241 / 1,071
連載
少年期[402]初知り
しおりを挟む
「なるほど。確かにここは私達が来るのにぴったりな店ね」
「外見はそこそこ豪華だが、それでも私達が来るのにぴったりの店なのか?」
店の外見のせいで、ルウナはどうしても冒険者が利用する様な店には見えなかった。
「ここは冒険者や騎士等の戦闘にも耐えられる礼服を売っている店なのよ。しっかりとした正装でいなければならない場で戦闘が起こらないとは断言出来ないでしょ。だからそういった時の為にも安心して戦える礼服を造っている店なのよ」
「そうなのか。騎士も来るならこういった外装でも可笑しくは無いか」
疑問が解けたところで三人は店の中へと入る。
内装は外装に負けず劣らず豪華であり、床は塵一つないと思える程に綺麗にされている。
「この手紙を見せれば良い待遇をしてくれるってワッシュが言っていたな」
手が空いている従業員に声をかけ、ゼルートはワッシュから渡された手紙を渡す。
何の手紙か全く解らない従業員は一先ず断る事無く、手紙を読み始める。
手紙を読む顔から徐々に汗が流れだし、読み終えた従業員はゼルートに少々待ってくれと伝え、どこかへ走り出してしまう。
「従業員が店の中をあんな速さで走って良いのかよ」
「誰にも当たらず走ってるのだからあれがいつも通りなんじゃないの?」
「いや、あんな表情で店の中を走ることはそうそうないんじゃないか?」
ルウナの言葉は正しく、ゼルートから手紙を受け取った従業員はこの店で働き始めてから初めてトップギアで店内を走った。
そして三分もしない内に初老の男性が早足でゼルートの元へやって来る。
後ろに付いていた報告を行った従業員は初老の男性に一礼をしてから仕事へ戻る。
「待たせてしまって申し訳ない、私はゾルド。この店のオーナーだ。君たちがワッシュの今の主人だね」
「「いえいえ、この人が主人です」」
「声を合わせて答えるな」
間違ってはいないのだが、ゼルート的にはそういった意識を持っていので主人という言い方はやめて欲しかった。
「君の噂は聞いているよ。オークキングを単独で倒したり、昨日はこの王都最強のDランク冒険者のシーナを相手に完勝したとか」
「一番目の噂が広がっているのはわかりますけど、なんで二番目の噂が昨日の今日で広まっているんですか」
「私は過去に冒険者として活動していた事があったからな。今はもう殆ど引退したようなものだがね。さて、私の過去なんてのはどうでも良い。今日はオーダーメイドでは無く、現在ある礼服を買うという事で良いのだな」
「はい。値段はこれぐらいで」
指で六十の形をつくり、ゾルドに予算を伝える。
「ほぅ~~~。流石屋敷を持つ冒険者は懐が違うな。それではこちらに来てくれ」
ゼルート達は別室に案内され、まずは体のサイズを従業員に測られる。
そして数着の礼服を従業員が持って来て、値段と服に使われている素材と効果を伝える。
魔物の素材や鉱石を糸に変える事が出来ると知らなかったゼルートはテンションが上がりながら礼服に着替えた。
「へぇーーー、結構着心地が良いな。堅苦しく感じないし、ある程度動きやすい」
「動きやすさを重視した礼服ですからね。無茶な動きをしても基本的に破れる事は無いかと。それと、耐斬撃、魔法の効果もありますので、戦いの最中にそう簡単に服が斬れたり燃えることはありません」
「それは凄いな」
ゼルートは確かめるように礼服を触る。
(・・・・・・うん、中々良い。確か魔物の素材を糸に変えるには錬金術のスキルがあればいいんだよな)
自分でも頑丈な服が造れるかもしれない。
そう思ったゼルートだが、裁縫を一度もしたことが無いのを思い出す。
(そんな直ぐに出来る様な技術じゃないのは確かだよな・・・・・・造るのは諦めよう)
「外見はそこそこ豪華だが、それでも私達が来るのにぴったりの店なのか?」
