冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［３７９］良質なベッド

のぼせる前にゼルートは風呂から上がり、自室へと戻る。

「ふぅーーーー。風の魔力に少し火の魔力を込めて手のひらから温風を出せるから髪はしっかりと乾かせるけど、これならドライヤーを造った方が楽かもな」

自身の力で髪を乾かしてきたので気にしていなかったが、アレナに教えるとかなり苦戦していたのを思い出し、錬金術でそれらしいのを造ろうかと考える。

内容自体がそこまで難しい物では無く、素材も大したものは要らないので最低限の腕があればどんな錬金術師でも造れるだろうとゼルートは思っている。

（またフーデルさんに権利を売ろうかな。あの人に恩を売っておけば後々良い事ありそうだし)

最初こそ自分を子供だからと侮っていたフーデルだが、それ以降は良好な関係を気付けているため、ゼルートとしては権利を売る事に抵抗は無い。

「つか・・・・・・やっぱり広いよな。俺の実家の部屋より数倍広い」

部屋が広い事が悪いとは思わないが、それでも少し寂しく感じてしまうゼルート。
だが既に精神年齢は二十を余裕で超えているため、使える家具を残しておいたお陰で手に入れた良質なベッドに身を任せる。

「さて、もう寝るか」

速い時間に寝るのも慣れたゼルートは風呂に入った事で体が暖まった影響もあり、直ぐに眠りに落ちた。

ゼルートが寝た後、まだ起きていたアレナとルウナがゼルートの部屋に入ろうとしたが、メイドからゼルートはもう寝たと聞きいた。

「今日のゼルートは何時もより寝るのが早かったわね」

「風呂でぐっすりとリラックス出来たからじゃないか？　私も正直あのベッドなら横になればいつの間にか寝ていそうな気がする」

「確かに貴族、それも侯爵家が使うベッドなだけあって物凄い寝心地が良さそうだしねぇ・・・・・・それならリバーシで三本勝負をしてから寝ましょう」

「それはありだが、アレナは強いからなぁ・・・・・・」

アレナとの戦績はあまり勝率が高くないルウナだが、楽しい事に変わりはないので直ぐに三本勝負を始めた。
結果は・・・・・・終わった面だけで言えば圧勝では無いが。それでもアレナの三縦でルウナの完敗に終わった。

翌日、朝食を終えたゼルート達はクライレットとレイリアが通う学校へと向かう。

「・・・・・・店の外装がさっきまでの通りと比べて派手になってきた気がするんだが」

「気のせいでは無いわ。貴族街程では無いけれど、ゼルートのお兄さんとお姉さんが通う学校が近くなってきているから、必然的にこの辺りの店には貴族の学生が来るんじゃないかしら？」

「そういう事か、それなら納得だ。ま、俺としてはあまり関わりたくない場所って事だな」

兄と姉が通う学校に向かったとしても、そこで他の学生に関わる気は全くない。
寧ろゼルートとしてはクライレットとレイリアとの会話が終われば直ぐに学校周辺から抜け出したいと思っている。

「さて、見えて来たんだが・・・・・・これまたデカいな」

「そうだな。やはり基本的に学校というにはデカいものなのか？」

「街によって差はあるけれど、やっぱりそこそこの土地を持っているし、校舎もある程度の大きさはあるわね。それが王都、しかも貴族が通う学校となれば他の学校より大きいのも仕方ないんものよ」

一つの街に拠点を置かず、色々な街で活動していたアレナは目の前の大きさ程の学校を見るのは初めてだが、冒険者や貴族の学校を見た事が無い訳では無いのでそれほど驚く事では無かった。

学校の前へたどり着き、ゼルートは警備兵に自分がここに来た要件をギルドカードを渡しながら伝えた。
するとゼルートが近々学校に来ることは知らされていたようで警備兵はダッシュで確認しに行き、ダッシュでゼルート達の元へ戻って来た。

そしてゼルートはやって来た若い男性の教師に案内され、客室へと向かう。