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少年期[358]勇気と無謀

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順調に演習が終わり、懐中時計で時間を確認したゼルート達は街へ戻る。
そして全員が戻ってきた中で、ルウナとゲイルにダンと教師二名が護衛として演習に付き添っていた班が傷は無いが防具は所々傷ついており、疲労の色が見えた。

「ゲイル、ルウナ。いったい何があった」

「昼過ぎ頃にオルトロスと遭遇しました」

「ッ!!!! ま、マジでか・・・・・・とりあえず討伐には成功したんだな」

ランクBに位置する魔物との戦いをルウナとゲイルが見逃すとは思えなかったゼルートは二人がオルトロスを討伐したと確信していた。

(ゲイルはそこまで表情を崩している訳じゃないが、それでも嬉しそうだ。ルウナに関しては満足そうな表情を隠す様子もない)

ゼルートの予想通り、二人共ランクBの魔物と戦えてとてもご満悦だった。

「ロックパンサーの時より心が躍る戦いだったぞ。まぁ・・・・・・約一名阿呆がいたけどな」

ルウナは呆れた表情でダンの方に顔を向け、ダンはルウナから顔を逸らして悔しそうに握りこぶしを作り、砕けるのではないのかと思う程強く歯を噛みしめていた。

その流れからゼルートは何があったかを察し、ダンに対して怒りが沸き上がって来た。

「おいダン、お前え・・・・・・自分が名にしたか解ってんのかよ」

「ッ!!!! ならお前はオルトロスをそのままにして良かったと思うのかよ!!!! あんな奴が街に向かえば被害は尋常じゃない、それに他の冒険者に被害が及ぶのは確実だ!!!」

ダンが言っている事は間違ってはいない。間違ってはいないが・・・・・・それでも弾が挑める相手では無かった。

「お前が言ってることは正しいよ。でもなぁ・・・・・・お前程度の実力じゃどうしようもできない相手だろ」

「ッ――――!! て、テメェ!!!!「事実だろうが!!!!!」ふざっ・・・・・・」

ゼルートからの突然の一喝にダンの一瞬で気圧される。

「ルウナやゲイルが真剣に戦って満足できる相手ってのはそういうレベルなんだよ。お前の今日の仕事はなんだ!! 生徒を守る事だろうが!!!! その上でルウナとゲイルにはオルトロスを討伐できる力があった」

声を荒げながらゼルートはダンに近づき、胸ぐらを掴み持ち上げる。

「弱いお前がしゃしゃって良い場面じゃねぇーーんだよ!!!! 一緒にいたガストが勇気と無謀を履き違えるような真似をしたのか!!! あぁ!!??」

黙ったまま何も言わないダン。
それが答えであり、ガストは一歩でも兄に追いつきたい思い胸にしまい、無茶な特攻はしなかった。
追いつきたい兄がいる。偉大なAランク冒険者の父がいる。自分よりも年下なのに自分では倒す事が出来ない魔物を倒せる後輩の冒険者がいる。自分より後から入学して来た後輩にも関わらずこちらに一切敬語を使わないが、そんな態度を取るだけの実力を持つ者がいる。

状況は似たようなものにも関わらず、ガストは正確に状況を判断した。
だがダンは野心が暴走し、無謀な行動を起こした。

「お前が俺の事を気に入らなく嫌ってるのは知ってるよ。グレイスさんの様に強い冒険者になりたいのもな。けどなぁ・・・・・・今のお前はそのグレイスさん顔を汚してるって自覚してんのか。お前が・・・・・・お前自身があこがれ続けている人の面子を潰してんだぞ!!!! それが解ってのかッ!!!!!!」

「・・・・・・お、俺は・・・・・・俺はただ・・・・・・」

ダンがもう自分に言い返す気力が残っていない事が分かったゼルートはダンを地面に投げつける。

「冒険者としての役目を忘れるなら・・・・・・さっさと辞めちまえ。誰かを殺してしまう前にな」
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