上 下
195 / 1,049
連載

少年期[356]見本になるような

しおりを挟む
「ちっ! 手数が多いな、おい!!」

無数に迫り来る風の刃に対してゼルートも無数の斬撃で返す。

グリーンマンティスは風の刃に対して切断力のみを重視しているため、ゼルートの斬撃で余裕に相殺する事が出来る。
しかしその分魔力の消費量が少ないため中々攻撃がやまない。

(俺に当たっても正直そこまで大したダメージにはならないけど、生徒達やミルシェさん達にとっては無視して良い攻撃じゃないしな)

『僕も手伝った方が良いかな?』

『・・・・・・いや、ラームは左右と後方の警戒を続けていてくれ』

ラームの一手を借りれば戦いがスムーズに進むのは確かだが、それでもゼルートは目の前のグリーンマンティスの攻撃を自分で対処したかった。

『分った!! 無理しないでね!!』

『おう、任せてくれ!!』

(って勢い良く返事したのは良いがどうしようか・・・・・・とりあえず風の斬撃の多さに惑わされる必要は無い)

これから行う事は全てゼルートが一人で行う事。
それでもその一連の動きを後ろにいる生徒達も出来るようなものにしたい。

(とりあえず風の斬撃の速度や手数がこれ以上上がる様子は無い。詠唱ありでやるか)

作戦が決まったゼルートは早速並行詠唱を始める。

「風や、全てを斬り裂き突き抜ける疾風よ、その鋭利さを守護の力に変え、我前の猛襲を弾き飛ばせ・・・・・・ウィンドシールド」

ゼルートの目の前に現れた風の盾が風の刃を弾き飛ばす・・・・・・とまではいかないが後方に向かわない様に全て弾いている。

「うそ! あれって並行詠唱じゃ・・・・・・」

「でもゼルートさん、剣術や体術より魔法の方が得意って言ってたから並行詠唱が出来ても可笑しくないんじゃないか?」

「た、確かにそうかも・・・・・・でも並行詠唱が出来るDランクの冒険者なんているの?」

「俺達まだ冒険者になってすらいないんだから、俺達が知らないだけでそういう事が出来るDランクの冒険者もちょいちょいいるんじゃないか?」

Dランクの冒険者でも並行詠唱が出来る冒険者がいない訳では無いが、それでも珍しく優秀な事に変わりない。
ミルシェも自身が得意な属性魔法の内、一つだけならば並行詠唱を行う事が出来る。

「あらよっと!!!」

ウィンドシールドを発動した後、ゼルートは両側から攻撃範囲が広い斬撃を放つ。
勿論その斬撃はグリーンマンティスに当たらない。しかしその代わり逃げ道を数秒だがしっかりと塞いだ。
その隙にゼルートは身体強化のスキルを使って速度を上げ、グリーンマンティスの後ろに回り込む。

ここで首を斬り落とせばそれで終わりだ。
そう思っていたゼルートだが考えが外れてしまう。

「ッ――――!!!!」

グリーンマンティスが少しだけ首を後ろに向け、目は完全にこちらを見ていた。
何かヤバい、単純にそう感じたゼルートは慌てて後ろへ下がる。

(俺の速度に意識と目は追い付いていたのか? それとも俺が後ろを取るって予測出来ていたのか? どちらにしろやっぱそこら辺の雑魚とは違うな)

敵に称賛を送っているとゼルートに衝撃波の波が迫る。

「後ろの羽による振動か!!??」

(ポ〇ケ〇ンの技にむしのさざめき? って技があったな。そんな感じの技か)

攻撃の正体を瞬時に見切ったゼルートは二刀の長剣を宙に放り、両拳で何度も空気を殴りつけて衝撃波も衝撃波で相殺する。
グリーンマンティスの目はこちらを向ているが風の斬撃を放てる鎌はミルシェ達の方を向いている。

自分が速く戻らないとミルシェ達に被害が・・・・・・そう考えているとグリーンマンティスは方向転換してゼルートに襲い掛かる。

(なんでだ? 今なら俺がいないからミルシェ達に風の刃を向ける絶好のチャンス。まぁラームがいるから心配はいらないんだが・・・・・・あぁ、そういう事か)

事情が分かったゼルートは直ぐにラームとの念話を繋ぐ。

『ラーム、そっちの魔物は任せるぞ』

『了解!!! ちゃちゃっとやっつけちゃうよ!!』

別の魔物がやって来たため、自身の得物が減る形になるが後ろから追撃される可能性が無くなったグリーンマンティスはゼルートだけに意識を集中させていた。
しおりを挟む
感想 683

あなたにおすすめの小説

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

殿下、恋はデスゲームの後でお願いします

真鳥カノ
ファンタジー
気付けば乙女ゲームの悪役令嬢「レア=ハイラ子爵令嬢」に転生していた! いずれゲーム本編である王位継承権争いに巻き込まれ、破滅しかない未来へと突き進むことがわかっていたレア。 自らの持つ『祝福の手』によって人々に幸運を分け与え、どうにか破滅の未来を回避しようと奮闘していた。 そんな彼女の元ヘ、聞いたこともない名の王子がやってきて、求婚した――!! 王位継承権争いを勝ち抜くには、レアの『幸運』が必要だと言っていて……!? 短編なのでさらっと読んで頂けます! いつか長編にリメイクします!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。