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少年期[409]虐めたい訳じゃ無い

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「なるほどなぁ・・・・・・何というか、執念の籠った一撃って感じだったな。ルウナが言いたかったことが何となく解った。他の種族より戦いで負けたくないってプライドが人一倍強い」

「まぁ、それは人によると思うがな。ただ、元々の身体能力が高く努力を怠らない者は余計に負けられないというプライドが高くなるだろう。それに、今回の戦いは他人の強さを証明する為の戦いでもあった。ディリア程の強者ならばそのプレッシャーに折れる事無く力に変えることが出来る」

「最後の一連に関してはフーラがまだまだ未熟だったって事もあるけれど、あの一撃に対して咄嗟に反応して防いだのは見事だった。最後の一撃も中々の威力だったしね」

仲間からポーションを飲ませて貰った事で傷は治ったが、ディリアの崩拳によりフーラのあばら骨は粉々にされていた。
それでも内臓への損傷は少なかったので仲間の手持ちのポーションで大事にならなかった。

周囲の興奮は未だに冷めず、冒険者達の喧騒は静まらない。
ただ元々決闘へ発展した内容を思い出した冒険者の言葉から次第にその話題が広まる。

今回の決闘をその内容に直結すれば、赤竜の宴のクランリーダーよりも強獣の精鋭のクランリーダーの方がタイマンでは強いという結論になる。

その話題が耳に入った赤竜の宴のメンバーは苦い表情になり、フーラに至っては手から血が流れるほど拳を握りしめている。

そこでゼルートは決闘が始まる前に二人を煽る様に頼んだ冒険者に声を掛ける。

「ねぇ、おっちゃん」

「おっ、坊主か。俺達の予想通りディリアの奴が勝ちやがったな。いやぁーーー中々見ごたえのある戦いだったぜ!! あんな試合を見れて金まで手に入るんだから今日は何て幸運なんだろうな」

「あぁーーーー・・・・・・確かにそれはそうだな。俺も幸運な日だと思うよ。それで、もう一仕事して欲しんだ。・・・・・・って事を言ってくれればいいんだ」

ゼルートの手で輝く銀貨一枚を見ると、冒険者の目がキラリとひかって直ぐに提案に乗る。

「それは確かに事実だから、おっちゃんに任せとけ!!」

ゼルートから銀貨を受け取った冒険者は先程まで話していた仲間の元へ戻り、周囲へ少し響く様な声で話す。

「今回の戦いって人族と獣人族だったろ。種族の差を云々っていう訳じゃねぇーーけどさ、やっぱりクランリーダーの二人だって獣人と竜人なんだから戦ったらどっちが勝つかなんて結局解んなくね?」

最もな内容。
そう、最もな内容なのだが決闘を行う前にゼルートとシーナの時の様に代理決闘という形になったので、勝利したディリアが所属する強獣の精鋭のクランリーダーの方が強いと興奮状態故に錯覚している者が多くいた。

しかし一人の冒険者の言葉によって全員我に返り、今度は単純に二人が戦えばどちらが勝つのかという話に変わった。

「ゼルート、あなたは結局どうしたかったの?」

「あのフーラって奴は前店で会った時に俺を完全に下に見てたから一度痛い目に合えば良いって思ってた。でも別に虐めたい訳じゃ無いからな。これであいつが自分を責め続けて冒険者を辞めたみたいな話を聞いたらちょっとなぁ・・・・・・まっ、そんなもん自己責任だから本当は俺が気にする必要は無いんだけどな」

「簡単に言えば、今回の決闘で結果的にフーラが負けたから気は済んだ。だから自分を責めない様に周囲の雰囲気を変えたという事か」

「そういう事。ただ、全員が全員今回の言い合いが戦いに変わった理由を忘れることは無いだろうから、無事に終わるかどうかまでは知らん」

そこは完全に自分が気にする必要は無いとゼルートは思っている。

そして賭けに勝ったゼルート達は賭け金と勝ち分を回収すると直ぐにギルドを出て行った。
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