冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［３９９］認められず、解ろうともしない

クランをつくれば他のクランへの勧誘が無くなる。
その話はゼルートにとってそこそこ魅力的な話ではあった。

（一般的な冒険者にとっては有難い話なのかもしれないけど、俺にとっては面倒事に発展するかもしれない話だからな。ライオットさんの話に一理ある)

しかしゼルートはクランをつくったとしても、勧誘以外の面倒事が必然的にやって来ると思った。

「俺は面倒事が話し合いで解決するのが一番良いとは思いますけど、余り頭が良くなくちょっと短気なんで口より先に拳が出るかもしれないんです」

「そうかそうか。その気持ちは解らなくもない。俺もそういった気持ちになる時が今より若い頃は多かったからな。何度もクランの参謀を務めてくれている者に注意されたか」

ゼルートが自分と同じような性格にライオットは思わず笑いながらも納得してしまう。

(人族や獣人族の年齢で言えば反抗期に入る年齢とはいえ、今よりも幼い頃から危ない賭けを行うような考えを持っているんだ。その時から成長しているとはいえ、まだまだ尖っている部分が削られて丸くなる事は無いだろう。寧ろこれから更に尖り続けるだろう。そしてゼルートにおそらくどんな相手でもとは言わないが、大抵の相手であれば文字通り捻じ伏せる事が出来る)

鑑定系のスキルを使った訳では無いが、ゼルートが先程の決闘では見せていない手札がまだまだあるとライオットは見抜く。

(なるべくゼルートとは良好な友好関係を築いておきたいものだ)

降りかかるかもしれないデメリットを考えても、ライオットはゼルートと同盟といった形で関係を築きたいと考えている。

こうしてゼルート達三人とライオットとの軽食会は終わり、屋敷へと帰る。
すると執事やメイド達はバタバタと動き回っていた。

何をしているのかとゼルートが一人の執事を尋ねると、ゼルートが代理決闘に勝った祝勝会をするらしい。
それを聞いてゼルートは嬉しく思ったが、夕食をレイリアとクライレットと一緒に食べる約束をしていたので、どう答えればいいか迷う。

しかしそれを見越していた執事長のワッシュが既に二人に話を付けに言っていたらしく、時間になればレイリアとクライレットとは屋敷に来ると伝えられた。

そして三人は準備が整うまで部屋にいて欲しいと頼まれた。

「屋敷に帰るまでにライオットさんと軽食を食べながら話をしていたから少し間があったけど、情報が伝わるのはいくら何でも速過ぎないか？」

「確かにそうかもしれないけど、やりようは幾らでもある筈よ。それにゼルートが決闘を終えてから帰ってくるまでの時間を考えれば、既に食材の用意はしてあったんじゃないかしら？」

「アレナの言う通りかもしれないな。それにゼルートが勝つと確信しており、仕込みに時間が掛かる料理は朝から始めていたかもしれない」

「そ、そうか」

(嬉しいのはやっぱり嬉しいが、もしも俺が負けるという可能性は考えなかったのだろうか)

今回の代理決闘で戦ったシーナは自分と同じＤランクの冒険者だが、その実力は既にＣランクの域に達している。
なので、シーナ以上の枠に収まらない冒険者が来ないとは言い切れない。

だが、屋敷の従者たちはゼルートの噂話を信用しており、ルウナとの摸擬戦を見ている者も多いので、誰一人としてゼルートの勝利を疑う従者はいなかった。

「それにしてもクランねぇ・・・・・・私は悪い案だとは思わないけど」

「私は良く解らんから何とも言えない」

「俺は反対かな。ライオットさんと会話してる時に行ったけど、絶対に口より先に手が先に出る」

ゼルートはそれを自信もって宣言出来た。
勿論、本当に最初から手を出す訳では無い。
しかし相手が上手い事悪事を隠し通そうとすれば、必ず物理的に潰す。

「確かに今すぐつくるのは良くないと思うけど、ゼルートが冒険者としての実績を積んで強い後ろ盾を手に入れれば馬鹿な事をする相手はいないんじゃないかしら？」

「そんな訳無いだろ。認めたくない事実は頭が解っていても心は解ろうとしない。だから馬鹿で阿呆な権力者がいるんだよ。その子供もな」

「ふふ、説得力のある言葉ね。確かに、それを考えるとつくらない方が得策かしら」

その通りだと言わんばかりにゼルートは大きく頷いた。
そして時間は過ぎ、レイリアとクライレットが屋敷へとやって来た。