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少年期[402]初知り
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「なるほど。確かにここは私達が来るのにぴったりな店ね」
「外見はそこそこ豪華だが、それでも私達が来るのにぴったりの店なのか?」
店の外見のせいで、ルウナはどうしても冒険者が利用する様な店には見えなかった。
「ここは冒険者や騎士等の戦闘にも耐えられる礼服を売っている店なのよ。しっかりとした正装でいなければならない場で戦闘が起こらないとは断言出来ないでしょ。だからそういった時の為にも安心して戦える礼服を造っている店なのよ」
「そうなのか。騎士も来るならこういった外装でも可笑しくは無いか」
疑問が解けたところで三人は店の中へと入る。
内装は外装に負けず劣らず豪華であり、床は塵一つないと思える程に綺麗にされている。
「この手紙を見せれば良い待遇をしてくれるってワッシュが言っていたな」
手が空いている従業員に声をかけ、ゼルートはワッシュから渡された手紙を渡す。
何の手紙か全く解らない従業員は一先ず断る事無く、手紙を読み始める。
手紙を読む顔から徐々に汗が流れだし、読み終えた従業員はゼルートに少々待ってくれと伝え、どこかへ走り出してしまう。
「従業員が店の中をあんな速さで走って良いのかよ」
「誰にも当たらず走ってるのだからあれがいつも通りなんじゃないの?」
「いや、あんな表情で店の中を走ることはそうそうないんじゃないか?」
ルウナの言葉は正しく、ゼルートから手紙を受け取った従業員はこの店で働き始めてから初めてトップギアで店内を走った。
そして三分もしない内に初老の男性が早足でゼルートの元へやって来る。
後ろに付いていた報告を行った従業員は初老の男性に一礼をしてから仕事へ戻る。
「待たせてしまって申し訳ない、私はゾルド。この店のオーナーだ。君たちがワッシュの今の主人だね」
「「いえいえ、この人が主人です」」
「声を合わせて答えるな」
間違ってはいないのだが、ゼルート的にはそういった意識を持っていので主人という言い方はやめて欲しかった。
「君の噂は聞いているよ。オークキングを単独で倒したり、昨日はこの王都最強のDランク冒険者のシーナを相手に完勝したとか」
「一番目の噂が広がっているのはわかりますけど、なんで二番目の噂が昨日の今日で広まっているんですか」
「私は過去に冒険者として活動していた事があったからな。今はもう殆ど引退したようなものだがね。さて、私の過去なんてのはどうでも良い。今日はオーダーメイドでは無く、現在ある礼服を買うという事で良いのだな」
「はい。値段はこれぐらいで」
指で六十の形をつくり、ゾルドに予算を伝える。
「ほぅ~~~。流石屋敷を持つ冒険者は懐が違うな。それではこちらに来てくれ」
ゼルート達は別室に案内され、まずは体のサイズを従業員に測られる。
そして数着の礼服を従業員が持って来て、値段と服に使われている素材と効果を伝える。
魔物の素材や鉱石を糸に変える事が出来ると知らなかったゼルートはテンションが上がりながら礼服に着替えた。
「へぇーーー、結構着心地が良いな。堅苦しく感じないし、ある程度動きやすい」
「動きやすさを重視した礼服ですからね。無茶な動きをしても基本的に破れる事は無いかと。それと、耐斬撃、魔法の効果もありますので、戦いの最中にそう簡単に服が斬れたり燃えることはありません」
「それは凄いな」
ゼルートは確かめるように礼服を触る。
(・・・・・・うん、中々良い。確か魔物の素材を糸に変えるには錬金術のスキルがあればいいんだよな)
自分でも頑丈な服が造れるかもしれない。
そう思ったゼルートだが、裁縫を一度もしたことが無いのを思い出す。
(そんな直ぐに出来る様な技術じゃないのは確かだよな・・・・・・造るのは諦めよう)
「外見はそこそこ豪華だが、それでも私達が来るのにぴったりの店なのか?」
店の外見のせいで、ルウナはどうしても冒険者が利用する様な店には見えなかった。
「ここは冒険者や騎士等の戦闘にも耐えられる礼服を売っている店なのよ。しっかりとした正装でいなければならない場で戦闘が起こらないとは断言出来ないでしょ。だからそういった時の為にも安心して戦える礼服を造っている店なのよ」
「そうなのか。騎士も来るならこういった外装でも可笑しくは無いか」
疑問が解けたところで三人は店の中へと入る。
内装は外装に負けず劣らず豪華であり、床は塵一つないと思える程に綺麗にされている。
「この手紙を見せれば良い待遇をしてくれるってワッシュが言っていたな」
手が空いている従業員に声をかけ、ゼルートはワッシュから渡された手紙を渡す。
何の手紙か全く解らない従業員は一先ず断る事無く、手紙を読み始める。
手紙を読む顔から徐々に汗が流れだし、読み終えた従業員はゼルートに少々待ってくれと伝え、どこかへ走り出してしまう。
「従業員が店の中をあんな速さで走って良いのかよ」
「誰にも当たらず走ってるのだからあれがいつも通りなんじゃないの?」
「いや、あんな表情で店の中を走ることはそうそうないんじゃないか?」
ルウナの言葉は正しく、ゼルートから手紙を受け取った従業員はこの店で働き始めてから初めてトップギアで店内を走った。
そして三分もしない内に初老の男性が早足でゼルートの元へやって来る。
後ろに付いていた報告を行った従業員は初老の男性に一礼をしてから仕事へ戻る。
「待たせてしまって申し訳ない、私はゾルド。この店のオーナーだ。君たちがワッシュの今の主人だね」
「「いえいえ、この人が主人です」」
「声を合わせて答えるな」
間違ってはいないのだが、ゼルート的にはそういった意識を持っていので主人という言い方はやめて欲しかった。
「君の噂は聞いているよ。オークキングを単独で倒したり、昨日はこの王都最強のDランク冒険者のシーナを相手に完勝したとか」
「一番目の噂が広がっているのはわかりますけど、なんで二番目の噂が昨日の今日で広まっているんですか」
「私は過去に冒険者として活動していた事があったからな。今はもう殆ど引退したようなものだがね。さて、私の過去なんてのはどうでも良い。今日はオーダーメイドでは無く、現在ある礼服を買うという事で良いのだな」
「はい。値段はこれぐらいで」
指で六十の形をつくり、ゾルドに予算を伝える。
「ほぅ~~~。流石屋敷を持つ冒険者は懐が違うな。それではこちらに来てくれ」
ゼルート達は別室に案内され、まずは体のサイズを従業員に測られる。
そして数着の礼服を従業員が持って来て、値段と服に使われている素材と効果を伝える。
魔物の素材や鉱石を糸に変える事が出来ると知らなかったゼルートはテンションが上がりながら礼服に着替えた。
「へぇーーー、結構着心地が良いな。堅苦しく感じないし、ある程度動きやすい」
「動きやすさを重視した礼服ですからね。無茶な動きをしても基本的に破れる事は無いかと。それと、耐斬撃、魔法の効果もありますので、戦いの最中にそう簡単に服が斬れたり燃えることはありません」
「それは凄いな」
ゼルートは確かめるように礼服を触る。
(・・・・・・うん、中々良い。確か魔物の素材を糸に変えるには錬金術のスキルがあればいいんだよな)
自分でも頑丈な服が造れるかもしれない。
そう思ったゼルートだが、裁縫を一度もしたことが無いのを思い出す。
(そんな直ぐに出来る様な技術じゃないのは確かだよな・・・・・・造るのは諦めよう)
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