店の外見のせいで、ルウナはどうしても冒険者が利用する様な店には見えなかった。
「ここは冒険者や騎士等の戦闘にも耐えられる礼服を売っている店なのよ。しっかりとした正装でいなければならない場で戦闘が起こらないとは断言出来ないでしょ。だからそういった時の為にも安心して戦える礼服を造っている店なのよ」
「そうなのか。騎士も来るならこういった外装でも可笑しくは無いか」
疑問が解けたところで三人は店の中へと入る。
内装は外装に負けず劣らず豪華であり、床は塵一つないと思える程に綺麗にされている。
「この手紙を見せれば良い待遇をしてくれるってワッシュが言っていたな」
手が空いている従業員に声をかけ、ゼルートはワッシュから渡された手紙を渡す。
何の手紙か全く解らない従業員は一先ず断る事無く、手紙を読み始める。
手紙を読む顔から徐々に汗が流れだし、読み終えた従業員はゼルートに少々待ってくれと伝え、どこかへ走り出してしまう。
「従業員が店の中をあんな速さで走って良いのかよ」
「誰にも当たらず走ってるのだからあれがいつも通りなんじゃないの?」
「いや、あんな表情で店の中を走ることはそうそうないんじゃないか?」
ルウナの言葉は正しく、ゼルートから手紙を受け取った従業員はこの店で働き始めてから初めてトップギアで店内を走った。
そして三分もしない内に初老の男性が早足でゼルートの元へやって来る。
後ろに付いていた報告を行った従業員は初老の男性に一礼をしてから仕事へ戻る。
「待たせてしまって申し訳ない、私はゾルド。この店のオーナーだ。君たちがワッシュの今の主人だね」
「「いえいえ、この人が主人です」」
「声を合わせて答えるな」
間違ってはいないのだが、ゼルート的にはそういった意識を持っていので主人という言い方はやめて欲しかった。
「君の噂は聞いているよ。オークキングを単独で倒したり、昨日はこの王都最強のDランク冒険者のシーナを相手に完勝したとか」
「一番目の噂が広がっているのはわかりますけど、なんで二番目の噂が昨日の今日で広まっているんですか」
「私は過去に冒険者として活動していた事があったからな。今はもう殆ど引退したようなものだがね。さて、私の過去なんてのはどうでも良い。今日はオーダーメイドでは無く、現在ある礼服を買うという事で良いのだな」
「はい。値段はこれぐらいで」
指で六十の形をつくり、ゾルドに予算を伝える。
「ほぅ~~~。流石屋敷を持つ冒険者は懐が違うな。それではこちらに来てくれ」
ゼルート達は別室に案内され、まずは体のサイズを従業員に測られる。
そして数着の礼服を従業員が持って来て、値段と服に使われている素材と効果を伝える。
魔物の素材や鉱石を糸に変える事が出来ると知らなかったゼルートはテンションが上がりながら礼服に着替えた。
「へぇーーー、結構着心地が良いな。堅苦しく感じないし、ある程度動きやすい」
「動きやすさを重視した礼服ですからね。無茶な動きをしても基本的に破れる事は無いかと。それと、耐斬撃、魔法の効果もありますので、戦いの最中にそう簡単に服が斬れたり燃えることはありません」
「それは凄いな」
ゼルートは確かめるように礼服を触る。
(・・・・・・うん、中々良い。確か魔物の素材を糸に変えるには錬金術のスキルがあればいいんだよな)
自分でも頑丈な服が造れるかもしれない。
そう思ったゼルートだが、裁縫を一度もしたことが無いのを思い出す。
(そんな直ぐに出来る様な技術じゃないのは確かだよな・・・・・・造るのは諦めよう)
78
お気に入りに追加
9,038
あなたにおすすめの小説

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…

英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。