冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［３８３］この兄にして妹あり

「どうだゼルート、学校の料理も中々美味いだろ」

「そうだね。流石貴族の学校で出される料理だけあって美味い。上品な味だ」

食べられる量よりも味に拘って作った料理。
基本的に庶民派の舌を持つゼルートだが、それでもお高く纏まった料理が嫌いな訳では無い。

アレナとルウナも味に文句を言うどころか美味しそうな表情をして食べている。

（にしても、随分と周りから視線を向けられている気がするんだが、俺の気のせいか？)

「もしかし周囲の視線が気になるの？」

ゼルートが周囲を気にしながら食べているのに気が付いたレイリア。
それにクライレットも気が付き、苦笑いしながら答える。

「僕達は同学年の間では少し目立っているからね」

「そうよ。まっ、きっかけになった原因は二人共同じなんだけどね」

「・・・・・・・・・・・・婚約者がいる生徒が二人に異性として好意的な感情を持ち、それに気が付いた婚約者が二人に決闘を挑んだ。そんなところ？」

ドンピシャな回答を答えたゼルート。
アレナとルウナはまさかそんな事は無いだろう、と思ったがゼルートの兄姉ならあり得ると思った。

「流石ゼルート、文句なしの大正解よ」

「笑顔で言うような事では無いぞレイリア。お前、確か伯爵家の令嬢を魔法を使わずに素手でボコボコにして倒しただろう、ある貴族の令嬢がお前に非は無いと証明してくれたから良かったものを」

「クライレット兄さんだって同じようなものじゃない。相手の侯爵家の男を剣だけで圧勝したくせに」

この兄にしてこの妹あり。
そう言える二人であり、それはゼルートに当てはまる。

(俺はまだそういった婚約騒動？　的な物に巻き込まれた事は無いから分らんが、当事者にとっては良い迷惑ってもんだ。それに兄さんと姉さんに決闘を申し込んだ二人も全て悪いとは言えない。まっ、二人がハンデをつけてボコボコにするって事はそれなりに口や態度が悪い奴だったかもしれないけどな)

一番悪いのは婚約者がいるのにもかかわらず、他の男や女に好意を抱き、それを実行しようとした者。
正確に内容を知らないゼルートは客観的にそう思えた。

「・・・・・・二人共、学校を卒業したらどうするの？」

「「冒険者になる」」

ハモリながら答える二人。
アレナとルウナはもうそのような答えを聞いて驚かなくなった。

ゼルートもだろうなと思っている。
二人が学校を卒業してから規律がある面倒な場所や相手の家に嫁ぐ、そんな事がある訳無い。
弟とであるゼルートは二人の考えが変わっていない事に安心し、表情が緩む。

(兄さんはクールな見た目だけど、結構面倒な上下関係な規律を嫌うタイプ。レイリア姉さんに関しては正直将来の旦那さんを見つけた方が良いのではと思っているんだけど・・・・・・そんな事はまだ十年ぐらい先か)

ゼルートもまだおじさんになりたくは無いのでまだレイリアに結婚して欲しくない部分はあった。

「それで、レイリア姉さんに婚約を迫った伯爵家の坊ちゃんはどんな奴なんだ？」

「どんな奴って言われてもねぇ・・・・・・武器の腕は普通。魔法の腕は伯爵家だからある程度の腕はあるけど、それでも平均より少し高いぐらいじゃないかしら？　武器は槍を使ってどっかの流派を使っているらしいけど、同学年で同じ流派を使っていてそいつより強い奴がるから興味ゼロね」

「あぁ、なるほど。それは確かにレイリア姉さんにとって興味も魅力もゼロだね」

レイリアは基本的に男の顔はそこまで重視しない。
顔は良ければそれは蟻だなと思っている程度にしか気にしてない。

そして財力。これもレイリアにとってはあるに越した事は無いかなといった程度。
無くても卒業して冒険者になってから一緒に稼げば良いと考えている。

「そういう事よ。けどまっ、実家はそこそこ金を持っているから王都でトップクラスのＤランク冒険者を連れてくるんじゃないかしら」

「なるほど。つか、レイリア姉さんは全く心配してないんだね」

「ゼルートが戦う事に関しては全く心配してないに決まってるじゃない。心配するとすればあの馬鹿が暗殺者を雇うかどうかぐらいよ」

「伯爵家の子息とは言っても所詮は子供だ。そこまで動かせる大金は持っていないだろう。特別な人脈があるとも聞かない。決闘に関してもゼルートが本気を出せば圧勝で終わる」

弟が同ランクの冒険者に負けるとは一切思っていない二人。
アレナとルウナはゼルートの強さを傍で見ているので二人の気持ちが良く解った。

「ゼルートも折角予定より速く王都に来たんだったら観光して決闘の日まで存分に楽しみなさい！！！　あっ、二日後は私と兄さんも空いてるからその日は五人と三体？　で遊びましょう」

勝手に予定を決められたゼルートだが、兄や姉と長く話す事はあっても出かける事は殆ど無かったので有難い提案だった。