「自分も試着が終わった後に同じように尋ねたのですが、男性用の礼服の方が動きやすいという理由からだそうです」
女性用の礼服を着るのが嫌だという訳では無いのだが、それでも何が起こるかわからない文字通り未知の場所であり、個人の誘いであるので男性用の礼服でも構わないだろうというのがアレナの結論。
ルウナも似たような考えであるが、やはり単純に男性用の礼服の方が動きやすいというのがルウナの中で一番のメリットだった。
「そうなのですか。お二人共ゼルートの事を大切に思っているのですね」
「ゼルートに一度終わりかけた人生を救って貰った身ですので、せめて何時でも共に戦える格好でいようと」
「アレナと同じく人生を救われた身だ、です。それにゼルートには一般的には考えられない程世話になっている、ので」
いつもの癖が抜けないルウナは何とか言葉を敬語に直そうとするが、中々上手くいかない。
ただその言葉遣いにルミイルは笑顔で無理する必要は無いと伝える。
「いつも通りの言葉遣いで大丈夫ですよ。私は全く気にしないので」
「・・・・・・わかった。そうさせて貰う」
「はい。もっと楽にしてください。それで、ゼルートが今まで体験した冒険を聞かせて貰っても良いですか?」
「勿論です。そうですねぇ・・・・・・それではまずオークとゴブリンの大群を相手にした時の冒険から」
あたかもその場所にいる様な感覚になる様にゼルートはルミイルに自身の冒険を伝える。
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