冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［３３４］らしいところとらしくないところ

「可笑しいねぇ・・・・・・確かにゼルートは冒険者らしいところもあれば、冒険者らしくないところもある」

「私も冒険者になって長くないが、冒険者らしくないってところはなんとなくだが解る」

「ゼルート君はどういったところが冒険者らしくないのですか？　まだ冒険者になって間もないながら雰囲気は既にベテランも方と同等に見えますが？」

まだ本当に子供と言える外見のゼルートがベテランと呼べる者との共通点。
それは確かに冒険者らしい理由の一つかもしれないが、それがらしくないところにも繋がっている。

(新人離れした余裕。それはベテランの冒険者も持ち合わせている経験から得られる感覚。勿論ゼルートに経験が無いなんて思わない。でも・・・・・・ゼルートが持ち合わせている余裕は一般的なベテランが持つ余裕とはまた別の物)

冒険者として長く過ごせば、時には命を賭けなければいけない場面に遭遇する。
しかしそうならない様に対策する術を知っている。

日常的な生活にも確かな余裕が生まれる。

けれどもゼルートは冒険者になったばかりにも関わらずその両方に余裕がある。
金に関しては冒険者生活が始まって初っ端に訪れた幸運により爆発的に膨れ上がった。

だが、それでも一人でも盗賊のアジトを壊滅する事が出来る戦闘力と複数対の対人戦をこなせる技量により、盗賊が長年貯めていた財宝を独り占めする事が出来る。
ついでにアイテムバッグを自作出来るという、現役冒険者の中では歴史上一人もいない特異的な能力を持っている。

なので盗賊が貯めこんでいた財宝等を全て持って帰る事が出来る。

結果、自分に余裕が有り過ぎる為に他の冒険者を助けるという事を軽く行う。

それが悪い事では無い。ゼルートは打算を含めて助ける事もある。
しかし助け、怪我をしていた同僚の怪我を治すのに自作のポーションを使うので必要経費はゼロ。
そして基本的にお礼を受け取らないスタンス。

(高ランクの冒険者が低ランクの冒険者を助けた場合、世間体も含めて低ランクの冒険者から礼を受け取らない、要求しないのは解る。ただ、同ランク。又は自分よりランクの高い冒険者を助けて礼を受け取らない、要求しないって事は・・・・・・普通は無い。いや、体面考えて礼を要求する事は少ないかしら？)

「雰囲気だけよ。それに、なんだかんだ言ってもまだまだ子供なのは変わらないしね」

「・・・・・・あぁ、なるほど。ああいうところは確かに子供だな」

アレナが何を言いたいのか直ぐにルウナは察し、つられて口端が上がってしまった。

「そりゃあ、ゼルート君は見た目まんま子供ですけど戦力だけで言えば大人顔負け負けですよね」

ヒルナはゼルートが単独でオークキングを倒した話を信じているため、自分より実力が遥かに上だと疑わない。

「そうだな。一回だけ色々分け合って本気で戦う事があったが一瞬にして後ろを取られた」

「本気でって・・・・・・何があったんですか？」

「いや、なんて説明すれば・・・・・・まぁ私の性格故といったところか」

全然説明になっていないのだが、ミルシェ達はそれで納得するしかなかった。
ルウナも間違った事は言っていないと思っているので、これ以上どう解りやすく説明すれば良いのか思い付かない。

「とりあえず、ゼルートの見た目で強さを判断して少し油断していたのもあるが、全く目で追えなかった。それ程までにあいつは速かった」

ゼルートがルウナの背後を取って決着をつけたのは事実だが、正確には素の身体能力で背後を取ったのではなく、疾風迅雷という身体強化魔法を使ったお陰でルウナが目で追う事すら出来ないズピードで背後を取る事が出来た。
というのが本当の事実。