上 下
236 / 1,026
連載

少年期[397]その情報だけでも

しおりを挟む
決闘が終わり、一旦レイリアとクライレットと別れて学園を出ようとしたところでゼルート達はある一団に呼び留められる。

それはゼルートと先程まで戦っていたシーナが所属する強獣の精鋭のメンバーだった。
しかも先頭にはクランのトップまでいる。

突然声を掛けられたゼルートだが、自身に声を掛けて来た理由は何となくだがもう解っていた。
だが、本題に入る前にクランリーダーである獅子の獣人、ライオットは離す場所を変えないかと提案する。

決闘が終わった後、夕方まで特に用事の無いゼルートはその提案に乗った。

「ゆっくりくつろいでくれ」

やって来た場所は王都の中でも超が五つほど付く高級レストランだった。
そんな場所に予約なしでやって来たソウスケ達だったが、ライオットが従業員に個室へ案内するように伝える。
この時、ライオットの後ろの付いていたクランの幹部たちはライオットに先に帰ってろと言われ、不満をブ―ブ―と垂れながらも帰って行ったので、今はゼルートを含めて四人しかいない。

即座に案内され、個室へ入るとそこは貴族専用とは言っても過言では無い程、豪華な個室だった。
そこで軽い軽食ではあるのだが、そんな言葉で表せない程に高級な食材が使われた料理がやって来る。

因みにゼルート達は通常量の食事は遠慮したので軽食だが、ライオットはがっつり料理を頼んでいた。

「一応自己紹介をしておこう。強獣の精鋭のクランリーダーをしているライオットだ。今日は突然の誘いに乗ってくれ、感謝している」

ライオットの自己紹介の後にゼルート達も自己紹介を済ませ、本題に入る。

「まぁーーーあれだ!! とりあえず聞いておくが、俺達のクランに入るつもりはあるか?」

「お誘いは嬉しいんですが、今のところクランには入らず自由に動きたいので断らせて貰います」

「うん、そうだよな。しかし一瞬の間も置かず断られるとはな」

はっはっは!!! と豪快に解らないがライオットはステーキに噛り付く。

「まっ、赤竜の宴からの勧誘を断った時点で俺の誘いからも断られるのは解っていたがな」

「その事、もう知ってるんですか!?」

「王都内で起こったそういう情報は直ぐに耳に入る。クランという組織に身を置いていれば大抵の情報は鮮度が良い状態でやって来る。そして今回の出来事でお前がオークキングを一人で倒したという噂に確信を得られた。それも大きな情報だ」

自身がオークキングを単独で倒した事が大きな情報。
その言葉の意味をゼルートは理解できていない。

「解らないって顔をしているな。冒険者の噂ってのは半分ぐらいが信用ならないものばかりなんだ。単純にモンスターを倒した戦績や、盗賊団を倒した戦績に、戦争で活躍した戦績。それらは信用出来る物が多いが、中には噂が独り歩きしている物もある。あと、冒険者個人に関しての噂。これは大した野心も無い人の才や努力を妬む事しか出来ないカスが真実とは真逆の事を言いふらして噂となる事が多い。そういう奴に限って何故か人脈が広かったりする」

どこからか出て来た根も葉もない噂に精神的に参ってしまい、冒険者を辞めて故郷に戻ったルーキーなどは珍しくない。

「俺のクランにもそういった過去を持つ奴は何人かいる。基本的には俺達がスカウトした連中が殆どだ。一応スカウトする際にはそいつの過去をサラッと調べてから行ってる。っと、話が逸れて来た。とりあえずお前がランクに合わない実力を持っていると解った事は、クランにとって有難い情報なんだ。何かしらの件でお前に指名依頼を出す事があるかもしれない」

「そ、そうですか。特に予定の無い時期なら受けさせて貰います」

「ああ、その時は是非頼らせて貰う。 おっと、そう言えば一つ言い忘れたいな。今回の決闘でシーナに勝ってくれて有難う」

「へ?? ど、どうも???」

理解出来ない礼の言葉にゼルートは反射的に返してしまう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。