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少年期[363]三つの屋敷

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「ねぇ、ゼルート君。良かったら今度臨時講師として内の学校に来ない?」

「突然の誘いですねフーリアさん」

森の中での休憩中にフーリアは何時でも構わないので自身が就任している学校で臨時講師をしないかとゼルートを誘う。

「そうでもないわ。皆で話し合った結果よ。ゼルート君は勿論ルウナちゃんやアレナ達、それにゲイル達を臨時の教師として招けば生徒達に良い刺激になるだろうってね」

「臨時の教師ですか・・・・・・それってどれぐらいの期間の話ですか?」

まだ完全に行くと決めた訳では無いが、それでもゼルートは招かれる場合にどれ程の期間を臨時教師として働くのか気になった。

「基本的には一カ月のから二カ月の間ね。勿論その間給料は支払うし、宿もご飯も学校が負担する」

「へぇーーー・・・・・・それは普通に考えれば至れ尽くせりな環境ですね。でも、俺の場合は王都に一応家があるんですよね」

「そうなの? もしかしてゼルート君の家って分家なの?」

「そういう訳じゃないです。冒険者から成り上がったグレイスさんとコーネリアさんの仲間で友人です」

サラッとゼルートが喋った情報にミルシェを除く生徒達がグレイスの方に確認するように顔を向ける。

「ゼルートの言った事は本当だぞ。こいつの両親は俺と同じAランクの冒険者だった。ちなみに二人の親は普通の一般人だ」

ゼルートの祖父母は普通の農民だったので今でもゼルートの父親が治める土地で元気に畑を耕し果物や野菜を育てている。
ゼルートもまだ実家に住んでいた時に訓練を速く切り上げ、帰りに家に寄って会話を楽しんでいた。

(懐かしいなぁーーー。父さんの方のお爺ちゃんお婆ちゃんは見るからに元気一杯!! って感じで母さんの方のお爺ちゃんお婆ちゃんは優しくて穏やかな雰囲気を醸し出してるんだよな。共通点は二人共俺や兄さん姉さん妹に優しいって事だな)

だからといって自身の息子娘に厳しいのかといえばそんな事は無い。
ゼルートは祖父が言えに泊まりに来て両親と酒を飲みながら楽しそうに話しているのを何度も見た事がある。

「しっかしなんで王都に家なんて・・・・・・・・・・・・あぁーーーー!! なるほど、あの一件で手に入れた家と言うか屋敷か」

「そうです。その屋敷があるんで家には問題ないです」

(ちなみに三つあるから侯爵家の屋敷だけそのままにして子爵家の屋敷二つは売るのもありかもしれないな)

しかし今後何かしらの利用価値はあるかもしれない為、王都に行った時にすぐ売るのは止めようと判断した。

「・・・・・・あまり詳しくは訊かないでおく。それで、臨時講師の件だけど受けてくれる?」

フーリアの言葉にゼルートは直ぐには頷かなかった。

(俺が講師・・・・・・無茶苦茶似合わないな。こんな子供が教師とか・・・・・・絶対にダメだろ。第一に生徒が納得しない。いや、そこは今回みたいに実力差を見せつければ良い話か。けど、俺が冒険者の事をそんな教えられるほど経験を得ている訳でもないしな)

今回の依頼の最中にそれらしい話を生徒達にしているが、それでもこの場面ならこうした方が良いだろうとという予測が大半。
なのでゼルートとしてはせめて一年間は冒険者として活動してからならその依頼を受けても良いという結論に至った。

「この依頼が終わった後にすぐってには無理ですけど、もう少し俺が冒険者として経験を積んでからなら良いですよ」

「そう、なら少しの間楽しみに待ってるわ」

「ゼルートが講師か・・・・・・ルウナちゃんもやりそうだが、うっかり手加減を忘れて生徒の心とプライドをボロボロの粉々に砕いてやるのだけは止めてやれよ」

「大怪我をしない様にしっかりと手加減はしますけど、心やプライドが崩れるかどうかはそいつの精神力次第ですよ」

ゼルートだって講師として生徒を鍛えるならしっかりと少しでも成長出来るように指導したいと思っているが、初めに力の差を解らせるための摸擬戦で意気消沈されてもそのメンタルケアまでは仕事の範囲外だと思った。
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